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宿屋の部屋に小さな光の粒が集まってきた。
「リヒトが帰ってきたみたいだな。」
シエルは冷静に言った。
リヒトの飛翔に慣れているのもあるが、小さな光の粒にはリヒトの魔力が込められているため、シエルには感知しやすいようだ。
光の粒が消えるとリヒト達が現れた。
「父さん!?」
「いやぁ、リヒトくんのローダンセはすごいね。あっという間に着いたなぁ。」
リヒトは褒められて嬉しそうに笑った。
ソルとシエルはリヒトと共に現れたレオンに驚いた顔をしている。
「いや、まさか父さんも一緒に戻ってくるなんて。騎士団の方は大丈夫なのか?」
「リヒトくんの話を聞いて、すぐに行った方がいいと思ってね。ちょうど騎士団でも墓荒らしを追っているところだし、出張申請を出してきたよ。騎士団長だしね、多少融通はきくさ。」
レオンは親指を立ててウィンクをした。
「俺、父さんに手紙出したんだけど。届く前に合流することになるとは思わなかったよ。」
「とりあえず僕は部屋を取ってくるよ。その後夕飯を食べに行こうか。」
そう言ってレオンはフロントへ向かった。
今は観光シーズンではないため、宿屋は空いている。
しばらくするとレオンが宿泊の手続きを終え部屋に戻ってきた。
レオンと共に夕飯を食べに外へ出ると辺りはもう暗くなっていた。
レオンは何度もヴェルオーに来たことがあるようで、おすすめのレストランに案内してくれた。
「観光客はあまり行かないところなんだけどね、地元の人はよく行くんだよ。賑やかでアットホームなところでね、ヴェルオーの家庭の味を味わえるんだ。」
たどり着いたところは酒場のような雰囲気のお店だった。
中に入ると観光シーズンではないとは思えないほど賑わっていた。
レオンの言っていた通り、旅行で来たような客ではなく、仕事帰りの客が多いようだった。
ソル達はお店の角の席に通された。
レオンがおすすめの料理を何品か注文してくれた。
しばらくするとテーブルに料理が運ばれてきた。
オシャレな料理ではないが、どこか懐かしい雰囲気のあたたかみのある料理だ。
「いただきます。」
料理を食べていると、隣の席の会話が聞こえてきた。
「お前、大丈夫か?奥さんの墓、荒らされちまったんだろ?」
「墓荒らしじゃなかったんだよ。ある人があいつを生き返らせてくれたんだ。」
「何言ってるんだ?生き返るなんてことあるわけないだろ。しっかりしてくれよ。」
「俺はまともだよ。お前幽霊騒動聞いたことあるか?あれは幽霊なんかじゃないんだ。生き返ったんだよ。俺は目の前であいつが生き返るところを見たんだ。」
「どういうことだよ?」
その会話にソルがハッとしてレオンを見ると、レオンは静かに人差し指を口に当ててこちらを見た。
何も言うなということだろう。
ソルは静かに会話に聞き耳を立てた。
「墓荒らしから数日後にある人が訪ねてきたんだ。その人はあいつの骨を持ってた。俺は思わず掴みかかったんだ。そしたらその人に言われたんだ。生き返らせたくないかって。俺はもちろんそんなことできるわけないって言ったんだ。そしたら目の前であいつの骨を使って生き返らせたんだ。何が起きたのかわからなかった。でも確かにあいつだったんだ。でもすぐに骨に戻っちまった。一緒に生活できるように完全に生き返らせるにはお金が必要だと言われたんだ。だから俺は家にあった金を全部渡して生き返らせてもらったんだ。今一緒に暮らしてるが、ほんとに何も変わっていない、あいつなんだ。今度おまえにも会わせるよ。」
ソルの心臓は飛び出そうなくらいバクバクしていた。
リヒトも平静を装っているが、驚いているようだった。
シエルは冷静に食事をしている様子だが、おそらく会話は聞いている。
全員が食べ終わるとレオンが口を開いた。
「さぁ、食べ終わったし帰ろうか。」
レオンはサッとお会計を済ませ、ソル達を連れてレストランを後にした。
レストランが見えないところまで歩くとレオンが話し始めた。
「地元の人が集まるところでは、いろんな情報が聞けるんだ。騎士団の人間がそういうお店を利用するのは情報を集めるためでもあるんだよ。いろいろ話したいだろうが、まずは宿屋に戻ってからね。」




