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第七十九話 学年別個人戦って……なに?

「……たしかに、言われてみればそうであるな。全然気付かなかったのである……」


 アルク君の言葉に、スズク君は目を開きながら驚く。


「ええ、マジで!? スルーしてんのかと思ったら気付かなかっただけかよ!」


 そんなスズク君がよほど信じられなかったのか、持っていたパンの袋を床に置きながらアルク君は勢いよく立ち上がった。


「いやいや、普通は気付かないのであるよ」


「逆だろ! 普通は気付くって!」


「え、でもライア氏もまったく気付いてる様子が無かったのであるよ」


「た、たしかに言われてみれば!」


 スズク君の言葉に、盲点だったと言わんばかりにアルク君はライアさんの方へ勢いよく振り返った。


「あっ、ご、ごめん。転校生の話題に引っ張られ過ぎてて私も気付いて無かった」


「……ああ、いや、そうか。それならまあ…………仕方ないな、うん。たしかにこの学園に転校生ってかなり珍しいからそりゃテンション上がるわ」


 自分が振り返った事に少し驚きながら答えたライアさんの言葉に対して、アルク君はスズク君の時とは違ってすんなり受け入れた。


「ちょっと待つのであるよソウ氏! 某の時と態度が違うのである!」


 その扱いの差に驚いたスズク君は、アルク君と同じ様に勢いよく立ち上がりながら言及した。


「いや、理由が違っただろ理由が! ライアの場合は納得出来る理由だったけど、お前は絶対にただただ気付かなかっただけだろ!」


「そ、それに何か問題でもあるのであるか!」


「開き直ってんじゃねぇ!」


 スズク君の思わぬ開き直りにアルク君は少し食い気味にツッコんだ。


 ……なんて言うか、アルク君って大変ね。さっきからずっとツッコんでるけど、私がここまでにツッコみ続けてたらすぐに疲れちゃいそう。いつもこんな調子なのかしら? 少し尊敬しちゃうわ。


「も、もしリンドウ君がその転校生の子を好きになっちゃったらどうしよう……」


 アルク君とスズク君の言い合いが一段落ち着いて二人が座って静かになると、今度は先程から心配そうに呟いているクララさんの声が聞こえて来た。


「……クララさんもそこまで心配しなくていいから。正直ナツを好きになる奴なんて他にいる気がしねぇよ」


 そしてそんなクララさんに対して、またしてもアルク君がツッコんだ。


「いや、そんなはずが無い……! だってリンドウ君なんだよ?」


「いや、ナツだからこそなんだけど」


 クララさんの言葉の熱意に少し気圧されながらアルク君は答える。


 それにしても……アルク君の受け答えがどこか投げやりの様に感じるのは彼が少し疲れてるからかしら?


「そういえば、何故その転校生はFクラスに入るのだろうか。この学園の編入試験は入学試験と比べて格段に難しいと聞いた事がある。そんな試験に合格して転校して来たのだから成績はかなり優秀な筈だ。それなのにいきなり一番下のFクラスに入るとは思えないのだが……」


「急に真面目な話をしないでくれ。テンションの落差が激し過ぎんだろ……!」


 今までの話の流れをほとんど無視して話し始めたドリアド君の急な話題転換に対して、再びではあるけどアルク君がツッコんだ。


 でも、たしかにその転校生がFクラスに入る理由を知らないと気になるのもおかしく無い事柄ではあるわね。


 ……これはアルク君を休ませる為にも私が答えようかしら。


「……それじゃあ私が答えるわね。それはこの学園のシステムとして、転校生は全員例外なく一旦Fクラスに所属する事になってるからよ。そこで試験や実技の点数とかの成績を見て、一定の期間の後にその人の実力に適したクラスに変えられるの。

 入学試験とは違う試験を受けているせいで転校生の実力が在校生の中でどれぐらいの位置にあるのか分からないから、その転校生を確実に実力に適したクラスに入れる為の措置よ」


「……なるほど。では転校生が実力に適したクラスに入るのはいつ頃になるのだ?」


「さあ、流石にそこまでは分からないわ。いくら私でも学園のすべてを知っている訳では無いしね」


「それはそうか……」


 私はこの国の王女とはいえ、まだ16の年端もいかない少女だ。たしかに立場上同い年の同級生達より知ってる事が多少は多いけど、何もかもに精通している訳ではない。


 今の話も小耳に挟んだ程度の知識しか私には無かったのだ。


「うん? ということは……クラス替えの時期によっては、その転校生が『学年別個人戦』でFクラスの代表として出る可能性があるっていう事か?」


「……ああ、そういえばそうね。その可能性もあるのかしら」


 そこで、私の説明を聞いていたフィンラル君が空になった弁当箱に箸を置いて問いかけて来た。


 そうなった場合はどうなるのかしら。やっぱり一時的とはいえ在籍してるのはFクラスだから、大会に出る場合はFクラスの代表になるのかしらね。


「ああ、そっか。クラス対抗戦が終わったばっかりだけど、もう次の事も考えないといけないのか〜」


「うむ、夏休みが終わればすぐに国内の学園対抗戦があるのであるからな」


 忙しいなあ、と弁当箱に残った最後ののウィンナーを箸で摘みながら呟いたライアさんに、彼女の向かい側に座っていたスズク君が同意する。


「ねえ、話を折る様で悪いんだけどさ……『学年別個人戦』ってなに?」


 そこで、先程から会話に参加していなかったリンドウ君が口を開く。


 リンドウ君の割にはさっきから静かだなとは思ってたけど、そもそも『個人戦』の事をあまりよく知らなかったのね。なら会話に参加出来なかったのも仕方ないわ。


 ……いや、この学園に在籍してるのにあまり知らないのもそれはそれでどうかと思うけど。


「簡単に言えば『学年別クラス対抗戦』の個人戦版だと思ってくれればいいわよ。それぞれのクラスで決められた数の代表者が一対一のトーナメント方式で戦っていくの。戦ってる人達以外には何の邪魔も入らないから、『クラス対抗戦』と違って個々の純粋な強さで勝敗が決まるわ」


「うわ〜、なんか聞いてる限り大変そうだなぁ」


「なんでお前は他人事みたいに言ってんだよ……」


 少しツッコミを休憩した事で疲れが取れたアルク君が、リンドウ君に対してツッコむ。きっと実力的に一番出る可能性が高いであろうリンドウ君が、まるで自分には関係ないと言わんばかりの口調だったのが気になったのね。


 何でそう言い切れるかって? だって私も気になったんだもの。


「ちなみにそれぞれのクラスで代表者が出るって言ってたけど、それって一クラス辺りどんくらい出れるんだ?」


「たしか……Fクラスは3人だったわね」


「え、3人!? 少なっ! そんなんでトーナメント成立のかよ!?」


 私の返答にリンドウ君は大きな声を出しながら驚いた。


 そんなリンドウ君に対して、私は再び説明する。


「ええ、成り立つわよ。Fクラスでは出場人数が3人だけど、クラスが上がって行く毎に出場人数も増えていくから。例えば、私たちSクラスは9人出られるわ」


 聞いた話によると昔はすべてのクラスの出場人数が同じだったらしいけど、上のクラスとFクラスの出場人数が同じなのはおかしいっていう声が学内や学外など色んな所から来たから、その声を受けて学園が上のクラスになるほど出場人数が増える様にルールを変えたらしい。


 そのせいでトーナメントの対戦表の形は少し歪になってしまったけど、Sクラスが多く出る様になった事で戦闘の迫力はかなり上がったらしいわね。


「ええ、贔屓だぁ〜!」


「いや、まあ、Sクラスの方が多いのは妥当ではあるよな」


 リンドウ君は冗談とも取れる口調で不満を言ったけど、それに対してアルク君は出場人数に差がある事に納得してる様子だった。


《キーンコーンカーンコーン》


 それからしばらくして、お昼休みの終了を知らせるチャイムが校内中に設置されているスピーカーから流れた。


 ちなみにチャイムが鳴ったのに教室にいなくていいのかと思う人もいると思うけど、今のは言わば予鈴のチャイムで、まだ授業開始まで10分あるから今から教室に向かえば普通に間に合うのよ。


「おや、どうやら予鈴のチャイムが鳴った様であるな」


「うん、そうだね。そろそろ教室に戻らないと」


 そうしてスズク君とクララさんの言葉のもと、私達はそれぞれの教室へと戻って行った。


 ……今日一緒にご飯を食べた感じリンドウ君の様子に特におかしな点は無かったから、そこは一安心といった所かしら。


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