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次の日、リヒト、ルミエ、ステラの3人は孤児院へお菓子を届けに向かっていた。
「子どもたち喜んでくれるかしら?」
「もちろんだよ。僕たちもたまに神父さんが買ってきてくれるお菓子がすごく嬉しくてみんな取り合いしてたなぁ。」
そう話しながら歩いていると教会の前に着いた。
孤児院は教会の奥にある。
すると教会の入り口から一組の若い夫婦が出ていった。
「この村の人ではないわね。神父さんに相談かしら?」
協会には悩みを持つ人が訪れることもある。
神父さんに悩み事を相談したり、神に祈りを捧げたりするのだ。
しかし、村の外から訪れる人は滅多にいない。
ひとまず教会に入り、ルミエが神父さんに声をかけた。
「こんにちは。子どもたちにお菓子のお土産をもってきました。」
「ありがとう。子どもたちが喜ぶよ。是非直接渡してあげておくれ。」
ルミエたちは神父さんとともに孤児院に移動した。
食堂へ行くと神父さんが子どもたちを呼んできてくれた。
「わぁ、ルミエだぁ。ステラもリヒトもこんにちは。」
子どもたちはすっかりルミエに懐いている。
「ねぇ、ルミエ。その箱はなぁに?」
「みんなにお菓子のお土産を持ってきたのよ。」
「やったぁ。ありがとう。早く開けようよ。僕が一番ね!」
「みんなで仲良く分けなきゃだめよ。ちゃんと全員分あるから大丈夫。」
あっという間にルミエは子どもたちに囲まれた。
その様子をリヒトは優しい顔で見守っている。
「そうそう、神父さん。さっきご夫婦が教会から帰って行くのを見たんだけど、この村の人じゃないわよね?」
ステラが神父さんにたずねた。
「ここでは話しづらいから、私の部屋で話そうか。」
「わかったわ。ルミエ、神父さんと話してくるから子どもたちのこと、見ていてくれる?」
「わかったわ。じゃあみんな、わたしと一緒にお菓子を食べましょうか。」
「いただきまーす。」と子どもたちがお菓子を食べ始めると、ステラとリヒトは神父さんと共に食堂をあとにした。
部屋につきソファーに腰掛けると神父さんは静かに話し始めた。
「あのご夫婦はリヤンのご両親なんだよ。リヤンを引き取りたいってことだったんだが、今日のところは帰ってもらったんだよ。」
「リヤンはご両親と面会したの?どちらにしてもリヤンはもう15歳だし来年には孤児院を出るだろうから、ご両親のもとに行くか行かないかは本人が決めればいいと思うけど。」
ステラがそう言うと、神父さんは少し困ったような顔をした。
わずかな沈黙のあと神父さんはステラに答えた。
「リヤンはご両親が来たことも知らないんだ。伝えていないんだよ。」
「どうして?リヤンとご両親との間に何かあるの?」
「いや、何かあるというか…。リヤンのご両親はね、亡くなっているんだよ。リヤンが5歳の時に火事でね。リヤンは孤児になってしまってうちに来たんだ。」
「じゃあさっきのご夫婦は別人ってこと?どうしてリヤンを引き取ろうとしてるのかしら?」
すると神父さんが一枚の写真を取り出した。
そこにはさっきのご夫婦と小さなリヤンが写っていた。
「リヤンがうちに来た時に唯一持ってきたのがこの写真なんだよ。近所の人が火事の前に撮ったそうでね、写真をご両親に渡す前に火事が起きてしまったんだ。何もかも失ってしまったリヤンを不憫に思って、この写真だけでもと渡してくれたそうだ。」
「ねぇ、確かにこの写真の夫婦とさっきの夫婦同じだけどさ、何か変じゃない?」
リヒトが写真をまじまじと眺めて言った。
「そのまますぎるよ。リヤンは10年分成長してるけどこの夫婦何ひとつ変わってないよ。子供の10年と大人の10年は多少違うだろうけど、それにしても変わってなさすぎるよ。」
いつまでも若く見える人はいるだろうが、10年もあれば人の見た目は少なからず変化するはずだ。
しかし先程教会から出ていった夫婦は顔だけでなく髪の長さまで写真と同じだった。
「どういうこと?ご両親に顔がそっくりな年の離れた兄弟がいたとしても、パートナーまでそっくりなんてことありえないわよ。」
「リヤンは自分の両親が亡くなった時のことを覚えているんだよ。だから訪ねてきたご夫婦と会えば動揺してしまうんじゃないかと思ってね。リヤンにはこのこと秘密にしておいてくれるかい?」
「もちろんよ。さっきのご夫婦が誰なのかも何の目的でリヤンを引き取ろうとしてるのかも分からないし、リヤンには黙ってた方が良さそうね。」
話を終えて食堂に戻ると、ルミエが子供たちに絵本を読んであげていた。
ルミエが絵本を読み終わるのを待って、3人は植物園へ戻った。




