序章 (3)
パティによるこの世界についての説明回です。
3/2 改稿しました。詳細は後書きにて
3/4 ルビ修正
----- 精霊化と属性 -----
パティから精霊になるのは簡単ではないと聞いたばかりな訳だがその内容は簡単すぎた。
まるで意味がわからない、だからとりあえず説明を求めよう。
「ちょっとまて、さっき簡単な訳ないじゃないっていったよな?」
「言ったわね」
「ドコが簡単じゃないんだ?」
「祠はトテイアネの各地にあるけど、ここから一番近いのはファリア湖の浮島にあるわ」
「……そこに行くのが難しいのか?」
「いいえ、簡単にいけるわよ?」
パティの顔は「まだわからないかしら?」とでも言いたげだ。
うーん、祠は複数、行くこと事態は特に難しくない、ではなにが難しい?
木の実の入手?いや、それならそうと言うはずだから多分違う。
祈りの言葉が難しい?やっぱりそれならそうと言うはずだろうからコレも違う。
ではドコが問題なんだ?
…………ん?祠はトテイアネの各地にある?
つまりそう言うことなのかな。
「ぶー、時間切れでーす。こんな簡単なこともわからないんじゃお姉さんガッカリだぞ?」
「いや、ちょうど今わかったところだよ」
「ほほー、では答えてもらいましょうか」
「祠はトテイアネの各地にあるってことは祠まで行かなくちゃいけないわけだな」
「うんうん」
「つまり、常人では意識を保てないこの世界で祠まで行って祈りを捧げるなんてことは難題な訳だ。要は俺にとっては簡単なこの第一条件が最大にして最初の難関ってことだろ?」
「はーい、よく出来ました。いままで人間から精霊になったのは三人だけ。そして一番最初に人間が精霊化したのはいまから約七十二億年前、そして一番最近人間が精霊化したのは約五億年前になるわ。さて、どれくらい難関なのかわかっていただけたかしら?」
……七十二億年前とかどんだけなんだ。正直予想していた展開とは桁が違いすぎる。
「ほらほら、ポカーンとしてないで感想を聞かせてよ」
「いや、見ればわかると思うけどビックリした。まさかそこまで低確率な話とは想像の範疇外だった。思わず呆然とアホ面を晒すぐらいにな」
「ふふん、正直運がいいわ。ユズじゃなくて私がね。人間の精霊化に立ち会えるなんてものすごーくレアなんだから。このチャンスを逃したら次は何億年後かしら?って話だもの」
「確かにそう言われると想像を絶するレアイベントだな」
「でしょでしょ。いくら時間を操れてもトテイアネの時間は不変だから時間を飛んで一万年後なんて事は出来ないのよね」
「んー、それってどういうことになるんだ?」
「例えば私がここでちょっと待ってねって外の世界に遊びに行くとするじゃない」
「ふむふむ」
「私が外の世界で百年放蕩して帰ってきたとするじゃない。それで帰ってきたときに私の主観的にはユズと会うのは百年ぶりで久しぶりって思うわよね」
百年も経ってお久しぶりだけで済ませちゃうのはやっぱり精霊だからなのかね?
寿命が長くて百年程度の人間からしたら想像できない。
まぁこのまま何事もなければ俺もその想像できない方に仲間入りしちゃうんだけどさ。
「そりゃ百年も会わなけりゃ久しぶりだわな」
「でもユズから見た私はちょっと世界門の向こうへ行ったと思ったらまた世界扉が現れてそこから出てきたって感覚になるから全然久しぶりじゃないのよ」
「ふぅむ、不思議なもんだな」
「だから外の世界から帰ってきた人には初対面じゃなければお久しぶりですって言うのがマナーよ」
「なるほどねー。精霊にも色々マナーとかあるんだな」
「特殊なのはそれぐらいで他はどの世界でもごくごく常識的なことよ?基本は人にされて嫌なことは自分もやらない。これぐらいじゃないかしら?」
確かにどこに行っても通用しそうな常識だな。
しかし世界門か召喚の門とはまた別なんだろうしやっぱり魔法なのかな?
「シンプルでいいね。ところで世界扉って魔法だよな?」
「そうよ。世界と世界を渡る扉『召喚の門』はこれの亜種ね」
「俺にも使えるかな?」
「精霊になれば魔法も使えるようになるわよ。何でも出来るとは言わないけど自分の属性に合うものなら出来ることはすごく多いわよ」
「属性って木火土金水とかそういうやつか?」
「そうそう、本当はもっと多岐にわたるけどね。普通の精霊は物が年月を経て至るから元になった物に属性を左右されやすいわね。例えば樹木だったら木や土や水に近しい属性になることが多いわ」
「人間は?」
「三人とも特に共通点はないからランダムじゃないかしら?」
「んないいかげんな……」
「仕方ないじゃない、誰かが統計を取っているわけじゃないし私だって話の種に聞いただけだからね。そもそも過去に三人しか例がないんだから統計って程の物にならないわよ?」
う……納得できてしまった。そうだよなぁ、なにしろ前例が少なすぎる。こればっかりはどうしようもないか。
「それもそうか……。そういえばパティの属性は何になるんだ?」
「主属性が時と空、副属性として破と雲を持っているわ」
「うん、まず主属性と副属性の違いがわからん。そして属性の意味もわからん。時はそのままの意味なんだろうけど他がさっぱりだ」
「主属性と副属性の違いは主属性は修行すれば100%力を引き出せる属性で副属性はどんなに修行しても70%ぐらいまでしか力が引き出せないわ。相性がよければ副属性から主属性に昇格することもあるけどね」
「なるほど、何事も修行次第ってことなのね」
「そうなるわね。因みに世界扉は時と空の属性が必須になるわ」
「それってもしかして厳しい?」
「そうね、属性はものすごく細々と分かれてるからね。精霊達の間でも特別扱いされる属性とされない属性があるけど時と空は特別扱いされるほうね」
「特別扱いされる属性って他になにがあるんだ?」
「えーとね、創、破、時、空、生、この五つはことさら特別扱いされるわね。創は無から有を生み出す力、破は過程を無視して破壊という結果を生み出す力、時は文字通り時間を操る力、空は空間に関する力、生は再生させる力、生み出す力じゃないからそこを間違えないでね」
うーん、確かに聞いただけでも特別扱いされそうな感じがするな。
でもパティの属性って副属性含んで数えたからってこの内三種って……すごくないか?
「……パティの属性って破格過ぎないか?」
「そうねー。私はふらふら遊んでるだけだから偉い精霊ってわけでもないし気にしないで?」
「そうするよ……」
なんかある意味予想通りの反応で脱力するわ……。
しかし自力での世界移動は無理そうだけどパティはいつまで付き合ってくれるんだろうか?
いつまでも一緒にって訳にはいかないんだろうけど面と向かって聞くのは怖い、かも……。
「あと属性じゃないんだけど増幅の固有技能を持ってる精霊は重宝がられるわね」
「固有技能……ってまた新しい単語ですか」
「説明してなかったわね。魔法とはまた違う特殊な力を固有技能っていうの。ユズの世界には超能力者っていなかった?そう言うのを固有技能って言うのよ」
「偽者が多かったけどそう言うのは確かにいたな」
「力の大小もそうだし種類やもっている数まで千差万別よ。精霊としての属性は最低でも何か一つは持つことになるけど固有技能に関しては持ってる子と持って無い子に別れるわね」
「それじゃ属性は火だけしかないけど固有技能は五種類持ってるみたいな極端な例も?」
「数は少ないけどいない訳じゃないわね」
うーん、それなら当たり属性は引けなくても最悪使い勝手の良い固有技能が手に入ると嬉しいな。
「なるほどね。そういえば自分の属性ってどうすればわかるんだ?」
「自身の内面に聞けば自然と頭に浮かぶわ。固有技能も同様ね」
「調べる魔法とか道具ってないのか?」
「一応あるけど魔法は自分の知らない、理解できない属性はわからないし道具を作っても作者が登録していない属性は当然出てこないから意味がないわ」
「じゃぁ珍しい属性があったら言わなければバレないのか」
「そういうことになるわね現に私が破の属性が使えるだなんて知っているのはほんの一握りよ?」
「やっぱりそう言うのはアリなのか」
「そうね、特別扱いされる五種は色々重宝する属性だもの、まじめな子でなければ隠す子も多いわ」
「パティは遊び人っぽいからあまり公言しないタイプなんですね、わかります」
これまでの会話でこの子がその手の楽しいことが好きなタイプってのは理解したから間違ってないはずだ。外れてたら嘘だッ!って言ってやろう。
「当たりよ♪私はまじめなタイプじゃないもの。会話しててそれぐらいわかるでしょ?」
「うん、とてもそういうタイプには見えないね」
「あら酷い。たまには真面目にやってるわよ?」
「たまにしか真面目にならない、が正しい気がしますよ」
「ふふっ、お見通しなのね」
やれやれ、楽しそうだなぁ……。
それでも、堅苦しいよりは格段にいいね。
「さて、大事なところは大体説明できたと思うんだけど何か質問はあるかしら?」
さて、ここまでで聞いた話を整理しておこうかな。
この世界はトテイアネ、全てのお隣に存在する世界。
元いた地球に戻るのは容易ではない。
理由は地球一つとっても平行異世界があるせいで特定が難しい。
精霊になるためには祠で祈りを捧げ木の実を食べる。
精霊には属性と固有技能がある。
固有技能は運次第で持てたり持てなかったりする。
属性と固有技能は自身の内面に問いかけるとわかる。
自身の属性によって使える魔法と使えない魔法がある。
世界扉を習得するには時と空の属性が必須。
精霊化した人間は過去三名のみ直近でも5億年前が最後。
精霊になったときの属性は元々の起源に近しいものになる。
人間が精霊化する場合の属性に法則性は見られない。
貴重な属性は創、破、時、空、生の五種。
こんなところかな?
およそ13,000字が13行になってしまった……。でもメタネタは程々にしないと怒られそうだ。
他に聞いておくべき事は……んん?そう言えば根本的なことを聞くのを忘れていた。
「そういえばさ、言語体型ってどうなってるのさ?」
「え?」
「今までの会話は明らかに日本語でやりとりしてたでしょ?地球ファンだから日本語いけちゃうの?」
「あぁ、そういうことね。今喋ってる口の動きと貴方の耳に聞こえる音、比べるとどうなってる?」「おわ、言葉と口が一致してなくて気持ち悪いよ!?」
「つまり私は日本語を喋っていません」
「これも魔法?」
「その通りです。これは始原魔法『言葉の祝福』っていう言葉を司る精霊達による翻訳魔法なの」
「翻訳魔法か、便利そうだね」
「実際便利なのよ。この魔法があるおかげで言語体系がまるで違う種族と意思の疎通が容易になるんですもの。この魔法がない状態なんて考えたくないわ」
なかなか便利なんだな。英語のテストの時とかに重宝しそうだな。
あれ?これってどの程度まで出来る魔法なんだろうか。
「この言葉の祝福ってどの程度のことまで出来るんだ?」
「単純に喋った言葉を翻訳して、耳には言ってくる言葉を翻訳して、さらに視覚に入った言語も翻訳できるわよ。外の世界での旅行には必須魔法と言っても過言ではないわ」
「おぉぉ……便利すぎる。ひょっとして動植物の言葉も翻訳できたりするのか?」
「うーん、残念ながら意思を持って話す言葉でなければ上手く魔法が作用しないらしくて植物に関してはダメみたいよ。木から至った精霊なんかは念話みたいな力で会話できるみたいだけどそれも大雑把な意思を感じ取るぐらいなものらしいわ」
「そっか、残念。でも動物はいけるんだな」
「動物でも相性の良い悪いはあるみたいだけどね」
うおぉ!やる気出た!猫や犬と簡単でも会話できる日が来るなんて夢のようだ!
この魔法だけはどんな属性になっても必死で覚えなければなるまい。
「この魔法は何の属性が必要になるんだ?」
「特には必要ないわ。自身に魔力があればあとは言葉を司る精霊と契約をするだけだもの」
「契約を拒まれたりとかは?」
「聞いた事がないから大丈夫じゃないかしら。対価として魔力を求められるけど等価交換なんてのは何事においてもそうでしょう?」
確かにそれが普通か。
なら支払う対価もない俺の面倒を見てくれているパティはなんなんだろう?
お人好し、いや精霊だからお精霊好し?
……語呂が悪すぎる。
さて、大体必要な事は聞けたし祠に案内してもらおうかな。
「さて、それじゃそろそろ祠に案内してくれないか」
「それじゃ行くわよ」
「は?」
――――――そうしてパティが指を鳴らした次の瞬間、俺達は祠の前に一瞬で移動したのだった。
少々中途半端かもしれませんが今回はここで終了。
1話辺り2,000字程度としているんですが少ないでしょうか?
まだ世界について説明したいとこ色々残ったままだわ、うぅむ……。
その都度小話程度に入れていきましょうかね。
3/1 追記
あれやこれやと一部は大雑把にですがほぼ説明完了と言ってもいいでしょう。
次回更新の『序章 (4)』からは新規部分になります。
それではまた次回