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リヒトはセントラルの中心街から少し離れた場所に降り立った。
騎士団本部は中心街の王城と繋がった形で建っている。
しかし中心街は人通りが多く、ローダンセによって突然現れるリヒトは目立ってしまう。
そのため人通りの少ない場所を選んだのだ。
「あれ?リヒトくん?」
リヒトが城下の市場を歩いていると後ろから声をかけられた。
「レオンさん!?どうしてここに?」
「フィーネから戻ったばかりだからね。今日はお休みなんだよ。」
レオンは買い物をするため城下の市場に来ていたようだ。
「リヒトくんこそ、セントラルで何してるんだい?」
「僕、レオンさんに会いに騎士団本部に向かってたんだよ。どうしてもすぐに話したいことがあって。」
「僕に?とりあえずうちに来るかい?うちなら他に誰もいないし話しやすいだろう。」
レオンは何の話なのか説明せずとも他の人に聞かれたくない話だと察してくれたようだった。
「ソルは元気かい?」
「元気だよ。ルダンの生活にもすっかり慣れて、植物園での仕事も板についてるよ。」
話しながら歩いていくと、レオンの家に着いた。
レオンの家は市場と騎士団本部の間に建っていた。
もともとはミレーヌが住んでいた家だ。騎士団の寮に住んでいたレオンは東部から戻ったらミレーヌと結婚し、ここで新生活を始める予定だったのだ。
「さぁ、座って。」
リヒトがソファーに腰かけると、レオンはお茶を淹れてくれた。
「それで話っていうのは?」
「実は僕たち墓荒らしと幽霊騒動について調べてたんだけど…。」
リヒトはルダンでのリヤンの両親の話や、ヴェルオーでの出来事などを順を追って話した。
レオンはリヒトの話を黙って聞いていた。
「ソルとシエルはヴェルオーの宿屋で待っててもらってる。とりあえずレオンさんに早く話した方がいいと思って飛んできたんだ。」
「なるほどね。墓荒らしは騎士団でも追ってるんだ。でもなかなか尻尾が掴めなくてね。幽霊騒動についても報告がいくつかあがってはいるよ。」
幽霊は他の場所でも騒動になっているようだ。
しかし、噂の域を出ない報告がほとんどであり、なにか悪さをされたというものでもないため、騎士団で調査をされることはなかった。
「リヒトくん、ちょっとここで待っていてくれるかい?」
「?うん、いいけど…。」
レオンは家を出ると1時間くらいで戻ってきた。
「よし、リヒトくんヴェルオーに行こう。」
「え!?」
レオンは騎士団に墓荒らしに関しての出張申請を出してきたらしい。
こんなに早く対応してくれると思っていなかったリヒトは驚いていた。
「ローブの男が関わっている可能性もあるなら、これ以上君たちだけで行動するのは危険だからね。騎士団長としてもそうだけど、君たちの保護者として一緒に行動させてもらうよ。」
「ありがとう!」
リヒトが元気よくお礼を言うとレオンは優しく微笑んだ。
リヒトはローダンセを咲かせると、レオンとともにヴェルオーの宿屋まで飛んだ。




