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18回目③


18回目③


《おぉ!使徒よ! 死んでしまうとは、情けない!》


《これからも我を愉しませよ》




 神の声が、また頭の中に響いた。


 何度目かの、いつもの声。


 目を開けると、柔らかな天井が視界に入る。布団に包まれた体が小さいことを改めて実感する。今の俺は……やはり、また赤子のような姿に戻っていた。


 はぁ。ため息をつく癖すら、もう染みついている。


 今回の死因は……たしか、ゴブリンのスタンピード。そうだ、あの恐怖は記憶に鮮明に残っている。あれだけは、何度味わっても慣れることなどない。大地を揺らす足音、濁った叫び声、そして無力な自分の身体。


 だが、それも“もう経験済み”だ。


 じゃあ次は何だった……? 俺が次に警戒すべき死因は……。


(思い出せ……思い出すんだ)


 そう思っても、記憶は霧がかかったように曖昧だった。幼児期の脳は記憶の保持に向いていないのか、それとも死の直前までのストレスで消されてしまっているのか。いや、やっぱりブランクが長すぎるんだ。1歳からの再スタートなんて…せめて直前とまではいかなくても数日前からとか…繰り返すたびに思い出せることは限られ、記憶は崩れていくようだった。


 だが──


(……忘れない。妻のことだけは、何度繰り返しても)


 あのとき見た彼女の姿、言葉、仕草。肖像画と瓜二つの女性。拒絶された悔しさ、どうしようもない距離感。すべてが心に焼き付いていた。


(今度こそ、間違えない)


 そのためにも、記録が必要だ。


 何度やり直しても、積み上げられる確かな何かを。例えば、年数を数えるカレンダーのようなものがあれば……。


(……カレンダー。作れないか?)


 そう考えて、すぐに無理だと悟った。


(いや、そもそも文字を教わっていない……。言葉の発音も怪しい幼児が、文字を書いてカレンダーを作り始めたら……そりゃ、怪しまれるに決まってるだろうが)


 わかってる。わかってるけど、ため息は止まらない。


「ムリだー……」


 つい口から漏れてしまい、近くにいた母親が「ふふ、何が無理なのかしら?」と笑いながら俺の頭を撫でた。


 そんな優しい母の手に、少しだけ救われながら──俺はまた、心の中で次の策を練り始めた。


(一つ一つ、潰していくしかないのか……)





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