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「ソルを正式に僕とミレーヌの子として届け出ようと思う。ソルが生まれたとき、レイさんが捨て子を引き取ったという形で届出をしているみたいなんだ。」


ミレーヌがソルを産んだ時、ミレーヌの名で届出をするとローブの男に居場所が知られてしまう恐れがあった。

そのためレイが捨て子を引き取ったという届出をしたのだ。

実際子を捨てた親が後で名乗り出て届出をし直すケースもよくある。

親が亡くなっている場合でも、親だと確認できれば代理人が届出をし直すこともできるのだ。


「父さんはともかくとして、母さんが親だってどうやって証明するんだ?」


ソルがレオンに尋ねた。


「君たちは血のつながりを証明するのにどういう方法を使うか知っているかい?」


昔この国では家を継ぐのは実子のみとされていた時代があった。

そのため跡継ぎの生まれなかった夫婦が引き取った子を実子として届け出るケースが相次いだのだ。

そのため親子だということを証明しなければ実子として届け出ることができなくなった。

今は実子でなくとも家を継ぐことができるようになったが、実子としての届出に関しては今も証明が必要なのだ。


「魔法が王族と魔法師団しか使えないのは君たちも知ってるよね。その中でも限られた人間しか使えない『鑑定』を使うんだ。ミレーヌとソルを鑑定してもらうのにこれを使おうと思う。」


そう言ってレオンは上着の内ポケットから小さなお守りを取り出した。

そのお守りから出てきたのは一房の髪の毛だった。


「ミレーヌの遺髪だよ。レイさんが僕のために残しておいてくれたんだ。これを使えばソルがミレーヌの子だと証明できる。」


レオンは遺髪をそっとお守りの中にしまい、また内ポケットに入れた。


「僕とミレーヌに子がいるとなればローブの男も接触してくるはずだ。」


「でも届出をしただけでローブの男にまで話が届くのかなぁ?」


リヒトが首をかしげて言った。

普通届出をしたところで、他の人がそれを知る機会は少ない。

実子として登記されるというだけなのだ。

騎士団長だからといって広く公表されるわけではなく、調べればわかるというくらいの話である。


「僕はね、ローブの男は一般の人ではないと思ってる。今回調査に来たのだって、僕が信頼している一部の人間にしか話してないんだ。ローブの男の仲間がどれだけいるのかわからないが、ブランが消えた穴を見たときに確信したよ。ローブの男自身か、仲間なのかはわからないが魔法が使える人間が関わっている。あの穴はマナフルールじゃなく魔法で作られたものだからね。」


ソル達は驚いて沈黙した。

自分たちが相手にしている組織がとてつもなく危険な組織なのだと改めて認識させられた。


「そこまでの組織になると、騎士団員でさえ組織の人間が紛れ込んでる可能性もある。カイが死んだときのことを考えると情報が洩れているとしか思えないからね。そして届出がされると王族、魔法師団、騎士団には通達されるから僕とミレーヌに子がいるという事実はすぐにローブの男に届くだろうね。だからこそ僕は迷っていたんだ。僕はソルをミレーヌとの子だとちゃんと届け出たいけど、それは君たちを危険に巻き込むことになる。ミレーヌだって実子として届け出たかったに違いないけど、ソルの安全のために捨て子ということにしたんだ。そのミレーヌの覚悟を踏みにじってしまうことになるんじゃないかと思って…。」


「父さん、俺は父さんと母さんの子として堂々と生きていきたいよ。いつまでもローブの男から隠れ続けるだけじゃダメだ。」


「レオンさん、僕たちも覚悟を決めてるよ。どんなにローブの男が強くても、組織が危険であっても僕たちは立ち向かうって決めたんだから。」


「ソル、リヒト。レオンさんも今更届出の話をなかったことにする気はないから大丈夫だ。迷ったままだったらそもそもこの話を俺達にはしてない。」


レオンの顔を見ると少し気まずそうに笑っていた。


「シエルくん、カイにそっくりだなぁ。その通りだよ。迷ったのは本当だけどね。君たちのブランとの戦いを見てて覚悟を決めたんだ。この子たちを危険から遠ざけるのではなく、一緒に立ち向かおうってね。ソルもリヒトくんもありがとう。僕の決断は間違いじゃないって確信したよ。」


「じゃあとりあえず宿屋をチェックアウトしてルダンに戻ろうか。」


こうしてソル達は決意を新たにヴェルオーをあとにした。


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