ドアマットヒロインに転生しましたが、可哀想な私症候群の自分にとっては天国です
突然ですが、転生しました。
いや、いきなりなんだと思いますが私もたった今前世の記憶を思い出してちょっと困惑しています。
なので整理していきましょう。
まずは現在の私の状況から。
今世の私の名前はリリム。
前世とは異なる世界に生まれ、大国の貴族の娘として生まれる。
しかし実母が亡くなると父が後妻を連れてくる。
結果幼くして継母に虐待され泣き暮らす日々を送っていた。
今継母のお腹には女の子が宿っているという。
典型的ドアマットヒロインのスタートラインじゃないですかやだー。
「ここまで典型的だと笑える」
だが、ここでさらに前世のことを整理させて欲しい。
今しがた思い出した記憶によると。
前世の私は『可哀想な私症候群』だったらしい。
つまりは不幸な自分が一番好きなダメ人間ということである。
慰められて優しくされて嬉しいとか通り越して、不幸であることそのものに快感を感じていた。
結果前世の私は超がつくほどのブラック企業でいいように扱われ、体を壊して早くに亡くなったのだが。
それも快感に感じていたのだから始末に負えない。
で、今現在。
記憶は前世今世共にあるが、意識のほとんどが混ざり合い前世の性格の方が強いと見える。
つまり。
「この状況、美味しいのでは?」
ということで、ドアマット扱いを思う存分楽しんできます。
「リリム!アンタは本当に醜いわね!」
「お、お義母様酷いわ…」
「うるさいわね!お黙り!そんなうるさい口はこうだよ!」
「痛いっ、お義母様やめてぇ!」
この継母、幼子相手に容赦ない。
はっきり言って最&高。
好き。
「お義母様、なにするの!」
「うるさい!いつまでも前の母親の形見なんて大事にしやがって!こんなものこうしてやる!」
「きゃー!!!」
今世の私の魂が泣き叫ぶのがわかる。
でもその心の痛みが…快感。
涙が溢れて止まらないこの感覚がたまらない。
「うっ…ぐすっ…」
「ふんっ…泣いたって壊れたものは戻りゃしないよ!」
「うぅううううう…」
ああ、お義母様…貴女、最っ高です!!!
そんなこんなでお義母様に虐げられ、生まれてきた妹にも虐げられ、実父には庇ってももらえないどころかスルーされる毎日。
お嬢様どころか下働きも同然の扱いを受け、使用人にすら虐げられる日々。
…ああ、私の人生はこんなにも快感に満ちている!!!
下手に純粋無垢な子供の、今世の記憶と自我が混ざってくれたことでちょっとしたことにも傷つく事ができる。
傷つくと快感を感じる。
最&高!!!
我が人生はこんなにも美味しい!!!
…と、悦に浸っていたのが良くなかったのか。
唐突にその日は来た。
「リリム」
「え、貴方は?」
キラキラした王子様みたいな男の子が、屋敷に現れた。
そして両親でも妹でもなく下働きの格好をした私に話しかけて、慈愛深い笑みを向けて手を差し伸べてくる。
「王子殿下、なにをっ」
「うるさい、姉を虐げるような性悪が僕に話しかけるな。耳が腐る」
あ、王子様みたいじゃなくて本当に王子様だった。
口が悪い王子様だなぁ。
「どうして王子殿下がそれをっ」
「まさかリリム、アンタチクったのかい!?」
いやいやまさか。
こんな最高な日々を自ら捨てるような真似しませんとも。
でもその憎悪のこもった目、最高。
とても今世の私のガラスハートが傷ついて、結果混ざり合った私に快感を生む。
ありがとう、愚母と愚妹に恵まれて私は幸せです。
「リリムはそんなことをしていません。そもそも、リリムと僕が会ったのは貴女がリリムの継母になる前の一度だけですから。リリムは僕と会ったことすら覚えていない様子ですし」
「それなら何故!」
「僕がリリムに会いたいと何度言っても叶えられることはなく、リリムが公の場に出ることさえない。不審に思うのは当然のことでしょう」
「ぐうっ…」
義母が唸る。
「リリム。僕は君を助けに来たんだ」
「王子殿下!」
「僕と共に行こう。君は公爵家の娘として相応しい扱いを受けるべきだ」
なんだろう。
隠居した祖父母の元にでも連れて行って公爵家の娘ごっこをさせて、ついでに婚約者にでもしようって腹づもりですか?
でもそんなの誰も望んでないんですよぉ〜。
「お断りします」
「え?リリム?」
「私はお父様とお義母様、妹を心から愛しています。みんなで暮らしていける今が一番幸せなんです」
だって虐げてもらえるからね。
「リリム…アンタ…」
「お姉様…?」
「…」
なんだか愚父と愚母、愚妹が感動したような目や困惑する目を向けてくるが本心だよ本心。
君らが思うような意味じゃないけどね!!!
「…参ったな。相変わらず、君は心が綺麗すぎる」
「いやそういうことじゃないです」
「ならば、こうしよう。君のご両親と妹に相応しい罰を用意していたがそれは無しにする。だから、大人しく僕の言うことを聞いてくれないか」
え、なにこいつ。
爽やかイケメンの皮を被った鬼か。
でも…これでも一応真っ当ではない意味ではあるが深く愛する両親や妹と無理矢理引き離される…私の今世の自我による純粋な部分も、若干の名残惜しさや悲しさは感じてる…。
実質、両親や妹を人質に取られたこの状況…。
うん、思ったより良い!!!
快感を確かに感じる!!!
「わかりました…」
「ありがとう。お前たち、リリムに感謝するように」
「リリム…」
「お姉様…」
「…」
はいはいそんな感動的な場面じゃありませんよー。
「では、行こうか」
「はい」
で、結局私はお父様に代を譲って隠居していた祖父母の元に送られて公爵家の娘ごっこをさせられた。
前世の記憶と今世の記憶のチート状態のおかげで、勉強なんてしてない虐げられた子供時代にもかかわらずそれなりにすぐにマナーや教養は身についた。結果公爵家の娘ごっこは王子様の満足がいくほどに様になった。
で、案の定婚約者にされた。
でも、この人はこの人でそれなりの快感を与えてくれるから許す。
あの私に快感をくれていた大好きな家族との接触禁止とか、無理矢理な婚約とか地味に私の純粋な部分は傷ついてくれるからもう快感。
ある意味王子様大好き。
「リリム、愛しているよ。君を幸せにする」
「…私も王子殿下が、大好きかもしれません」
「ふふ、いつかはちゃんと大好きだって言わせて見せるよ」
キラキラ王子様な見た目やキザなところは癪に触るものの、快感をくれるならば目をつぶってやろう。
さあ、もっともっと快感を私に!!!
ところで…いつかくる、出産の痛みとかも快感になるんだろうか。
「王子殿下」
「なに、リリム」
「やっぱり私、はやく王子殿下と結婚したいです。王子殿下との愛の結晶をこの手に抱きたいです」
「…リリム、可愛すぎて抑えが利かなくなるからあんまり煽らないでくれ」
めちゃくちゃ強い力でぎゅっと抱きしめられる。
痛い痛い、でもそれが快感。
うん、やっぱりこの人とはやく結婚したいな!
これからは押せ押せで行こう!
行こう!!!
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