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黙示録のラッパ吹き 〜魔法師世界で魔法が使えない少年〜  作者: 岩月敬一
学年別クラス対抗戦編
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第六十四話 貧民街に向かってください

「レグ……学園長が俺を呼んでるんですか?」


「ああ、俺と一緒に学園長用の観客席に来いって事らしい。すまんな、俺もお前が呼ばれた理由は分からねえんだ」


 念のために聞き返した俺にオーズスタン先生は少し謝りながら答えてくれた。


 ただ、改めて言われてもすぐに理解出来た訳じゃなかった。もちろん俺とレグリアの仲を考えたら俺が名指しで呼ばれるのは不思議じゃ無い。でも俺を呼び出す理由が分からないんだ。


 俺は特に変な行動はしてない筈だし、今は何か報告をしなきゃいけない事柄が俺達の間にあるって訳でも無い。


 だからレグリアの方で何か問題が起こったって考えるのが妥当なんだろうけど、その場合はあいつの事だから大抵の問題を自分の力で解決出来る筈だ。だから俺が呼ばれる事なんて無いと思うけど……。


 う〜ん、ここで悩んでも仕方ないし行くしかないか。


「……よし、分かりました。行きましょう」


「おう、じゃあ着いてこい」


 オーズスタン先生にそう言われた俺は控え室を出ようと背を向けた先生の後ろに付く。


「あっ、ちなみに決勝までには絶対に帰すつもりだから安心しろよお前ら」


 思い出した様に先生は控え室にいるみんなに向けて言った。


「じゃあ行ってくるわ。先生の言った通りすぐに戻ってくるつもりだからよ」


「おう、じゃあその間に俺達は作戦の確認でもしてるよ」


「ご愁傷様なのであるよナツ氏」


「リンドウ君、学園長先生とどんなお話があるか分かりませんが頑張って下さい!」


 それに続いた俺にソウとメクル、そしてクララがそれぞれ言葉を掛けてくれる。


 いや、メクルの奴どっちかって言うとちょっと憐んでるな。多分あいつ、俺が今からレグリアに叱られるって思ってんだろ。そこまで問題児になった覚えは無えよ。


「ああ、行ってくる」


 わざわざツッコむのもあれだったのでとりあえずメクルの憐れみを無視して軽く返事をした俺は、オーズスタン先生の後に続いて控え室を出た。









「へえ、こんな所があったんですね」


 オーズスタン先生に連れられて俺は学園長用の特別席に着いた。扉は片開きでかなり豪勢な作りになっていて、外から見た感じは学園長室とあまり変わらない。


「よし、そんじゃあ入るぞ。失礼します」


 扉を開けた先生に続いて俺はその部屋に入る。


 特別席の作りは外観と同じ様に豪勢な物だった。天井からはシャンデリアがぶら下がっていて、壁にも眩しいっていうぐらい鮮やかな飾り付けがあり、高そうなソファとテーブルが左右の壁沿いにそれぞれ二つずつ並べられており、そして一番奥に学園長が試合を観戦する為の椅子が置かれていた。


 ただ、俺が注目したのはその豪華な部屋の飾り付けでは無かった。俺の視線の先にあったのはソファの上に座っている三人の人物だ。


「あれ、ヘステさんにフラスさん。それにス……女子寮の寮長さん」


 そう、俺がイリーネの連れとして魔法師ギルドの本部に行った時に会ったギルドマスターのヘステさんとその秘書のフラスさん、そして昔からの知り合いであるスミラがそこにいたのだ。


「あっ、オーズスタン先生にリンドウ君。突然お呼びしてしまい申し訳ありません」


「いや、大丈夫です。それよりも俺たちは何で呼び出されたんですか? ナツはこの後も試合があるので早めに帰らせてやりたいんですよ」


 俺とオーズスタン先生が部屋に入ったのを確認して一番奥の椅子に座りながら謝って来たレグリアに、オーズスタン先生が質問する。


「そうですね、では時間も無い事ですし単刀直入に言いましょう。……貴方達2人にはそこにいるヘステ君と一緒に3人で、魔族に攫われたイリーネ君の奪還に向かって欲しいのです」


「「ええ(はい)!?」」


 レグリアの急な言葉に俺とオーズスタン先生は驚く。


「ちょっと待ってくださいよ学園長! まずイリーネ・ユグドラシルが魔族に攫われたってどういう事ですか!?」


 珍しく焦っている様子のオーズスタン先生が、俺も聞こうと思っていた質問を聞く。


「そうですね、まずは順を追って話しましょうか。実は先日魔族がこの国に侵入したという情報が入って来ました。もちろん一大事です。本来なら国民にも知らせるべきなのかもしれません。

 ですがその侵入者の正確な正体や目的が不明なため、混乱を招かない様に国民には知らせずに秘密裏にその魔族達の捜索が行われていたのです。しかし、当然ながら魔族という情報以外何もかも不明なため捜索は難航しました。

 そして今日、今までずっと足取りを掴めていなかったその魔族が行動に出始めたのです。それがこの国の第一王女であるイリーネ・ユグドラシル君の誘拐。彼等は何らかの方法を使ってこの学園の結界をすり抜け侵入し、イリーネ君を彼女の自室から攫ったのです」


「「………………」」


 レグリアの説明を聞いた俺とオーズスタン先生は驚き過ぎて言葉が出なかった。まさか俺達が勝利に喜んでいる裏でそんな事が起こっていたなんて想像もしていなかったからだ。


「そこで、彼女を取り戻すべきだと判断した私がイリーネ君を奪還する為に貴方方をここにお呼びしたという訳です」


「…………とりあえず、いくつか質問したいんですけどいいですか?」


 俺は右手を少し上げながらレグリアに問いかける。敬語を使ってるのは俺達の関係を知らない人もいるからなるべく混乱を起こさない為だ。


「ええ、もちろんです」


 レグリアも俺のその意図を察したのかあくまで学園長としての態度を取り続ける。


「ありがとうございます。じゃあ一つ目、色々と急過ぎてビックリしているんですが、今学園長が仰った事は全部憶測の無い確実な情報なんですか?」


「ええ、憶測が完全に入っていないと言えば嘘になってしまいますが、ほとんど裏付けは取れています」


 なるほど、つまりその魔族達は本当にイリーネを攫って、その上スミラの結界まですり抜けられたっていう事か。


 スミラの結界をすり抜けられるって事はかなりヤバい相手って可能性も考えられるけど…………流石にそれは無いか。そんな相手だったら侵入なんてせずに真っ向から攫って来そうだもんな。


「ありがとうございます。じゃあ二つ目、俺のクラスまだ試合が残ってるんですけど、次の試合はどうなるんですか?」


「申し訳ないですが欠場して頂くしかありませんね、代役を立てて頂く事になると思います」


 ……まあ優先度で考えたらイリーネの方が大事だからな、当然ではあるか。みんなには悪いけど何とか頑張ってもらうしか無いな。


「分かりました。次に三つ目、今イリーネを奪還するって仰ってましたけど居場所は分かってるんですか?」


「はい、大丈夫です。そこにいるフラス君が『固有魔術』で突き止めてくれました」


 レグリアはヘステさんの隣でソファに座っていたフラスさんの方に手を向ける。それに気付いたフラスさんは立ち上がり、眼鏡クイっと上げてから話し始めた。


「はい、レグリア学園長先生の仰る通りイリーネ君の居場所は私の『固有魔術』で突き止めました」


「あんたの『固有魔術』って言うとたしか補足系だったよな」


「かなり前に一度ご説明をさせて頂いただけなのに覚えていただけていましたか。流石は『ラーンベルト学園』のみならずこの国でも指折りの実力者と評されているオーズスタン先生ですね。では簡単に説明させて頂きますと、私の『固有魔術』は"座標獲握"、特定の人物の居場所を把握出来るという能力です。この能力でイリーネさんの場所を突き止めました」


「……へぇ、かなり強い『固有魔術』を持ってるんですね」


 俺がフラスさんの『固有魔術』に感心しているとフラスさんは慌てて付け加える。


「ああ、すみません言葉足らずでしたね。私が把握出来るのは事前にこの『固有魔術』を使う事を承認して下さった方々のみです。なので無差別に全員の居場所を把握出来る訳ではありません」


 まあ、無差別に居場所が分かるんだったら敵に対して奇襲とかやり放題だからな。そんな化け物じみた『固有魔術』を持ってるのかって一瞬思ったけどちゃんと制限はあるみたいだ。


 多分イリーネは王女だからこういう時の為に承認してたんだろうな。フラスさんはあいつの師匠のヘステさんの秘書だから承認する機会はかなりあっただろうし。


「……ちなみに、その場所っていうのはどこですか?」


「はい、貧民街の中にある建物ですね。そこからイリーネさんの反応があります」


 なるほど、貧民街か。まだ国外に出てないっていうのは助かったな。……でも建物から反応があるって所は少し引っかかるな。移動してないって事か?


「分かりました、ありがとうございます。じゃあ最後に、何故このメンバー何でしょうか? 内密の奪還で人数が少なくなるのは分かるんですが、だとしても3人というのは逃げ道を塞ぐ事とかを考えるとすこし少ない気がします」


 俺は最後にヘステ、オーズスタン、そして俺の3人というかなりの少数精鋭で奪還しに行く理由を尋ねる。国民にイリーネが攫われた事がバレないように少数精鋭で向かうべきなのは分かる。ただ作戦が奪還である以上、敵がイリーネを連れて逃げ出した時に備えて逃げ道を塞ぐ役割の人を何人か増やした方がいい気がするんだ。


「そこに関しては問題無いと考えています。貴方方3人なら取り逃す様な事はしないでしょうし、万が一敵がイリーネ君を連れて逃げ出したとしてももう一度フラス君に場所を補足して貰えばいいだけですから」


 ……たしかにそれもそうだな。


「ありがとうございました、もう大丈夫です」


「分かりました、では向かって頂けるという事でよろしいでしょうか?」


「魔族達が侵入して来た方法を吐かせなきゃいけないですし、何より友達のイリーネが危険な状態にいますからね。もちろんやりますよ」


 イリーネは魔素量や身分の差とかをまったく気にせずに人と話すいい奴だ。それにこの学園で出来た俺の最初の友達だしな、助けに行くに決まってる。


「ありがとうございます、オーズスタン先生は何か質問などはありますか?」


 俺の確認を取ったレグリアはオーズスタン先生の方に顔を向けながら聞く。


「大体はナツが聞いてくれたんで大丈夫です。すぐに行けますよ、ただ……」


「? どうされました?」


「いや、何でも無いです」


(ナツが学園長と結構親しげっぽいのもそうだし、そもそも実力があるとはいえ何でナツが選ばれたのかが気になるが、今はそこまでのんびり聞いてる暇は無さそうだしな。これが終わってからまた聞くか)


 オーズスタン先生は何か気になる事がある様子だったが、すぐにそれを取り消した。


「ありがとうございます。ではリンドウ君とオーズスタン君のお二人にはかなり急で申し訳ないですが、早速3人で貧民街に向かって下さい。詳細な場所は向かっている最中にフラス君が通信用の魔道具から教えてくれます」


「よし、それじゃあ行くかオーズスタン先生にリンドウ君!」


「「はい(ああ)!」」


 こうして、会話の流れを壊さない様に今まで静かにしていたヘステさんの合図と共に俺達はイリーネの奪還に向かった。





突然失礼致します、しばらく2日に1回の投稿を続けていたのですが溜めていた話が少なくなってしまったので、これからは週二回の月、金投稿に切り替えさせて頂きたいと思います。

投稿ペースは遅くなってしまいますが、どうかこれからも『黙示録のラッパ吹き』をよろしくお願いします

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