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「お久しぶりですね。またお会いできて嬉しいですよ。」
そこに立っているのはブランだった。
ブランが生き返っているだろうとは思っていたが、こんなに早く対面することになるとは思っていなかった。
レオンは咄嗟に剣を抜いた。
「リヒト!とりあえず神父さんをステラのところに連れていけ!」
「わかった!」
リヒトは返事をすると同時に神父さんに駆け寄り、そのままローダンセを咲かせて飛んだ。
「リヒトくんのお花も素敵ですね。欲しいわ。」
そう言ってブランは不気味に笑った。
ソルは小声でレオンに話しかけた。
「父さん、神父さんに襲い掛かってたのはリヤンの両親だ。でも何かおかしい。なるべく傷つけないでくれ。」
「わかった。」
レオンはブランの顔を見たことがなかったが、ソル達から話を聞いていたためブランが何者なのかすぐに気付いたようだった。
「あなたたち何やってるの?早くあの方の役に立って頂戴。」
ブランがそう言うとリヤンの両親が教会の奥の孤児院へ向かって歩き出した。
リヤンの両親の目は生気が失われ真っ黒だった。
シエルが孤児院へつながる扉へ手を伸ばすと、扉が茨で覆われた。
バラのつるで扉を塞いだのだ。
それでもリヤンの両親は扉を開けようとしている。茨でその手は傷つき血が流れていた。
「やめろ!」
ソルは叫ぶと同時に綿毛を飛ばした。
扉から引き離されたリヤンの両親の周りにはヒイラギが降っていた。
ブランの方を見るとブランの手には桔梗が咲いていた。
「なんで…。」
ソルとシエルが驚いていると、教会の外から声が聞こえてきた。
「待てって!」
ソル達がそちらを見ると入口からリヤンが走って入ってきた。
その後ろからリヤンを追ってリヒトも入ってきた。
「あら、役立たずを使わなくてもあなたから来てくれるなんて。」
「ブラン…?どうして…。」
リヤンはブランを見て信じられないような顔をしている。
リヤンは今起きている幽霊騒動も知らないのだ。
リヒトはブランよりもその手に咲いている花を見て驚いていた。
「その花…。」
「わたしの花は抜かれてしまって使えないから、あの方が与えて下さったのよ。桔梗を咲かせられるのはルミエさんだけではありませんよ。」
マナフルールというのは実在する花しか咲かない。
もちろん同じ花が咲く人だっている。
「リヤン、リヒト、ブランから離れろ!」
シエルが叫びながらヒイラギをリヤンたちの方へ飛ばした。
「遅いわ。」
そう言ってブランはリヤンたちの方を見ながら桔梗に魔力を込めた。
その時リヤンたちとブランの間に2つの人影が立ちはだかった。
「とうさん…?かあさん…?」
リヤンの両親はリヤンを守るように手を広げて立っていた。
その目はもう正気を失ったような黒さはなく、子供を守るという覚悟の強い瞳だった。
リヤンは幼い頃に別れた両親の姿に驚き立ち尽くしていた。
「何やってるのよ!」
ブランはリヤンの両親を睨みつけた。
「わたしはね、あの方に再び命を与えて頂いたのよ。あなたたちみたいに花も魔力も扱えないお人形じゃないの。お人形はおとなしくわたしの言うことを聞けばいいのよ!」
そう言ってブランは再び桔梗に魔力を込めた。
しかし、リヤンの両親の瞳はもう黒く濁ることはなかった。
シエルのヒイラギと、子を想う親の愛がリヤンの両親を守ったのだ。
「リヒトくん!」
リヤンの父親が叫んだ。
その声を聞いてリヒトはリヤンを連れてソル達の後ろへ飛んだ。
孤児院の中や植物園に飛ぶという選択肢もあったが、リヤンに自分を想う両親の姿を最後まで見せるべきだと思った。
「そう、いいわ。言うこと聞けないお人形さんはいらないもの。ここへはあの方に頂いた力とお人形を試しに来ただけ。」
そう言うとブランはソル達の後ろにいるリヤンに目を向けた。
「あの方へ“お土産”を持って帰れないことは残念だけど。」
ブランがニヤっと笑うと突然ブランの後ろに丸い穴のようなものが現れ、ブランはその穴に吸い込まれて行った。
「待て!」
レオンがブランを捕えようと素早く穴に切りかかったが既に穴は消えていた。




