シルのいた世界
シルのいた世界は数百年間、魔王と呼ばれる存在と戦争をしていた。
なぜ世界は魔王と数百年間戦争状態になっていたのか?シルのいた世界ではそんな事を考える人は存在しなかった、、、いやそんな余裕がなかった。
そのことに疑問を感じた人物は、シルのいた世界の人物ではない、、、天人、自らをそう呼んで魔王を倒した男、、、それがノリヒトだ
ノリヒトは魔王の理りに気が付いた、魔王の真の目的、それは世界の征服ではなく終わらない争いを楽しむこと、まさに魔王の発想である。
魔王はエルフ同様に悠久の時を生きる。
ゆえにその長い生の退屈しのぎの争いを楽しんでいる、それが魔王の本質である。
現に魔王は、エルフ王国王都の陥落後の進行が異常に遅い、それどころかエルフ王国占領を遅らせて他国に進軍していた。
シル
「そんなわけで、そいつのせいで私のいた世界は文明が発達しなかったの、ソヨヒトは飴食べたことあるでしょ?」
ソヨヒト
「あるけど、、、」
シル
「食べてどう思った?」
ソヨヒト
「、、、普通、、、甘いなぁ〜かな?」
シル
「私が初めて食べたのは去年の3月だった、
生まれて初めて食べた飴に私は感動したの、、、」
ソヨヒト
「、、、、そうなんだ」
シルの話の意図がわからない、、、
シル
「私大体160年ぐらい生きてるの、、、」
ソヨヒト
「うん、、、前に聞いた、、、」
シル
「私が幼い頃から去年までの160年間は何も変わらなかった、、、けれどこの世界は80年ですごい変化をした、、、この世界の歴史を学んで思った、、、なんかズルい、、、」
なるほど、シルのズルいは向こうの世界とこの世界を比較しての話か、、、。
ソヨヒト
「確かに比較するとズルく感じるなぁ、、、」
シル
「お義父さんが言ってたの、向こうもこっちも基本は変わらない、唯一の違いは少しの物質の違いだけ、、、でもその違いが世界をこんなに変えた、、、。」
ソヨヒト
「シルはそれに不満?」
シル
「わからない、、、いやわかってる、、、ただの嫉妬だって、、、わたし嫌な女だね、こんなにもこの世界の恩恵を受けながら、、、今日の朝食だって向こうではご馳走だよ、けれど私はこんなにもわがままになって、、、こんな思いになるなら私は、、、」
シルはそう言って俺の肩に頭をのせる、、、。
ソヨヒト
「そうだねシルは嫌な女だ!!
でもとても優しい人だ、、、向こうとこっちの世界のどうにもならないことを比較して悲観する、、、それは向こうの世界で救いたい人々を思ってのことだろ?
だから自分だけこっちの世界で受ける恩恵に対して罪悪感を感じる。
でも、シルが嫌な女の理由はこれとは別だ!!」
ソヨヒトはシルの肩に手を回し抱き寄せる、、、そして、
ソヨヒト
「俺との出会いを否定するな!言いかけた言葉は許さない!!シルは嫌な女だ!!
俺は、、、こんなにもシルと出会えたことが、この世界に来てくれたことが嬉しいのに、、、」
思わず強い口調で言ってしまった、、、けれど、言葉の意味を汲み取ってくれたシルが小さくうなずた、、、
シル
「うん、、、ありがとうソヨヒト、、、
わたしも出逢えて良かった、、、。」
俺はシルを抱きしめる、、、見えない世界から華奢でかよわいこの少女を守るかのように、、、。
シルの夢
夢を見た、、、幼い頃の夢、
私は星が好きだった、母からは夜は怖い魔物が出るから屋敷から出るなと言われていたけど、目を盗んで屋根の上に寝っ転がり星空を眺めた、、、とても綺麗だった、、、。
嫌なことがいっぱいあった、、、けれど星空だけはいつも綺麗に輝いていた。
逃れる日々はいつしか私達を深い森の中に追いやり、いよいよ逃げ場がなくなって行く、、、
そんな時、魔王が討たれたという一報が届く、母も皆も心から喜んだ、、、これで平和の世が訪れる、、、森を出てまた星が見れる、、、はずだった、、、。
同族同士で争いが始まった、、、魔王との戦争の時より状況が悪化している、、、
お義父さんが現れて助けてくれた、、、
お父さんに誘われてこっちの世界に来た、、、
けれど空を見上げても大好きな星は見れなかった、、、。
もう星は見れない、、、そう感じた、、、。