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「消えた…。」
「今のは何なんだ…?」
ブランは花を咲かせたわけではなかった。
どうして突然穴が現れたのか、ブランはどこへ行ったのか、謎が残る形になってしまった。
「リヒト、神父さんは?」
シエルが振り返りリヒトに問いかけた。
「無事だよ。ケガも大したことないって。」
「わたしたちのせいだわ。操られていたとはいえ、神父さんに申し訳ないことを…。」
リヤンの両親は床に手をつきひたすら謝っていた。
「でも必死にあらがってたよ。僕には見えた。操られて勝手に動く体を必死に止めようとしてた。」
ソル達の後ろからソレイユの声が聞こえた。
リヤンにはソレイユの声は聞こえていないようだが、リヤンの両親はリヒトの方を見ていた。
「やっぱりあなたたちには僕の事見えてるんですね。死者どうしだからかな。僕にもあなたたちの声、聞こえてました。必死にリヤンを呼ぶ声が。あれはリヤンの身を案じての声だったんですね。」
「えぇ。操られても意識は乗っ取られていなかったの。神父さんも傷つけたくはなかったし、リヤンが狙われていることを知って心配で…。」
そういってリヤンの両親は泣き崩れた。
「本当に父さんと母さんなのか…?どうして…?」
リヤンは両親に駆け寄った。
両親はリヤンの頬を確かめるようになでた。
「リヤン、突然現れてびっくりしたわよね。ごめんなさい。」
「大きくなったな。元気そうで安心したよ。いい仲間とも巡り合えたみたいだ。会えてよかった。もう思い残すことはないよ。」
リヤンの両親がそう言うと、両親の体はキラキラと光り出し、少しずつ消え始めた。
「父さん?母さん?どうしたの?今やっと会えたところじゃないか!」
「魔力が薄れていってる。もともと他人の魔力で保たれてた体だから、魔力の供給がなくなって限界が来てるんだ。」
シエルがそう言うとリヒトが「僕の魔力なら」と言ってバーベナを咲かせた。
するとリヤンの両親は静かに頭を横に振った。
「いいんだ。僕たちは元々ここにいるべき人間ではないんだよ。成長したリヤンに会えただけで奇跡なんだ。自分たちのいるべき場所へ戻るよ。みんな、ありがとう。」
「リヤン、周りの人を大切にするのよ。それと、これだけは忘れないで。わたしたちはいつでもあなたを見守っているわ。大好きよ、リヤン。」
リヤンの両親はもう半分ほど消えていた。
涙を流しているその顔は、とても晴れやかな笑顔だった。
リヤンの両親は最後にソレイユの方を向いた。
「わたしたちをいるべき場所へ送ってくれるかしら?」
「突然連れてこられたから帰り方がわからなくてね。」
「えぇ、任せてください。僕は普段からよく行き来してるんで、ガイドにはぴったりですよ。」
そう言って微笑んだソレイユは手に青いバラを咲かせた。
リヤンの両親は光の粒となって消え、その場には骨だけが残った。
ソレイユも両親が消えると同時にフッと消えた。
リヤンは両親の骨を胸に抱き涙を流しながら大声で叫んだ。
「父さん、母さん、守ってくれてありがとう!」
そして涙を拭うとソル達の方を向いた。
「父さんと母さんが誰と話してたのかよくわからなかったけど、最後に少しだけシエルにそっくりな人が見えたんだ。その人が父さんと母さんを送ってくれてるんだな。何が起きてるのかは全くわからなかったけどさ。」
「あぁ。あいつがちゃんと送り届けてくれるから安心しろ。両親の骨、ちゃんと埋葬しなおしてあげないとな。」
「神父さんに頼んで、お墓をルダンに移動させようと思って。それならいつでも父さんと母さんに会いに行けるだろ。」
そう言ってリヤンは輝くような笑顔を浮かべた。
ソル達は落ち着いたらリヤンに全て説明することを約束し、植物園へ戻った。




