戦後のエルフ王国③
シル
「それからしばらくは、ノリヒトさんと遊んでいたの、一緒に森に行ったり、ノリヒトさんの調べものを見てたり、お母さんも少し離れた場所でそれを見守ってくれてたの」
ソヨヒト
「、、、、そうなんだ」
ノリヒトがエルフの村に来てから一週間が過ぎた。
ノリヒトは村の人々に溶け込もうと挨拶をするが、村人達はノリヒトの噂を信じてあまり寄りつかない。
シル
「おはようございます♪勇者さま〜♪」
ノリヒト
「これはこれは姫君、おはようございます。
本日も良い天気ですね!」
ローネ
「、、、おはようございます、ノリヒト様、、、本日はあいにくの雨ですね、、、、」
ノリヒト
「あはははそうですね!あらためまして、
おはようございます。女王陛下、、、、。」
ローネがノリヒトにエルフの伝承や魔法について話すようになると、ノリヒトはローネに対しての敵意が薄まっていった、、、少しずつだか、ノリヒトとローネの関係が改善されているなか、ノリヒトが旅立つ日が決まる。
ローネとしてはもっと信頼関係築き、、、そして、、、そう思っていた矢先だった。
そして、シルとローネの運命を大きく変えてしまう書状が女王の元に届く。
書状の内容は女王ローネに対しての求婚要求、、、それは奇しくも、ノリヒトが旅立つ前日だった、ローネはシルを部屋に呼び出した二人だけで今後を話し合った。
ローネ
「シル!大事な話があります。」
シル
「、、、はい」
ローネ
「ついに私に対して求婚を求める輩が現れました、、、本来であれば、この様な手紙を女王に送り付けるとは、、、。」
これは後にノリヒトがシルに話した事である、当時のエルフ王国の情勢と、シルとローネ置かれている状況を鑑みた最悪のシナリオのことを、、、。
女王に対しての求婚要求など、臣下のするべき行動ではない、つまり、貴族達にとってもはやローネは担ぐ神輿ですらないと言ってると同義、本来ならば絶対に許されない行為、けれど、ローネにはそれをとがめ、動かす兵も財力もない、最悪のシナリオは、将軍がシルを手中に納め、ローネを退位させてシルを戴冠させる事、そうなれば将軍は簒奪者となり、ますます貴族と争い泥沼の内戦が起こる。
そして貴族達は大義名分を得るために、ローネを誘拐を企てる。
当然、それを恐れる将軍は自らの手でローネを亡き者にする。
最悪のシナリオはまだある。
ローネとシルが双方の勢力に分かれて争う事だ、仮にローネが上手く将軍の元を逃亡出来たとしても、結局は貴族に保護され、無理矢理結婚させられる。
そうなれば、貴族は自らを正当な王国兵と
宣言して、形式上シル率いる将軍兵と全面戦争が起こる可能性すらあった。
シル
「、、、ひどいですね、、、」
ローネ
「しかし、今の現状が私の力です、、、もはや、私ではあなたを守ることも叶いません。
シル、、、あなたに問います。
あなたは今の地位が欲しいですか?」
シル
「地位、、、つまり王女ってことですか?」
ローネ
「はい!あなたが権力のある者と婚姻を結べばその地位は維持されます、あなたは直系ですから、、、。」
シル
「私が誰かと婚姻を結ぶとして、この国は安泰になるのですか?」
ローネ
「わかりません、、、この国は分裂し過ぎました。」
シル
「お母さんはどうなるのですか?」
ローネ
「そうですね、シルと婚姻を結んだ者と対立する勢力に利用されるか、、、暗殺されるか、、、まぁそれはそれで良いのです。
正直、私はあの人の元に早く行きたいと思ってましたから、、、。」
シル
「、、、私が今の身分を放棄するとすれば、、、?」
ローネ
「何も変わりありません、、、結局、無理やりに担がされて誰かと結婚をさせられる、、、」
シル
「それが私の運命なんですかぁ、、、」
シルは大きく肩を落として落胆する、、、。
ローネ
「希望が薄いですが、唯一助かる道があります、、、それは、、、」
シル
「こうして、お義父さんの庇護下にお母さんが入ることで、誰も私たちに手出し出来なくなったの、、、しかも、お義父さんは私たちの安全を優先してくれて、こっちの世界に連れて来てくれた、、、。」
ソヨヒト
「そうだったんだ、、、シルはすごい辛い思いをしたんだね、、、。」
シル
「うん、、、辛かった、、、。」
俺はシルの手を探り握りしめる、、、その手は冷たく震えていた、、、。
ソヨヒト
「それならオトンとローネさんは、、、」
俺のその言葉を遮る様に
シル
「それは無いよ〜!!少なからず、お母さんは本当にノリヒトさんを愛してる、、、
それは偽りじない、、、だって私もそうだったから、、、。」
ソヨヒト
「、、、、」
シル
「わたし、、、本当はソヨヒトを利用するつもりだった、、、」
シルは俺の背中にしがみつきながら言った、、、。