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黙示録のラッパ吹き 〜魔法師世界で魔法が使えない少年〜  作者: 岩月敬一
学年別クラス対抗戦編
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第七十二話 一体何を言っているんだ?

 くっ、やはりか…………。そもそもこいつらがここに現れた時からおかしいとは思っていた。人間で言う所の20代後半は行っているであろう他の二人に比べてあいつだけ極端に若すぎるのだ。


 本来ならあんな若い奴を王女奪還の人員に加えないだろうが、アイツが『黙示録のラッパ吹き』の団長という事なら納得が行く。むしろあいつ以上に適任な奴などいないだろう。


「……リンドウ君が、『黙示録のラッパ吹き』の団長だって……?」


 あいつの正体を知らなかったであろう俺の後ろにいる娘は、かなり震えた声で戸惑いの声を上げる。


「おいおい、異常な強さを持ってるとは思ってたけどそういう事だったのかよ……」 


「だが……それだとあの歳で私やステファニーに勝った事にも頷ける…………」


 どうやらあいつと一緒に現れた二人も知らなかったらしく、俺の後ろにいる娘ほどでは無いがかなり驚いているのが見て取れた。


「……黙っててすみませんヘステさんにオーズスタン先生、それとイリーネ。ただ自分の目的を果たすには知られない方が都合がよかったんです。自分の正体について黙ってた謝罪はいくらでもします」


 化け物はそんな彼等に俺の方に視線を残したまま謝る。これ程に重要な事実を秘密にしていた事に負い目を感じているんだろう。


 ただ、俺からしたらそもそも何故コイツが自分の正体を秘密にしていたのかが分からない。むしろ明かしておいた方が色々と楽になりそうなのだがな。自分の正体を隠した方が都合がいいとは……その目的とやらは一体どんな物なのだろうか。


「…………いや、いい。正直あんま信じられてねえし聞きたい事は山ほどあるが、詳しく聞くのはとりあえず学園に戻ってからにする。今はアイツとの戦闘に集中するぞ」


「…………あ、ああ、そうだな。お前の言う通りだオーズスタン。リンドウ君、帰ったらちゃんと君の事を教えてくれるんだよな?」


「……はい、もちろんです」


「そうか、ならよかった。じゃあオーズスタンの言う通り戦いに集中するとしよう」


「……ありがとうございます」


 このまましばらくアイツの正体について引っ張るのかと思っていたが、戸惑っていた二人は意外にもあっさりと気持ちを立て直して俺の方に集中し始めた。先程からそうなのだが、あの二人からはかなり場慣れした雰囲気を感じられる


 そして、目の前の化け物はそんな二人に感謝しながら一瞬ズラした目線を再び俺の方に戻して続ける。


「なあ、戦う前に気になってる事があるから一つだけ聞かせてくれ。お前にイリーネを攫うように命じた主ってのは一体誰なんだ?」


「…………それは、どういう意味だ?」


「いや、普通に気になるだろ。見た感じお前らがイリーネを人質を目的として攫ったわけじゃないのは明らかだ。だけどそうなると魔族のお前らがイリーネを攫う理由に見当が付かない。それに今生き残ってる魔王達が自ら進んで人と対立する様な行動を取るとは到底思えないからな。だから人質以外の目的でイリーネを攫うように命令を出したその主ってのが誰なのか気になるんだよ」


 なるほど、そういう事か。たしかに今生き残っている他の魔王共は人間との対立を避けているからな。この娘を攫うように俺に命じた奴はコイツにとって謎なのだろう。


 だが、コイツはそもそも前提を間違えている。


「俺の主が誰なのか教える前にまず言っておこう……お前は前提を間違えている。こいつを攫ったのは主に命令を出されたからでは無い。俺が自ら進んで立てた計画の為に攫ったのだ」


「……それはどういう事だ?」


 俺の言葉に目の前の化け物は困惑する。やはり先程からの俺の言動で俺が主に命令されてこの娘を攫ったのだと思っていたのだろう。


 だが、ふざけるのも大概にしてほしい。そもそも俺がこの様な行動を取っているのも、それが主からの命令では無い事もすべては貴様らが主を殺したからだというのに……!


「そんなに知りたいなら教えてやる。俺の主は、かつて貴様ら『黙示録のラッパ吹き』によって殺された『色欲の魔王』様だ!」


「…………え、何を言ってるんだ?」


「なっ、『何を言ってるんだ』とはどういう意味だ! まさか貴様らが殺した我が主の事を忘れた訳ではあるまいな!」


 何ということだ、まさかコイツは主を殺しただけでは無くその事まで忘れているというのか。そんな物……決して許される事では無いぞ!


「いや、そうじゃねえよ。ただ………………『色欲の魔王』は死んでねえだろ」


 …………なに、主が死んでいないだと? そんな筈がないだろう。何をぬかしているのだコイツは……!


 俺はそいつのふざけた言葉に憤りを感じながら叫ぶ。


「貴様、ハッタリのつもりか! 主は確実にお前らに殺されている! 俺はたしかにその事実を確認したのだぞ!」


「いや、俺達はたしかに戦いはしたが殺してまではいねえんだよ。俺達は戦ってる最中にアイツを弱体化させる事に成功して、人間の脅威じゃ無くなったアイツを生かす事にしたんだ。

 ただ力を失ったとはいえ『色欲の魔王』が生きてるっていう事実は人間を怖がらせるからな。そんな人間を安心させる為に俺達は『色欲の魔王』を殺したって公言して、念のためアイツにもかなり遠くにある国で暮らしてもらったんだ。

 一応人間にこの情報が渡らない様に軍の幹部にしか話してはなかったけど……お前その中に入ってなかったのか? お前の言動からして結構上の立場にいたと思ってたんだけど……」


 …………この様子、ハッタリや冗談を言っている訳では無さそうだな。しかし、だとしたらコイツは一体何を言っているんだ? コイツの言う通り俺は軍の中でも四天王の直属の部下というそれなりに上の立場にいた。しかし、コイツの言う通りであれば俺の所にも入って来ていた筈のその情報を俺は欠片も聞いた事がない。


 いや、そもそも主が死んでいないというコイツの主張その物がおかしい。他の魔王達の陣営の事は知らないが、俺達『色欲の魔王』の陣営では配下の一人一人が主である『色欲の魔王』様の存在を感じられる様に『魔術』で繋がっていた。


 これは常に主との繋がりを実感する事で俺達配下の士気を上げる為の物だったのだが、主が死んだとされる時、俺達配下全員はたしかに主との繋がりが無くなった事を実感したのだ。


 その時俺は主が一方的に繋がりを切ったのだと一瞬思ったが、それは無いとすぐに判断した。というのも繋がりが完全に切れる直前、俺達は主との繋がりが少しずつ薄くなって行くのを感じていたのだ。それこそ、まるで主が段々と弱っていっている様に。主が自分から俺達との繋がりを切ったのであればその様な事は感じない筈だ。


 それに俺はたしかにこの目で主の亡骸を見ている。つまり主は確実に死んでしまっているのだ。


 …………なのに、何なのだコイツは。見た感じ嘘やハッタリを言っている様子では無い。恐らく心の底から『色欲の魔王』様が生きていると思っているのだろう。……しかし何故だ? 何故主の死を否定する。主を殺したのはたしか『黙示録のラッパ吹き』の団長であるコイツ自身の筈だろう。それを配下である俺の前で否定するなど……。


 俺の主が生きていると本気で思っているコイツの様子は一体何なのだ……まるで、記憶を書き換えられている様では無いか。




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