文化祭合宿④
黒縁メガネをかけたセミロング、ちょっとキツイ感じとミステリアスな雰囲気を纏うカキノ先輩、、、美人であるけど、学年一位と言われるシズクの美貌の陰に隠れて、あまり目立たない。
けれど、それなりに男子から人気があるとか、、、。
カキノ先輩
「本当は君がここに入っていくのを見たから、、、
いえ、、、君を探していたの、、、せっかく図書委員会の合宿だったのに、、、結局、君は生徒会の仕事を、、、またシズクに持っていかれちゃった、、、」
あ〜さすがにここまで言われると、鈍感な俺でもわかる、、、。
カキノ先輩は深いため息を吐いて、、、
カキノ先輩
「安心して、、、別にシズクとの仲を裂こうとか考えて無いから、、、ただ、、、なんだろう、、、ちょっと悔しいかなぁ、、、君は覚えてる?わたしと初めて話した日のこと!!」
、、、やば、、、全然覚えて無い、、、これ春先のタライ事件って言ったら怒られる案件だ!!
ソヨヒト
「すいません、、、覚えていません、、、ただ、カキノ先輩が中学の先輩だってことは存じています。」
さおり!!ありがとう!!心から感謝!!さおりが以前そんな話をしてくれました!!
カキノ先輩はニッコリと笑い、、、
カキノ先輩
「、、、そうなんだ、、、わたしてっきり多田野君はわたしのこと知らないと思っていた、、、ちょっと嬉しい、、、」
安心して下さい!!記憶にありません!!、、、あれ?
なんだ、、、引っかかる、、、ひょっとして、、、
ソヨヒト
「、、、そうか!!子猫が木に登って降りれなくなったとき、、、あの人、カキノ先輩だったんだ!!」
カキノ先輩は涙ぐみながら笑顔で、、、
カキノ先輩
「覚えてくれてたんだ、、、、」
あれはわたしが高校1年生の5月頃、、、我が家に向かい入れた生後3ヶ月の子猫と近所の公園を散歩していた時、
偶然通りかかった犬に吠えられて、びっくりした子猫がわたしの胸から飛び出して、そのまま近くの木に登ってしまった、、、。
当時のわたしは、犬と猫の飼い方を混同させていて、、、
カキノ先輩
「子犬も散歩するし、子猫も散歩した方が嬉しいよね!!」
そんな軽い気持ちで、子猫にリードを着けて歩かせようとしたが、全然歩かなかったので仕方なく子猫を抱っこして散歩していた。
木に登った子猫は降りてこれず、ずっと泣いていた。
どうして良いか分からず途方に暮れていると、、、
ソヨヒト
「安心しろ!!いま助けてやる!!」
後ろから声が聞こえて、振り返ると声の主はスルスルと木を登り、あっという間に子猫を確保した。
ソヨヒト
「おう、、、よちよち怖かったろ!!ほら!!あんた飼い主だろ?」
そう言って子猫を渡された、、、。
彼はわたしと子猫を見て、、、
ソヨヒト
「その感じだと、、、あんた猫を飼うの初めてだろ、、、
ダメだぞ!!こんな小さな子猫を外に出しちゃ!!
いいか!!
イヌは人につき、ネコは家につく
って、言うんだ!!つまりネコに散歩は不要だ!!」
ちょっと幼さが残る彼は母校の制服を着ていた、、、。
その後、彼はネコの飼い方を色々教えてくれた、、、。
ソヨヒト
「まぁ〜こんな偉そうに言ってるけど、うちはネコ飼って無いけどね!!」
そう言って可愛らしいく微笑む彼がすごく大人に思えた。わたしの知らない知識をたくさん持っている彼が眩しく感じた、、、。
さおり
「ごめんごめん!!多田野君!!待った!!」
ソヨヒト
「おおっ!!さおり大丈夫だよ
それじゃ!!おねーさんバイバイ!!」
、、、そっか、、、彼女居るんだ、、、そうだよね、、、。
それから1年して彼がうちの学校に入学、、、。
彼はウワサの絶えない人で、1年生にして学校一の秀才とか難解男子なんて言われた、、、そして彼の隣にはいつもさおりさんが、、、
そんなさおりさんが学校一のモテ男と、交際しているという噂が流れた。
彼と彼女は、、、てっきりそう思っていたから、わたしはこの思いを曖昧にしていた、、、そして、、、。
シズク
「ミヨ!!わたし好きな人が出来たの!!どうもこの学校の2年生ぽっいんだけど、、、」
嫌な予感がした、、、その予感は的中した、、、。
シズク
「ミヨ!!わたし多田野君とデートするの!!」
シズク
「ねぇ〜ミヨ、、、ちょっと手伝って欲しいことが、、、」
びっくりした、、、あれだけ男子に言い寄られても、
なびかないシズクが、、、。
シズク
「ミヨ〜!!彼と交際することになったの!!」
決定的だった、、、シズクの言葉で初めて理解した、、、わたしは彼が好きだったことを、、、。
ソヨヒト
「すいません、、、いま思い出しました、、、。」
わかってる、、、シズクよりも早くに出逢っていたのに、理由を付けてウダウダしていたのはわたし、、、
カキノ先輩
「それでも嬉しい、、、お陰様であの時の子猫は立派な成猫になったわよ!!多田野君ありがとう!!
ずっとお礼が言いたかったの、、、じゃ〜わたし行くわね!!カレーご馳走様!!」
そう言ってカキノ先輩は去って行った、、、。
流石の俺でも彼女が流していた涙が、お礼の涙じゃ無いことぐらいわかる、、、。
カキノ先輩が残した皿を洗いながら、冷たくなった水が冬の到来を告げていた、、、。




