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未来が見える手鏡

作者: うずらの卵。

「加奈は絶対大きくなったら、健ちゃんのお嫁さんになるの」

「おぉー、まぁしゃーないから大きくなったら、嫁さんにしてやるよ」

「何よー、その言い方、健ちゃんの意地悪」

「アハハハ」


そう、それは幼い頃の思い出だった。

私は20歳の会社員の加奈、田舎から出て来て独り暮らしをしている。

仕事は小さな会社の事務をしている。

そして、そこの職場の上司にこっそり恋心を抱いていたのだ。

その上司の神原さんはイケメンで、誰にでも優しくて独身だ。

なので、会社の女子は皆狙っていた。

そんなある日、神原さんが綺麗な女性と食事をしていたという噂が流れたのだ。

私も他の女子達もショックでその日は仕事が手に付かなかった。

仕事が終わり憂鬱な気分で帰り道を歩いていると、

ふと、見慣れないお店を発見したのだ。

いつもの帰り道なのに、いつの間に出来たのか、その小さなお店には骨董品ベルと看板が出ていた。

私は何故か引き寄せられるように、そのお店の扉を押して中に入って行った。

すると、お店の棚には所狭しと古いランプや小物入れ等年代物の品物が並べられていた。

そして、私は横の棚に飾って有る手鏡に吸い寄せられるように近づいた。その手鏡は鏡の淵に細かい細工が施されており、とても高そうな年代物に見えた。

手鏡を見つめていると、奥から老婆がゆっくりと「いらっしゃい」と声をかけて出て来たのだ。

私は見ていた手鏡が凄く気になり老婆に尋ねた。「こちら素敵な手鏡ですね、おいくらですか?」と。

すると老婆は「これは未来が見える不思議な鏡じゃ、あなたが気に入ったのなら安くお譲りしよう、但し条件が有るがのう」と言うのだ。

私は未来が見えるなんて信じてなかったが、

とてもその手鏡が魅力的に感じてどうしても欲しくなった。

「条件とは何ですか?」と聞くと老婆は、

「決して未来を変えない事じゃ、それさえ守ればそうじゃのう、一万で譲ってやろう」

私はその手鏡をどうしても欲しくて買う事にした。

そして、家に帰り手鏡を大切に引き出しにしまい眠りについた。

その夜に私は不思議な夢を見たのだ。

夢の中で私は手鏡を見つめていた。

すると、鏡に見知らぬ男性と私が結婚式を挙げている姿がうつっていたのだ。

私はショックだった、密かに神原さんとお付き合いして結婚出来たらと思ってたからだ。

すると、手鏡から声が聞こえた。

「未来を変えてあげようかぁぁぁー」と低くてとても恐ろしい声が…。

私は恐ろしくて手鏡を落としてしまった。

しかし手鏡からは更に声が聞こえて来たのだ。

「神原と結婚したいのだろぅぅぅー」と。

私は神原さんと結婚したい、見知らぬ男性と結婚なんてしたくないと思っていたから、

「神原さんと結婚したいです」と答えていた。

すると手鏡からは「よかろぅぅぅ」と声が聞こえて来た。

そして、私は目覚ましの音で目が覚めた。

夢だったんだと思いちょっと残念に思った。

そして、いつものように支度をして会社に向かった。

その日から私の日常は変わったのだ。

何故か神原さんが私にやたらに声を掛けて来るようになったのだ。

そして、その二日後食事に誘われ告白されたのだ。

私は天にも昇る気持ちだったが、周囲の女子の目線が怖かった。

でも、神原さんの手前女子達は私に対して嫌がらせはして来なかった。

そして、月日が流れ遂に神原さんにプロポーズされたのだ。

まさかここから地獄の始まりだとはこの時は思いもよらず。

私は仕事を辞めて専業主婦になったが、

優しかった神原さん…今では夫だが、

結婚してからは急に暴力をふるい外に女を作り、別人のようになったのだ。

もしかしたら会社の優しい上司は偽りの姿で本性を隠していたのかもしれない。

私は後悔したが恐ろしくて離婚を切り出せず、

ただ耐えるしかなかった。

そんなある日、又手鏡の夢を見たのだ。

夢の中で私は手鏡を覗いていた。

そこには独身の時に夢の中に出て来た、結婚式を挙げていた男性と、小さな女の子と私が笑顔で仲良く手を繋いで歩いる姿だった。

その男性の顔を良く見ると、幼い頃に良く遊んだ健ちゃんの面影が合った。

朝目覚めると夢の事を考えた。もしあの時夢の中で手鏡の声に惑わされなければ、私は…私は…こんな地獄のような生活を送っていなかったのだろうか?なんて愚かな事をしてしまったのだろうか。

夫は昨夜から帰って来なかった。

きっと女の所にいるのだろう。

私は荷物を纏めて逃げるように家を出た。

あの時手鏡を手にしていなければ、

手鏡の声に惑わされなければ、

骨董品店の老婆の出した条件、未来を変えない事を守っていれば、後悔してももう時間は戻せない。

私はあてもなくどこまでも歩き続けた。


「すみません、ちょっと道を聞きたいのですが」

顔をあげるとそこには…私の頬に涙が流れ落ちた。完












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