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なろうラジオ大賞

「おいしい」とは言えないお弁当

作者: 地野千塩

「美咲の弁当、汁染みてない?」

「そ、そうね」


 お弁当の時間、友達と一緒に弁当を広げた。ランチバックから匂いがし、まさかと思って見てみたら、弁当から汁が染みていた。


 メインのおかずは野菜炒めだった。そこから汁がたれた模様。よく見ると、仕切りやアルミカップ

も使われてなく、決して綺麗ではない弁当。


 正直恥ずかしい。私は中学二年生。友達の前でこんな弁当を広げることになるとは。


 水っぽい野菜炒めだけでなく、ご飯も芯が残り、ナスの漬物も酸っぱい。「おいしい」とは決して言えない。


 かといって不味くもない。


 去年、病気で母を亡くした私。この弁当は父が朝五時に起きて作ったものだ。探偵事務所の所長として忙しく働いていた父は、去年までは包丁すら握ったこともなく、レンジで卵を爆発させたり、お米も洗剤で洗おうとしていたぐらい。それに比べたら、だいぶ良い。


「でも、美咲。毎日笑って弁当食べてるよね。お父さんの弁当、見かけはアレだけど味は不味くはないの?」

「うん、決して不味くはないよ」


「おいしい」とは言えないけれど、味以外の何かはある。父は料理教室に通ったり、お弁当の本を何冊も読み込んだり、近所の主婦に勉強しに行っている事も知っているから。


 友達の弁当みたいに決して綺麗でも無いけれど、私はこのお弁当が一番すき。


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