序章 (2)
1週間に1回と言いつつ早々の更新です。
暇つぶし程度に読んであげてくださいな。
12/22 少々追記しました。詳細はあとがきにて。
3/1 改稿しました。詳細はあとがきにて
----- 異世界よこんにちは -----
さて、ようやく地面に足を付くことが出来た。
正直ふわふわ漂ってるのは違和感があって仕方がなかったんだ。
自分の意思で浮いているならまだしも自分じゃ何も出来ないしなぁ……。
とりあえず助けてくれたのはどちら様なのかな?
出てきてくれるとありがたいんだけどなー、と思いつつ周囲を見回すとちょうど俺の正面の茂みの向こうに人影が見えた。
近付いてきた人影は女性だった。しかも美人さんだ。
腰辺りまで伸ばしたキレイな銀髪に白い肌、瑠璃色の瞳に整った体型。
蓮華が和製完璧な美少女ならこっちは洋製完璧な美人と言ったところだろうか。
身近に|あんな(蓮華)のがいるせいであまり女性に目を惹かれるって事はなかったんだがコレはさすがに……。
そんな事を考えていたら「こんにちは」と近付いてきた人影が声を掛けてきたので挨拶を返す。
「こんにちは、君が俺を助けてくれた人かな?」
「えぇ、そうよ。近くまで遊びに来ていたら突然助けを求める声が聞こえたからびっくりしちゃったわよ?」
そうクスクス笑いながら告げられた。うーん、美人さんは何をしても様になるなぁ。
「すいません……。でも本当に助かりましたよ。あのままじゃ墜落して木っ端微塵でしたから」
「どういたしまして。無事助けられてよかったわ」
「感謝してます。自分じゃ何も出来ませんでしたから……」
「やっぱり貴方は外から来た人なのね。今の状況はわかる?」
外から……ね、この場合は外国って意味じゃないんだろうなぁ、やっぱり。
「なんとなくは……。少なくとも俺の生きていた世界とは違うことぐらいですけど」
「そうね、そこがわかってるなら大丈夫よ。パニックもおこしていないようだしね」
「混乱はしてるんですけどね。無駄に騒ぐよりいいかな、と」
なによりこんな美人さんの前で慌てふためく無様な姿は見せたくない。
俺だって男なのだから見栄はある。美人さんの前ならなおさらだ。
「いい心がけだと思うわよ。それにしても救助隊の方々遅いわね……。何してるのかしら」
「救助隊ってそんなにすぐ来るものなんですか?」
「普通は歪の発生から五分もしないうちに来るわね。到着に時間を掛ければ掛けただけ外の世界からの落し物が多くなるから。事後処理も面倒だしね。」
「歪…・・・ですか。どういうものなんですか?」
「そうね、世界に唐突に開いた穴といった表現でいいのかしら?発生すればすぐ観測できるしそのための警戒もしているけれど発生の原理までわかっていないから……」
「穴……?俺は扉というか門みたいなのを潜って此処に来たんですけど」
「えっ!?」
目の前の美人さんは驚きの声を上げると同時に顔を青褪めさせた。
「……その反応は何か問題があるんですね」
「え、えぇ……。その説明をする前にどういう状況で門を潜ったのか教えてもらえるかしら?」
「はい、カクカクシカジカとこういう訳なんですが……」
手抜きって言わないで!ともあれ此処にきた経緯を説明する。
「なるほどね。多分その門は『召喚の門』だと思うわ。本来なら異世界から召喚対象のみを選別して世界を移動させる魔法なのよ。たぶんそのロープで繋がっていたから門は貴方も一緒に吸い込んだのね。貴方が潜らないうちに門が閉じたのは貴方のお友達が世界に到着したところで魔力供給を断ったとかそんなところだと思うわ」
「なるほど、よくわかった。それで問題点はなんでしょうか?」
「歪は観測しているけど門までは観測していない。コレでわかるかしら?」
「ふむ、つまり俺の帰るべき世界がどの世界かわからない。そんなところでしょうか?」
「正解。ちゃんと考えれる子みたいね。それじゃ自己紹介をしましょうか」
なんぞそれ、意味わかんないですよ?おねーさん……。
「そんないまさら何言い出してるのこの人みたいな顔しないで?いまさらになったのにもちゃんと理由があるんだから」
「その理由とは?」
「貴方が歪に落ちた被害者だと思ったからよ。この被害者は此処での記憶を忘れてもらってから送り返されるの。十分足らずでお別れする相手に自己紹介なんて必要ないと思ったんだもの」
「納得しました。それではこちらから。俺の名前は千野柚太、君から見て異世界人だ」
「最後の下りは知ってるわよ。私はツァイティム・パトリシア、長いからパティかトリシャっていいわ」
「よろしく、パティ。俺の事は柚太でいいよ」
「よろしくね。んー……ユズタって呼びにくいからユズでいいかしら?」
「もちろん、そうやって呼ぶ友達も多いしな。因みに柚太が名前で千野が苗字……家名って言ったほうがわかりやすいか?」
「名前の並びは私と一緒なのね。パトリシアが名前でツァイティムが家名になるわ」
「おぉう、てっきり逆かと思ってたよ。その手の発音の名前は俺の世界じゃパトリシアの方が家名になってるんだ」
「私もいろんな異世界を見てきたけどそういう世界の方が多いわね。貴方の元の世界の名前教えてもらえる?」
「世界の名前か、そんな事は聞いたことないけど惑星名でいいなら地球って名前だよ」
「地球!?ふふふ、運命……コレは運命だわ!」
なんだか様子がおかしいっていうかテンションがいきなりMAXになった感じがするぞ……。
「え、えーっと……どうしたんだ急に」
「私って地球ファンなの、後でいっぱいお話しましょうね、くふふふふ」
笑いかた怖いよ……。なんだこれ、さっきまでの淑やかな雰囲気はドコへいっの!?
「…………」
俺呆然です、ぽかーん。
「ごめんなさいね。地球のことになるとちょっと我を忘れちゃって……。それじゃ現状把握のためにも色々説明してあげるわね」
「なんかえらそーですね、おねーさん……」
思わずそんな事を言って苦笑してしまった。
「いいじゃない、どの道必要でしょ?」
と言ってウインクして来た。ヤバイ、この人カワイイな。顔赤くなってないだろうか……。恥ずい。
「まずはこの世界の名前からね。この世界は『トテイアネ』と言います。この名前には特別な意味があって『全てのお隣に存在する世界』って意味なの。ここから推察できる事はあるかしら?」
「はい、少なくとも俺のもといた地球と蓮華が召喚された以外にも無数に世界はある」
「正解。とても沢山あるわよ?だーれもその実態を把握できないぐらい無数にね」
「そんなにあるのか……。蓮華が召喚された世界の扉に37564246って数字があったんだがコレは世界のシリアルナンバーみたいなものと考えていいのか?」
「そうね、その考えで間違いないわよ。そんな数字よりずっとずっと多い数の世界が存在しているわ。例えば貴方の世界にシンデレラって童話があるわよね?」
「うん、あるよ。っていうか何でそんな事知ってるんだ……」
「言ったでしょ、地球ファンだって」
そう言ってまたクスクスと笑う。
「そういやさっきそう言ってたな。それでそのシンデレラがどう関係して来るんだ?」
「シンデレラって言うのは地球じゃない異世界で実際に起こった出来事なの」
「そうなのか。……要するにそれはどういうことなんだ?」
「あんまり驚かれないのも寂しいわね。物語を思いつくことっていうのは実は異世界を覗き見ているのと一緒なの。実際には異世界自体を見ているんじゃないけどね」
「じゃぁ何を見ているんだ?」
「生命の書、アカシックレコードとも言うわね。普通は自分の世界の生命の書に繋がるんだけど少し相性が別の世界寄りになっているのね。因みに自分の世界の生命の書に繋がれば預言者になれるわ」
「アカシックレコード……って確か世界の始まりから終わりまでの全てが記されているってやつか……。なるほど、それで預言者ね……んん?それってつまり物語の数だけ異世界が存在するって事?」
「うん、なかなか理解が早くてよろしい。それじゃ、シンデレラという話を例にあげるわね。とある地球ではシンデレラを助けるのが魔女なんだけど、また別の地球では魔法使いなの、さらにそのまた別の地球ではシンデレラが男で舞踏会はお姫様の婿探しっていうものまであるわ。おもしろいでしょ?」
「つまりパラレルワールドの数だけ世界は存在しその分だけ生命の書が存在している?」
「おぉー、大正解です。さらにユズの生まれなかった地球もあるしユズのお友達が存在しない地球もあるわよ。さてそこから導き出される答えは?」
「俺が元の世界に帰るのは途方もなく難しいことだってことか」
「よく出来ました。でも安心して、トテイアネだけは違う。この世界の生命の書という物は存在しないわ。つまり行動如何で何でも出来るわ。不可能だって可能になる」
「生命の書がないっていうのはどういう世界なんだ?」
「未来が不確定って言うのもあるけどトテイアネが特殊なの。ここでは時間が流れない……ちょっと違うかな。確かに時間の経過はあるんだけど時間の概念がないとでも言ったらいいのかな?この世界でいくら時間が経とうが外の世界にはなんら関係がないの。世界移動の時に開く門には座標の他に時の概念が加わる。この世界で30年過ごした後に元いた時間に帰ることも可能だし30年後に帰ることも可能なの。」
「つまり蓮華を助けてから元の時間に帰ることも可能なわけか」
「そうね、それも可能。ただし貴方は人間だからきっと元の世界が見つかる前に老衰で死ぬわね」
「ですよね。打開策は?」
「人間やめちゃえばいいわよ」
おねーさん……さすがにそれはないわ。俺どん引きです。
「まってまって、引かないで。えーとね、私は精霊なんだけど同じ存在にならないかってこと」
「人間やめるのは確定事項なんですね。それだけでも十分引く理由になるんですけどメリットは?」
「まず不老になるわ。受肉すれば普通に年を取ることも可能よ。受肉した状態で死んでも精霊に戻るだけで完全に死ぬことはないわ。精霊を滅ぼせる存在なんてそんなにないしね。」
「当然デメリットもあるんだろう?」
「もちろん、簡単に死ねないと言うことは生きるのに飽くことがあるわ。やっぱりそう言う死にたがりの精霊もいるしね。あとは輪廻から外れてしまうということ。精霊のまま死んだらそのまま消滅よ。生まれ変わることはもう無い。力が強い精霊になった場合どこかの世界のカミサマに据えられるかもしれないわね。もちろん何もしなくても年月を積み重ねることで勝手に力が強くなるから長生き程面倒なお役目が回ってくるわ。うまく逃げてる精霊もいるみたいだけどね」
「うーん、メリットの方が圧倒的に大きいな。こんなんじゃみんな精霊になりたがるんじゃないか?」
「そうでもないわ。ま、精霊になれることを普通は知らないし知っていても手段がない。」
「そうなのか?」
賢い魔法使いとかこの世界に無理やり乗り込んできそうなもんだがなぁ……。
「大体何考えてるかわかるけど普通はトテイアネで人間が意識を保てるほうがおかしいのよ?」
「なんですと?」
そういえば蓮華も気を失っていたっけね。
「本当に、どういう理屈で意識を保っているのかわからないけど非常識よね」
「んなこと言われてもなぁ……。俺にもわからないし」
「それもそっか。さて、それじゃぁ精霊になるって事でいいかしら?」
「なんか勝手に決定事項にされている気がするがそれで頼むよ。元の世界に戻って違和感なく過ごせるんなら問題ない」
「あら、意外とあっさり決めちゃうのね。精霊になった後にやっぱり人間に戻りたいですってことは無理だからね?」
「いまさら曲げたりはしないよ。ただ現状それが一番いい選択肢だろうしね」
俺にだって思うことがない訳ではないがこの世界に来てしまったからには決断しなければならない。そんな事はこの先いくらでもあるだろうしなるべく最悪手を打たないよう立ち回るだけだ。
過去には戻れないし……精霊になれば戻れるんだろうが此処に来てしまった事実は変わらない。
ならば今出来ることを精一杯やる。たとえベストが無理でもベターの結果を掴み取る、それだけだ。そうだ、コレも聞いておかないとな。
「そうえば聞いておきたいことがあるんだが」
「いいわよ。随時質問は受け付けてるし」
「簡単に精霊になりませんかって聞いてきたけど精霊になるのってそんなに簡単なのか?」
「簡単な訳ないじゃない」
パティはなに言ってるんだと言わんばかりの呆れ顔。
ま、そりゃそうか。そんなに簡単に精霊になれたらそこらじゅう精霊だらけだ。
やっぱりなんか試練とかそんなのをクリアしなきゃならないんだろうか?
「で、なにをすればいいんだ?」
「祠で祈りを捧げて木の実を食べるだけよ」
――――――ちょっとまて、それのドコが簡単じゃないんだ!?
どうにか異世界入りを果たせました。
次回はパティによる世界説明に尽きると思います。
説明ばっかりで話が進まない分早目の更新を目指したいところですね。
目標は3日に1回!
最低でも1週間に1回というところでしょうか。
12/22 追記
パティの印象についてを消して容姿について追記しました。
元気がいい、というのを第一印象にするのは読み返して違和感があったもので……。
3/1 追記
改稿二回目です。文章量は増えましたがあまり話が進んでないですね。
次回は精霊化の説明と属性の説明になるとおもいます。
属性の説明なんかは一番変わった部分じゃないかなぁ……。
前書きと後書きは追記方式にしてあります。自分への戒めを含めて改稿はなるべく無しにしたいですね。
それではまた次回に