18回目①
18回目①
《おぉ!使徒よ! 死んでしまうとは、情けない!》
《これからも我を愉しませよ》
耳慣れた神の声が響く。それに応える余裕もなく、目を閉じた。
この何もできない幼児期から、再びやり直しだ。もう何度目なのか、数えるのも面倒になってきた。
それでも、今回は覚えている。これまでの失敗も、過ちも、失ったものも。だから、次こそは。
* * *
気付けばもう五歳になっていた。
言葉も自由に話せる。文字はまだ読めないが、記憶はある。前回の失敗も、あの無惨な矢も。
だから、今回は対策を立てた。盗賊対策として、行商人に頼るだけでなく、父親にも同行してもらうようにした。さすがに三人なら問題ないはずだ。
村にやってきた行商人と顔を合わせた時、父と共に隣町へ行きたいと頼む。父は一瞬だけ驚いた顔を見せたが、やがて静かに頷いてくれた。
当日、軽く荷を整えて、三人で道を歩く。
久しぶりに村の外を歩く。木々の間を吹き抜ける風が心地良い。だが、以前この辺りで死んだことを思い出すと、気は抜けない。
移動しながら、行商人に質問を重ねていった。以前は聞かなかったことを、今なら確かめられる。
「ところで、あなたは、老人口調の子供がいる村の評判とか耳にすることはありますか?」
あの彼女が気持ち悪いなんて言っていた事を。
「評判? ……ああ、あるよ。でも、老人口調の妙な子供がいるって話は聞いた事無いな。でも、そんなのがいるなら、気味悪いからその村には近づかないよ」
息が詰まった。
つまり、村から出られなくて、何度も盗賊に襲われたのも、そもそも商人たちが避けていたのも。
(全部……俺のせいだったのか)
ショックが大きすぎて、隣で父が話しているドラゴンがどうとかいう話も、耳に入ってこなかった。
気がつけば、頭の中で何度も反芻していた。「老人口調の子供がいる村」――それが原因で、誰も助けてくれなかった。
いくら知識があっても、あの口調では全てが台無しだった。
* * *
そうしてようやく隣町に到着した。
街並みを見渡して、前世での風景と重ね合わせる。
何度目かの訪問のはずだが、ようやく「辿り着いた」と思えたのは今回が初めてだった。
少し気を落ち着かせて、父に思い切って話してみた。
「父さん、王都に行きたいのですが……」
父は腕を組み、しばらく黙って考えていたが、やがて柔らかな笑みを浮かべて言った。
「そうだな。成人の儀式を終えたあとなら、王都行きを許そう。お前ももう大きくなる年だ。ちゃんとそのときを待てば、堂々と出ていけるさ」
その言葉を聞いて、思わず息を吐いた。許された、と思った。
……あと十年。長いようで、もうそれほど長くは感じない。
「はい、ありがとうございます。気長に待ちます」
今回は、間違えない。




