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レオンとミレーヌは同い年で学生時代からの恋人だった。
レイは2学年上だったが、レオンもミレーヌもとても慕っていた。
学園を卒業後、レオンは騎士団、ミレーヌはレイが勤めている診療所でそれぞれ勤め始めた。
レオンは騎士団に入りすぐにカイと意気投合し、休日はカイの恋人であるルーナと共に4人で過ごすことも多かった。
それから1年後、レイが生まれ育ったフィーネの診療所の先生が亡くなり、レイはそのあとを継ぐためセントラルを離れることとなった。
レオンとカイは騎士団で次々と功績をあげ、カイはセントラルの中のひとつの団の指揮官に任命され、それを期にカイとルーナは結婚することになった。
「ミレーヌ、実は来月から東部で指揮官をすることになったんだ。数年したらセントラルに戻って来る。戻って来たら僕たちも結婚しよう。」
「えぇ、喜んで。」
ミレーヌは涙ぐみながらレオンに抱きついた。
レオンが帰ってきた頃には騎士団長と副騎士団長にカイとレオンが任命されるだろうと言われていた。
実力はカイとレオンの右に出る者はおらず、なにより仲間たちから慕われ信頼されていた。
レオンが東部へ発った頃からミレーヌの周りで不審な人物が目撃されるようになった。
ローブのフードを深く被り顔は見えないが、気付くと少し離れたところからこちらをじっと見ているのだ。
「ミレーヌ、大丈夫なの?一人で出歩いてはだめよ?出かける時は私に連絡してちょうだい。」
「何かしてくるわけじゃないから大丈夫よ。それよりルーナはお腹に赤ちゃんがいるんでしょう?ルーナに何かあったらカイにも申し訳ないもの。私のことは心配しないで。自分の体を大事にしてね。」
ルーナはとても心配していたが、ミレーヌは気にする様子もなくいつも通りの明るさで元気に過ごしていた。
そしてレオンが東部へ発って一月が経つ頃、ミレーヌが妊娠していることがわかった。
「ミレーヌおめでとう。うちの子と同い年ね、嬉しい。この子たちもきっと私たちのようにかけがえのない友達になるわ。レオンにも早く知らせないと。」
「レオンにはもう少し落ち着いてから連絡するわ。東部へ発ってまだ一月だし、あちらも今大変だと思うから。」
東部では盗賊による被害が頻発しており、レオンたちの団は盗賊を壊滅するべくアジトの捜索を行っているところだった。
そんなある日ミレーヌがルーナの家から帰る途中、ミレーヌの横に1台の馬車が止まり、馬車の扉が開いたかと思うとあのローブの男が表れ馬車に引きづり込まれそうになった。
「なにしてるんだ!?」
帰宅途中だったカイがたまたま通りかかり叫ぶと、馬車はそのまま逃げていった。
カイは一人だったため馬車を追うのはやめ、ミレーヌの保護を優先した。
ミレーヌはその日ルーナの家で泊まることになった。
翌日カイとルーナに付き添われ自宅に戻ると、1通の手紙がポストに入っていた。
『あいつと結婚するのは許さない。あいつが戻ってくる前に必ず君を僕のものにする。君は僕だけのもの。すぐ迎えに行くよ。』
「ミレーヌ、君はどこかに身を隠した方がいい。レオンと結婚するってわかっていてもこれだけ執着してるんだ。危険だよ。お腹にレオンとの子がいるとわかればお腹の子を殺すかもしれない。」
「そんな…。でもどこに隠れればいいの…?」
「俺の家は当然バレてる。それにレオンのところに行ったってレオンの事を知っている以上気付かれる。ミレーヌが消えれば一番にレオンの周りを探るだろう。どこから情報が漏れるか分からない。レオンにもしばらくはミレーヌのことやお腹の子のことも言わない方がいい。あの男のことは俺が探る。」
「ミレーヌ、レイさんのところはどう?レイさんならお腹の子も守れるわ。」
さっそくレイのもとへ手紙を出し数日後レイから手紙とともにひとつの花が送られてきた。
レイが1週間後セントラルの診療所を訪れた時にミレーヌを連れてフィーネへ向かうという内容だった。
手紙とともに届いた花はレイのミスミソウだ。
レイのミスミソウは存在を隠すことができる。
この花を身につけることで特定の人間以外からはミレーヌの存在を隠すことができる。
レイがセントラルに来るまでの間は騎士団の宿舎でミレーヌを匿うことになった。
騎士団には地方から出てきた団員に会いに来た家族が泊まるための宿舎もあり、そこにルーナも一緒に滞在してくれることになった。
「ルーナも双子がお腹にいるというのに、ごめんなさいね。」
「何言ってるの、ミレーヌ。私たちにとってはミレーヌもミレーヌ達の子もこの子達と同じように大切なのよ。あなたはとにかく無事に逃げることを考えて。」
「ありがとう、ルーナ。」
ミレーヌは子供たちの未来を心から祈った。
そしていよいよレイがセントラルへ来る日。
レイが迎えに来ると気付かれて後をつけられる恐れがあるため、ミレーヌはミスミソウを身につけて診療所を訪れ、姿を隠したままレイとともに馬車に乗ることとなった。
レイからはもちろんミレーヌの姿は見えているが、万が一にも気付かれないようミレーヌがいないものとして振る舞い、馬車の中でも一言も話さなかった。
フィーネに着き、馬車を降りて診療所の中へ入るまで一時も気を抜くことはなかった。
診療所へ入り辺りに誰もいないことを確認すると、ようやくレイがミレーヌの方を向き声をかけた。
「ミレーヌ、お疲れ様。大変だったね。」
そう行ってレイはミレーヌを抱きしめた。
「お腹は大丈夫かい?痛くなったりしていないかい?」
「大丈夫です。レイさん、本当にありがとうございます。ご迷惑をおかけしてすみません。」
「迷惑なんかじゃないさ。賑やかなところから越してきて寂しかったところだよ。ミレーヌが来てくれて嬉しいよ。」
こうしてミレーヌはレイとともにフィーネで暮らすこととなった。




