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13回目&14回目そして15回目


13回目&14回目そして15回目


《オォ!シトヨ! シンデシマウトハ、ナサケナイ!》


 若干聞き取りにくい声が聞こえてきた。


 耳を打つ声と共に、まぶしい光が弾けた。

 意識が戻った瞬間、ほんの小さな手足――わしは再び這い這いもおぼつかぬ幼子に戻っておる。


《コレカラモワレヲタノシマセヨ》


 そして6歳になり、

 盗賊に焼かれる村。

 逃げ惑う人々。

 壊される家。斬られる父。泣き叫ぶ母。


《オォ!シトヨ! シンデシマウトハ、ナサケナイ!》


 また、繰り返した。


《コレカラモワレヲタノシマセヨ》


 6歳になり、

 盗賊に焼かれる村。

 逃げ惑う人々。

 壊される家。斬られる父。泣き叫ぶ母。


《オォ!シトヨ! シンデシマウトハ、ナサケナイ!》



 また、さらに、繰り返した。


《コレカラモワレヲタノシマセヨ》


 知っている。分かっているのだ。

 6歳を過ぎた頃、村に盗賊が襲ってくる。

 あらゆる手段を講じても、抜け道を探しても、どこかで必ず躓く。


(もう、駄目じゃ……)


 今回も村を出る術を失い、じりじりと死期が迫っていた。

 体は軽くなった。言葉も普通に話せる。走ることもできる。

 だが、その自由は焼け付く大地と、血にまみれた夜しか与えてくれない。


 そして――


「……もう、この手しかないのかのう」


 ある夜、わしは両親を前にして、思い切って言った。


「父上、母上。わしは、神の使徒じゃ」


 静寂が流れた。


 ふざけた冗談と取られればまだよかった。だが、そうはならなかった。


 わしは語り始める。

 両親二人が出会った時のこと。

 初めてパーティを組んだ冒険の日。

 父親が母親に言えずにいた手紙の内容――


 その全てを、わしは確かに、具体的に、明確に語った。


 母の手が震え、父は立ち上がりかけて、椅子に座り直した。


「なぜ、それを……」


 声はかすれ、目は恐怖で見開かれている。


「ワシは、神の使徒として、おぬしらの事を、見てきた」


 わしにとっては当然の真実。信じてもらえるかなどは二の次だった。

 ただ、繰り返しから脱出するために、最終手段としてそれを打ち明けただけ。


 しかし――


 両親の表情は、ナニカを見るような目だった。

 言葉では否定せずとも、その目が語っていた。体が震えていた。


「……わかりました。では……ギルドマスターに相談しましょう。王都の神殿に、連れていきます」


 父が、ぎこちなく笑った。


 いつものように笑って、わしの頭に手を置いた。震える手で。


 


 数日後。隣町のギルドマスターの手引きで、王都神殿への旅が決まった。


 村を出る直前の両親の顔。


 あの、凍りついたような、心の奥底から怯えているような目。忘れられない記憶として、忘れてはいけない記憶として、この時の両親を見ていた。




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