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#王子様は気付いてくれない。  作者: 如月颯
一章 幼馴染は分からせたい。
3/3

1話 #王子様は鈍感すぎる。【表】



「遥… 」

プルっとした唇は必死に俺に何かを言おうとパクパクするも、口から出た言葉は俺には聞き取れなかった。

そうかーこれは夢。もうすぐ終わる儚い幻想。

一体、夢の中の美奈は俺に何を言いたかったのかは最後まで分からなかったが、俺を夢から呼び戻す天使の声で目を覚ました。


「にい…お兄!もう朝だよ?遅刻しちゃうよ!」

言わずもがな、俺の弟・悠はとても可愛い。顔を見るたびに思わず抱きしめたくなるが…もうあいつも中学生だし我慢してやるか。


「っるせーな。分かってるっつーの。」


階段を降りると、妹の渚がエプロンをしてこっちを睨んでいた。

「もぅ〜。ルカ兄遅い。てか、自分で起きられたんだ。」

「悠に起こされたんだよ。」

「起こしてくれたの〜?悠くん、偉い偉い〜。」

…確かに悠は可愛いが、渚のブラコンは尋常じゃなかった。

まるで姉弟の垣根を超えているみたいだ。


「もぅいいってば。髪、ボサボサになっちゃうよ〜。」

うぅ、可愛い。ちょっと行き過ぎだが、それくらい弟の破壊力は凄まじいものだった。


「悠は可愛いから良いの!」

あ、こいつ地雷踏みやがった。

悠の可愛さは国宝級だが、一つだけ踏んではいけない事がある。ーそれは「可愛い」と漏らしてしまうこと。

当人はカッコいいと言われたいらしく、

可愛いと言われると口を膨らませて怒ってくる。まぁ正直それも可愛いだがな。

「渚姉…カワいい、じゃなくてカッコいい、よね?…ね?」

「ウン!悠はカワ…カッコいいよ!」


結局、朝の夢が何なのか分からないまま家を出た。



l春。世間では“出会いの季節”なんて呼ばれているが、残念なことに俺には一向に彼女が現れる気配もない。最近なんて、周りの 女子みんな俺を避けている気がしているくらいだ。まぁ、あまり女子とは積極的に話すほうではないし、しょうがないんだがな ・・・なんてことを考えながら俺の高校・都立星霊学園を目指して歩く。

高校、と言っても外見はただのオフィスビルだ。なんでも、この学園の園長でもある東京都知事が“若者に合わせた教育現場”をモッ トーに掲げたらしい。だからか、授業内容もほかの高校ではやらないような内容ばかりだ。選択科目なんかは、K-POPや VOCAROIDOなんてものもある。

まぁ、俺は家から一番近いからという理由だけで此処を選んだ、少数派の部類だ。

そんな俺も、今日から高校2年生だ。今年こそ彼女を作って・・・なんてことを考えていると、後ろからいきなり肩を叩かれた。


「おっは〜、ルカ。」

「あぁ、美奈か。」

「丁度いいじゃん、見てよこの髪型!お姉ちゃんにアレンジしてもらったんだよ?可愛いでしょ。」

「あぁ。」     

めんどくさいからテキトーに返事してやると、ムスッとした顔で「えー、なんか今日ノリ悪い〜」とか言うもんだから、今日の夢について話してみることにした。

「フムフムなるほど… ルカの夢の中の私、中々やるじゃん。」

「夢の中の美奈は俺になんて言ったのかずっと気になっててな。」

「…ハ?そのシチュエーション、私の真剣な表情…これで分からないとかいくら何でも鈍感すぎでしょ。分からないなら、今ここで教えてあげよっか?」 

なんだ、道端でこんな堂々と言えることなら大したことなかったのか。考えて損したわ。

振り返ると、美奈は少し顔を赤らめて俺に耳打ちしてきた。

「わ、わたし、ルカのこと好き!」


「あぁ、俺も好きだぞ?」

好きでもないやつと話なんかしないからな。

「もー!これでも勇気出したんだから…最っ低!」

ビチッと大きな音を轟かせ、美奈は俺の頬に大きなビンタを喰らわした。

痛い。ちょっと強すぎやしねぇか?


そのまま美奈は走り去ってしまった。


 

「よぉ、遥!なに浮かない顔してんだよっ!」

校門をくぐるなり、いきなり後ろから肩を叩かれた。

「痛った!なにすんだ・・・って、お前か!」

―俺の唯一無二の親友で、いつも彼の彼女lの惚気話を聞かされている。 「しっかりしろよ、新学期なんだからよぉ。・・・今年も一緒のクラスだといいな。」 いつも揶揄ってばっかだけど、だからこいつは憎めないんだよな・・・ 「・・・そうだな。」

キラキラした目でクラス替えの紙を見つめる裕翔を他所に、俺は自分のクラスを確認する。 此処は成績順にクラス選別を行っていないため、自慢になるが学年1の成績を誇る俺でもA組ではなく今年は2年B組に配属された みたいだ。

「やっば、みっちーも同じクラスじゃん。おっ遥、今年も一緒か。よろしくな!」

ニヤニヤした目で握手を求められた。

「なんだよ。」

「・・・ま、良かったじゃん。」

良かった?まぁ確かに裕翔と同じクラスになれて良かったが・・・


「ん?ま、まぁ?」

「ったくよ、お前も素直になれよな。」

「素直?何言ってんだ?」

睨むように裕翔を見ると、あきれた目で

「・・・バーカ。」

ただそう一言言い残し、去っていった。

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