オトンの誕生日、、、前夜③
オトンは珍しく午前中は、書き物をしていた。
オトンは、性格上集中する時は、自室に籠るタイプで、押し入れから出てこない。
オトンの幼少期は、決して恵まれた環境ではなかった、交通事故で早くに親を亡くし、親戚の家をたらいまわしにされ、最後は施設に預けられた。
幸い、天賦の際である異常な程の、頭脳が彼にはあった。
ゆえに、幼少でありながら、最後に施設に預けられることを、自身が描いたシナリオと言っても良い、理由は感情を捨てれば、効率が良いから、、、ただし、必要以上に多くの感情を捨て過ぎため、サチに会うまでの彼は、今とは別人と思えるぐらいの人間であった。
「おとーさん、、、お茶入れましたけど、、、。」
心配してオカンが声を掛けに来る、、、
オトンは一度スイッチが入ると自分で切ることがなかなか出来ない。
「ああ、、ありがと今そっちに行くよ、、、。」
PCの電源切り、押し入れを出て居間に行く、、、居間ではTVを見ながら、オカンとローネさんがお茶を飲んでいた。
掛け時計は、もう11時30分を回っていた。
8時頃から始めて水分休憩もしないで、執筆に没ていた、、、通常の人の集中力は持って、1時間半と言われ、それ以降は効率が落ちるとされている。
けれど、オトンの場合は、尻上が集中力が増していく、まさに化け物である。
「かーさんもうお昼になるね、、、流石に朝飯抜きだからお腹すいたなぁ〜たまには、近所のラーメン屋に行かないか?ローネさんも、ラーメン好きですよね!」
「まぁ〜たまにはいいかなぁ?」
と、オカンが言うと、ローネが食い気味に
「サチ、食べきれなかったら私に任せてね!」
と、嬉しそうに笑う。
オカンは、ローネとシルに隠れてしまっているが、かなりの美人である。
本人もその事を自覚している為、日々努力をして体型と美貌を維持している。
彼女の不幸は、そんな事を微塵も気にしない、彼女の旦那のオトンと、息子のソヨヒトである事。
「ローネ、、、そういえば、、、ふふふ、、、なんでも無い、、、。」
「サチ!、、、ちょっと気にしてるんだから!明日から頑張るの!!」
「どうしたんだ、、、二人とも、、、。」
「貴方はいいの!」
「ノリヒトさんには内緒!」
「、、、、」
そして、ちょっと早めにお昼として近所のラーメン屋に行った。
夕方、オトンは居間でソワソワしていた、、、。
明日は6月11日、自分の39歳の誕生日、
きっとみんなは盛大にお祝いをしてくれる、、、ソヨヒト時は盛大にお祝いをした、きっと息子達も、、、。
「おかーさんソヨヒトは今日はバイトかい?」
「いえ、、、聞いてませんけど、、、。」
オトンの隣でお茶をすするオカン。
「シルもまだ帰って来ませんね、、、。」
和風の居間には似つかわしくない、アンティーク西洋陶磁器で、紅茶を嗜むローネが言う。
「でも、サチって本当に、お洒落で教養が高いのね、、、。」
ティーカップを眺めてローネが言う。
「あ、、、それ?別に高級アンティークのお店に行ったら、高かったから買ったの、、、。」
「、、、、」
「、、、、」
「サチさん、、、?高級?アンティーク?
さぞお値段するんでしょうね〜?」
オトンが淡い期待を込めて、テレビショッピングの真似ながら尋ねる、、、。
「まぁ〜なんと!お値段プライス!今ならセットで、30万円!!でお買い求め、、、。」
と、すかさずオカンものっかる。
「なんと衝撃のセットで30万円!!これは高い〜!!」
と、高級志向とは全く皆無のオトンが言う。
「わ〜パチパチ、、!!」
と、突然始まった、寸劇を手を叩いて喜ぶローネ。
そんな事をしながら、子供達の帰りを待つが、一向に帰って来ない、、、。
二人か帰っきのは、19時を回っていた。