第2話
僕を迎えに来てくれた騎士の先導で僕達は森を出て村に帰った。すると目の前にマントが浮いていた。
「お帰りなさいガスト」
マントはそう言うとふよふよと騎士の所に飛んで来た。
「ありがとう、リィ」
騎士はそう言うとマントを手に取った。するとマントの中から小さなが影が出てきた。それは小さな人の姿をした妖精だった。
「妖精……、それにガストという名前。まさかあなたは『あの』妖精ペロペ……」
マントから出てきた妖精を見たお兄さんは騎士の正体に心当たりが有ったのか何かを言おうとした。しかしその途中で騎士がお兄さんの口を押さえた。
「いくら自分が平民であなたが準貴族だからと言っても、それ以上言うなら吊るしますよ」
騎士がそう言うとその剣幕に押されたのかお兄さんはコクコクと頷いた。それを見た騎士は僕に視線を向けた。僕は一瞬体をビクリを震わせたが騎士は気にせずに僕に告げた。
「迎えの馬車を用意してあります。すぐに神殿に向かいましょう」
「そうだ、貴族様も平民騎士もすぐにこの村から出ていけ」
お兄さんはそう言うとしっしっと手を振った。僕はしかたがなく騎士のあとに続いて馬車に向かった。
「お兄ちゃん待って!これ忘れ物」
僕が場所に乗ろうとするとリーリアが追いかけてきた。そして僕に黄金のドラゴンマスクを渡してきた。
「じゃあお兄ちゃん元気でね」
僕はリーリア1人に見送られて村を出た。
「あの村は準貴族の村ですので貴族や平民出身の騎士の事が気に入らないんですよ」
馬車の窓から村が見えなくなると騎士はそう言った。
「お互い名前は知っていますが改めて自己紹介させていただきます。自分はコクボ様の神殿の神殿騎士をしているガストと言います。こちらはパートナーのリィフェアです」
騎士…ガストがそう言うとガストの肩に乗っていた妖精はペコリとお辞儀をした。
「僕はソラノ・コウイチと言います。神様からこの世界を救ってほしいと言われてやって来ました」
ちょっと電波が入っているような自己紹介だったけれども、他に言いようが無かったので僕はそう自己紹介をした。
「あの、さっきの村が準貴族の村ってどういう事ですか?」
自己紹介が終わると僕はさっきの言葉が気になったのでそう聞いた。
「準貴族は『マナ』の力を持たない貴族の子供やその子供の事を言います。あの村はその準貴族を集めて出来た村になります」
そう説明されて僕はむっとした。まるで貴族に相応しくない子供を隔離しているかのように聞こえたからだ。
「貴族は力が無ければ簡単に子供を捨てれるんですね」
僕がそう聞くとガストはこう答えた。
「そうですね、今の制度が出来る前は力の無い子供は恥とされて生まれてすぐに殺されるか捨てられるか、運よく育てられても家の中に閉じ込められて迫害されるかの良くない境遇だと聞きました。しかし数代前の王がそれは良くないと考えるようになりました。そして貴族に力の無い子供が生まれるのは恥では無いと貴族に言いあの村を作ったそうです。力の無い貴族の子供たちは王の支援を受けて村で大きくなっていきました。そうすると不思議な物で今まで力の無い子供を恥としてきた親達はそれが恥では無いと知ると自分の子供の事を気にかけるようになったのです。」
つまり昔はもっと酷くて今の状態は改善されたのだと言いたいのだろうか。しかしお兄さんは僕達の事をよく思っていない。その事を聞いたらガストは続きを聞かせてくれた。
「やがて子供達は大人になり結婚して子供を生みました。すると生まれた子供の中に高い割合で力を持った子供が生まれたのです。こうして生まれた力のある子供は貴族に引き取られて行きました。しかし力の無い子供はそのまま村に残されました。こうして村の住人は貴族を生むかもしれない存在『準貴族』と呼ばれるようになったのです。だから準貴族は貴族が嫌いなんです。特に村の生まれで世間を知らない第2世代以降は特にね。なにしろ自分には何の期待はしないのに子供に期待をかけて、その子供も期待はずれなら貴族に入れない。そして力のある子供は連れて行ってしまう。それで大切な人を連れて行かれた人も多いはず」
お兄さんは幼馴染を連れて行かれてしまった。そして妹であるリーリアもいつか連れて行かれてしまう。あんな態度を取ってしまうのも仕方が無いのかもしれない。
「あと準貴族は会ったことも無い平民を自分よりも下だと見下していることが多いですから。貴族の血が混ざっていない平民出身の騎士の事が妬ましくてしょうがないと言うのもあります」
そう言えばガストは平民騎士と呼ばれていた。村の事で反感を持ってしまったけれどもガストは村の成り立ちとは関係無いのかもしれない。
それにしても貴族にとって『マナ』の力はそこまでするほど大事な物だろうか?僕がそう聞くとガストはこう答えた。
「そうですね。その説明をするにはこの世界の歴史を説明する必要が有ります。神殿まで時間は有りますし、どの道ソラノ様には話さないといけない事ですから今話しましょう」
こうしてガストは僕にこの世界の歴史を語ってくれた。