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ルダンに戻ったソル達はそれぞれ荷物を片付けると、植物園のキッチンに集まった。
昼食をとっていなかったソル達のためにステラが食事を用意してくれていた。
「僕は明日セントラルに戻って届出の準備をしてくるよ。今日の事を報告もしなきゃいけないしね。それと届出の前に君たちに会わせたい人もいるんだ。学生時代の友人でね、ミレーヌはもちろん、カイたちとも交流があったんだ。」
「何をしてる人なの?」
「それは会ってからのお楽しみだ。」
レオンはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「レオンさん、明日セントラルに戻るなら僕が連れていくよ。」
「ありがとう。ここからセントラルまでは距離があるからね。リヒトくんが連れてってくれるなら準備も早く進められそうだね。」
話していると博士がキッチンに入ってきた。
「神父さんが起きたんだけど、もう大丈夫だから孤児院に戻るって言うんだ。今日1日だけでも休んで行った方がいいって言ったんだけどね。子供たちの事が心配みたいだ。」
「神父さんらしいね。」
「俺たちが送っていくよ。リヤンとも話したいし。」
「そうかい?君たちが送って行ってくれるなら安心だね。神父さんに伝えてくるよ。」
そう言って博士はまた戻っていった。
「食器は僕が片付けておくから、君たちは神父さんのところへ行ってあげて。一人暮らしが長いからね、こう見えて家事は得意なんだよ。」
そう言ってレオンはみんなの食器を片付け始めた。
「父さん、ありがとう。」
レオンにお礼を言うと、ソル達は神父さんを迎えに行った。
「心配かけてすまないね。リヤンは大丈夫かい?」
「リヤンは大丈夫だよ。リヤンの両親が守ってくれたから。」
「そうかい、そうかい。」
神父さんは嬉しそうに微笑んだ。
リヤンの両親は操られて神父さんを傷つけた。
しかし、神父さんはリヤンを守ったという事実を少しも疑うことなく受け入れた。
「リヤンの両親はブランに操られていたんだろう?わたしに襲い掛かってきたときも、あらがっているように見えたからね。わたしがこの程度のけがで済んだのも、リヤンの両親があらがってくれていたからだろうね。」
ソレイユも同じことを言っていた。リヤンの両親がブランの支配にあらがっていたと。
そしてリヤンの両親自身も神父さんを傷つけたくなかったと言っていた。
ソルがミリューで見たルミエの桔梗は少年たちを完全に操っているように見えた。
その力にあらがえていたのは桔梗がブランの本来の花ではないため力が弱かったからなのか、リヤンの両親の思いが強かったからなのか。
ルダンの孤児院へ向かいながら神父さんはリヤンの両親について話してくれた。
「わたしがヴェルオーの孤児院に用があって伺ったときに1度リヤンたち家族に会ったことがあるんだ。リヤンの両親はとても優しい人でね。時間があれば孤児院へ行って慈善活動をしていたそうだ。奥さんは子供たちへお菓子を焼いてきたり、旦那さんは子供たちと体を動かして遊んだりしていたそうだよ。リヤンも一緒になって遊んでいたみたいだよ。神父さんもお年だからね、体を動かす遊びはなかなかしてあげられないから助かるって言ってみえたよ。誰からも好かれるようなご夫婦だったんだ。」
「俺たちから見てもリヤンの両親は優しくて子供思いの人達だったよ。」
「僕も少しの間しか関われなかったけど、もう大好きになっちゃったからね。」
「そうだろうとも。リヤンを守ったと聞いて、あの頃のご両親に戻れたんだと安心したよ。」
「リヤンの両親はちゃんとリヤンに思いも伝えられた。とびきりの笑顔で旅立っていったよ。」
それを聞いた神父さんは優しく微笑んだ。
神父さんは最初リヤンの両親が教会を訪れたとき、リヤンに会わせず帰らせてしまったことを本当に良かったのかと悩んでいたのだ。
神父さんの笑顔を見たソル達も優しく微笑んだ。




