新居の夜①
広いリビングのソファでTVを観ている。
いつもと変わらない日常だが、違いがあるとすれば、シルに抱きつかれてTVを観ていることぐらい?
ソヨヒト
(まぁ〜これもさほど変わらん日常か〜)
シル
「にーさん二人っきりだね!これからいつでもイチャイチャ出来るね!」
ソヨヒト
「それよりもシル、、、再来週からテストだよ?大丈夫?」
シル
「、、、よし!明日から真剣に考えよう!!」
ソヨヒト
「ダメです!!せっかくだから今からお勉強しましょ〜!!」
シル
「え〜だってもう10時だよ!!」
ソヨヒト
「良いんだよ!わずかな時間でも!継続が大事!!」
シル
「やだ〜今日はイチャイチャするの〜」
ソヨヒト
「ダメです!!今夜はお勉強です!!」
シル
「ブー!!じゃ〜夜は添い寝して!!」
ソヨヒト
「ダメです!!それとこれは関係ありません!」
シル
「関係あります!!今日放課後デートしてた人はどこのどいつですか!!」
ソヨヒト
「、、、、じゃ〜添い寝するからちゃんと勉強するんだぞ!!」
シル
「やった!!教科書持ってくるね!!」
そう言ってシルはリビングを出ていく、、、。
ソヨヒト
(はぁ〜これからシルと2人暮らし〜
もっとがんばれ!!俺の理性!!)
シルはやれば出来る子、普段俺の部屋に入り浸るおかげも合ってか、あと少し頑張れば全教科平均点が、取れそうなレベルまで向上している。
ソヨヒト
「よしよし!いい感じに解けてるな!」
シル
「でもにーさん凄いよね!中間テスト全教科満点だったんでしょ!!」
ソヨヒト
「まぁ〜そうだけど、、、。」
シル
「それなのになんでいつも勉強してるの?」
絨毯に座ってテーブルを机代わりにするシルが、ソファに座る俺を見上げて上目遣いで首が傾げて尋ねる、、、かわいい!!
ソヨヒト
「あ〜あれは学校の勉強じゃないんだよね、、、俺がしてるのは、別の教科書、、、つまり、学校指定の教科書よりも、難度高い問題が載ってる教科書なんだ、、、。」
シル
「、、、?どう言うこと?」
ソヨヒト
「あはは、、、そうだよね、シルは大学って知ってる?」
シル
「魔法大学?」
ソヨヒト
「そんなのあるんだ、、、ラノア?、、いやそうじゃなくて、、、国立大学、私立大学とか?」
シル
「う〜ん、、、知らない〜」
ソヨヒト
「そうだよね!大学ってのは、シルが通っている学校よりも、高度な勉強、研究をする場所なんだよ、そして、俺はある事情で、本来の学力よりも2段階下げた高校に入学したんだけど、、、。」
シル
「あっ、、、それ知ってる!!にーさんの勘違いで無駄なことしてるって、お義父さんが言ってた!!」
ソヨヒト
「、、、、くそ!オトンめ〜!!だから、今の学校の勉強だと、行きたい大学つまり、高校の先にある学びの環境には、入れないんだよ」
シル
「そこに入れないとどうなるの?」
ソヨヒト
「、、、、そうだね、、、そう言われると、、、でも、そこに入ることで、自分のやりたいことの近道にはなるんじゃないかな〜」
シルの言葉には核心があった、、、俺は大学でなにをしたいんだろう?
俺の両親は共に東大法学部出身、オトンは東大法学部出身で、司法試験に合格してるのに、工学の道に進んでいる。オカンはオトンに出会う前は、キャリア官僚を目指していたけど、在学中に俺を身籠り、出産そのまま卒業して専業主婦をしている。オカンはすごい人で、身重でありながら努力して司法試験に合格もしている。そんな2人に憧れてなのか、気が付けば俺も東大を目指していた、、、。
シル
「にーさんってすごいね!ちゃんと将来を見てるんだね!」
ソヨヒト
「、、、そんなことないよ、、、。」
なんだろう、、、シルの言葉が見透かされたように聞こえた、、、いや当然シルはこの世界の仕組みをちゃんとは理解していない、ゆえに今の言葉はきっと本心から来てるんだと思う、、、つまりこの思いは、中身のない俺自身、、、。
シルが心配そうに俺の顔を覗き込み、、、
シル
「にーさんどうしたの?」
ソヨヒト
「あっ、、、ごめん考えごとしてた、、、今日はもう終わりにしよう!!」
そう言って片付けてリビングを後にした。