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この国には陛下の息子である王子殿下が2人いるが、レオンを呼び出すのは第二王子殿下であるクラウスだ。
「失礼します。」
「こんなに早く来るとは思ってなかったよ。」
そう言ってクラウスは護衛を下がらせ人払いをした。
「今日は影もいないし、楽にしていいよ。」
「影はキール殿下についてるのか。」
レオンはかしこまった口調をやめた。
レオンとクラウスは学生時代からの友人だった。
楽にしていいということは、騎士団長としてではなく友人として呼ばれたのだろう。
キール殿下というのは第一王子殿下だ。
クラウスの2つ上の兄である。
「わたしは今日1日王城を出る予定はないからね。影は必要ない。兄上は今日視察だ。ディーンも15歳になって成人花が咲いたから一緒に視察に行くことになったんだよ。」
ディーンというのはキールの息子である。
成人花が咲いたことで正式に公務に参加していくことになったようだ。
「ちょうどいい。フィーネでの話もまだ聞いてなかったしな。今回のことだってお前は報告書には当たり障りのないことしか書かないだろう。個人的なことでも憶測でもいいから話してくれ。」
「残念だけど、今日はお昼に先約が入ってるんでね、長く話す時間はないんだ。」
「お前に先約なんて珍しいな。ミレーヌやカイたちが死んでからお前がプライベートで誰かと交流するなんてなかっただろ。」
「最近になって何人か大切な人ができたんでね。クラウス、お前に会って欲しいと思ってる。詳しいことはその時話すが、あくまでもプライベートとして会って欲しいんだ。僕もそのための休暇を取るつもりだ。近いうちになんとかならないか。」
「お前がそこまで言うってことは何か重要なことがあるんだな。いいだろう、3日後だ。その日なら影も兄上たちについてる。」
陛下が正式に後継者としてキールを指名したことで、最近のキールは各地方への視察が多く入っていた。
ディーンは公務の勉強と練習を兼ねて、今後の視察は全て同行することになっている。
ディーンにはまだ正式に決められた護衛や影はいない。
そのためクラウスの護衛数人と影を連れていくことになっているのだ。
ディーンの護衛候補も数人同行するとのことなので、教育目的もあるのだろう。
「場所はお前の家でいいか?」
「あぁ、そうしてくれ。くれぐれも誰にも気付かれないようにしてくれ。」
「わかった。お前の休暇は適当に理由つけてこっちでなんとかしとくよ。」
「殿下、勝手なお願いをお聞き頂き感謝します。」
レオンは立ち上がって胸に手を当て頭を下げた。
「やめてくれ、レオン。これは王子としてではなく、お前の友人として聞き入れたんだ。それに俺はお前を信頼してる。お前が必要なことだと思うなら、わたしにとっても必要なことなんだ。」
「ありがとう、クラウス。じゃあ僕は本部に戻って“当たり障りのない”報告書を書くとするよ。」
そう言ってレオンは執務室をあとにした。




