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黙示録のラッパ吹き 〜魔法師世界で魔法が使えない少年〜  作者: 岩月敬一
学年別クラス対抗戦編
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第六十三話 学園長がお呼びだぞ

「だから、あれは絶対なにか不正をしたんだって!」


「いやいや、それは流石に無いだろ。大会委員が見逃すとは思えない」


「じゃあお前はFクラスが純粋な実力でBクラスに勝ったとでも言うつもりか!?」


「でもCクラスにも勝ってたじゃない」


「その試合も不正をしたに違いないんだって!」


 FクラスとBクラスが退場し終わって、次の試合の準備が終わった今でも会場は先程のFクラスの勝利について騒ついていた。


 一回戦の時よりも観客達の衝撃が強くなっているのはきっと、魔法の腕が弱いと思われていたFクラスが正真正銘その魔法の腕で勝ったからでしょう。


『いや〜、それにしても先程のFクラス対Bクラスの試合は見事な物でしたね。まさかFクラスがBクラスに勝ってしまうとは! 皆さんの興奮が収まらないのにも納得が行きます。メリア様は先程の試合についてどう思われますか?』


 そんな会場の様子を見たデリヤ君が私に話を振る。


 会場は今観客の皆さんが騒ついてしまっているため次の試合に入れそうに無い。しかし今日はこの後2年生や3年生の試合も残っているため、収まるまで待っていると時間が押して残りの試合を行えなくなってしまう可能性がある。


 そうならない為にデリヤ君は観客の皆さんがもっとも注目するであろう私に話を振ったのです。


 そして現に、観客席から声がほとんど消えて全員が私の言葉に注目しはじめた。


『そうですね、私はある意味妥当とも言える結果になったと思います』


 私の言葉に、声には出ていなかったものの会場中の人が驚いた反応をしていた。


『なるほど『妥当』ですか。ちなみにその理由の方をお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか?』


『はい、もちろんです。ただ理由の前に一つ私の方から説明させて頂きたい事があります。それは……魔法師の強さを決める上で魔素量というのは絶対では無いという事です』


「「「「!?!?!?!?」」」」


 私の言葉に観客の皆さんは再び声を殺しながら驚いた反応をする。ただ先程のより比べて数段大きく驚いている様子だった。


 そしてその光景を視界に入れながら私は続ける。


『現在、魔法師社会においてもっとも重要視されているのは魔素量です。魔素量至上主義という言葉も存在しているぐらいですからね。なのでこの会場にいらっしゃってるほとんどの方々もそう思われているのではないでしょうか?

 ですが、それは間違いです。たしかに魔法師の魔法の威力や速さなどを決めるのは魔素量です。しかし、だからと言って魔素量が多い魔法師が強いと考えてしまうのは安直過ぎます。

 分かりやすく説明する為に先程の試合を例に出してみましょう。まず風魔法によって味方の援護をしていた、ええとお名前が……ライオット・ヤムル君です。彼の出した魔法の威力を見る限り、彼の魔素量は決して多くありません。おそらく試合に出ていたBクラスの皆さんの3分の1程度でしょう。

 しかし、彼は魔素量において3倍近く差がある相手を三人も足止めして見せました。何故その様な事が出来たのか、それは彼が風魔法の性質を十分に理解し工夫などを凝らしており、その上風魔法の動きをかなりの練度で操れていたからです。そしてそのおかげで彼は、1対3という圧倒的に不利な状況でも傷一つ負わない事に成功したのです』


『なるほど……』


 真剣な表情で相槌を打ったデリヤ君に少し微笑んでから私は続ける。


『次に『魔剣』を出してみせた………ライア・レイベルさんですね。彼女の勝因もライオット君と同じ、魔素量以外の部分で相手に勝っていたからです。そして彼女の場合もっとも注目すべきなのは『魔剣』を出したという点です。よく誤解されている事なのですが、『魔剣』を出すのに魔素量は一切関係ありません。必要なのは魔素を完璧にコントロールする技術だけです。つまり、彼女のように魔素を完璧にコントロールする技量さえ持っていれば、たとえどれだけ魔素量が無くても『魔剣』を出す事は誰にでも可能なのです』


 今度は会場中の人達が無言で聞いているのを確認して私は再び続けた。


『今出した二つの例でも言いました通り、Fクラスの魔素量はBクラスに負けていましたがそれ以外の部分では優れていました。そしてその結果として、FクラスはBクラスに勝つ事が出来ました。……お分かり頂けたでしょうか? つまり魔法師にとってもっとも重要なのは魔素量ではなく魔法への理解と創意工夫、そして魔法を完璧に操るための練習という訳なのです』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「あのメリア様が私の名前を呼んでくれるなんて……」


 メリアの言葉を映像越しに聞いていたライアがサンドウィッチを片手に感動する。


 今、俺達はFクラスの控え室から魔道具の映像越しに会場の様子を見ている。一回戦の時と同じように会場で直接見ようっていう意見もあったけど、俺が奢ったサンドウィッチを観客席で食べる訳にはいかないし、何より騒ついてる原因の俺らが会場にいたらより騒がしくなるって事で控え室から観戦する事にした。


『そして、本気で試合に臨むFクラスに比べてBクラスは魔素量至上主義の考え方のせいで心のどこかで彼らを侮りながら試合に臨んでいました。なのでFクラスが勝ったのは妥当な結果とも言えるのです』


 それにしてもよくやってくれたなメリアは。映像越しだけど、観客席を見る限りかなりの人がメリアの言葉に納得してる感じだ。やっぱあいつに試合の後の説明を頼んでおいて正解だった。


『なるほど、そういう訳だったんですね! ありがとうございましたメリア様! ではそろそろお時間なので次の試合に移りましょう!』


 メリアの説明が終わり、会場も静かになった事を確認したデリヤ先輩が大会の進行を再開する。


『選手の入場です!』


 そして先輩の言葉によって次の試合に出るEクラスとSクラスの選手の入場が始まる。Sクラスが出るからきっと大歓声が巻き起こるんだろうと俺は思った。


 しかし、響き渡ると思っていた大歓声が聞こえる事は無く代わりにどよめきが会場を埋め尽くした。そしてそのどよめきは会場だけじゃなく俺のいる控え室でも起こった。


「あれ、なんかおかしくない?」


「ああ、なんでイリーネ様がいねえんだ?」


 その原因についてライアとソウが触れる。


 そう、入場して来ているSクラスの選手の中にイリーネの姿が無いんだ。この大会では原則選手の入れ替えは認められてない。つまりあいつが体調を崩さない限り他の誰かと交代したっていう事は絶対に無い。もちろん休憩時間の間に体調を崩したって事も考えられるけど、王女であるあいつがそんな粗末な体調管理をする筈が無い。


 でもだからって他に理由も思いつかないし……


 そう思い悩んでると実況のデリヤ先輩の声が映像越しに聞こえて来た。


『おや、ただ今情報が入って来ました! どうやらイリーネ選手は急遽大事な来賓がいらっしゃったらしく、城の方に戻られたため試合には出られなくなったという事です。そのため特例としてイリーネ選手の代わりにトルソー・マーク君がSクラスの選手として加わります!』


 ……いや、そんな事あるか?


 急な来賓が来る事はまあ、貴族にはそういう事もあるんだろう。でもなんでそれで王女のイリーネが城に戻らなきゃいけないんだ? 来賓ってのは普通王様とかが対応するもんじゃないのか?


「なあサイエス、どういう事なんだこれは?」


「いやいや、私に聞かれても困りますよドリアド君。急な来賓がいらっしゃるのはまだしも、それでイリーネ様が出向かなければいけない理由なんて私にも分かりません」


「縁談とかではないのであるか?」


「でもそれだったら急に来た意味が分からないっすよ。そういう場合は訪問する前に先に文面を送る物っすから」


「なるほど、たしかにザンザス氏の言う通りであるな……」


 俺と同じように今の説明に皆も疑問を持ったみたいだ。これが本当なんだとしたらその訪問して来た相手はよっぽどの人物か、それか頭のおかしい奴っていう事になるからな。疑問を持たない方がおかしい。


「どういう事でしょうかリンドウ君?」


「……俺にも分からないけど実際にイリーネがいない以上信じるしか無いんじゃないかな」


 隣にいたクララの質問に俺は答える。


 たしかに今の説明はおかしかったけど、実際にイリーネがいないし他に理由も見当たらない以上信じるしか無い。


「入るぞ!」


 皆でイリーネについて話し合っているとオーズスタン先生が控え室の扉を勢いよく開く。そして控え室に入って来たオーズスタン先生は笑顔で話し始めた。


「やったなお前ら! まさかBクラスに勝っちまうなんてよ、さすがは俺の生徒だな!」


 それは俺から見ても分かるぐらい心の底から出た言葉だった。いつも気怠げな先生がこんなに嬉しそうにしてるのは初めて見たな。そんなに俺達の事を思ってくれてたのか。


「「「「ありがとうございます!」」」」


 その先生を見て笑顔になったみんなは話を中断して大声で返事をする。


「俺達が勝てたのは先生が俺達の質問に一見ダルそうにしながらも丁寧に対応してくれたり、本来なら夜遅くまで使えない訓練場を特別にずっと開放してくれてたおかげですよ」


 ソウの言う通り、みんなが勝てたのはオーズスタン先生のおかげでもある。例えば訓練場は本来21時までしか使えないけど、先生が職員室から鍵を盗み出してくれたおかげで夜遅くまで練習する事が出来た。それに魔素の感覚が分からない俺じゃどうしても答えられない様な質問は先生が積極的に答えてくれたんだ。


「ははっ、いいよそんな礼なんて。お前らが勝てたのはお前らが頑張ったからだからな」


「……そういえば先生、控え室に来れたんですね」


 俺は少し疑問に思った事を先生に聞いた。今のやり取りを見てる感じ先生は皆が勝った事を祝い来たんだと思う。でも、たしか先生は今日大会の運営で忙しかった筈だ。てっきり俺達の所に来る暇も無いって思ってた。


「ああ、そうだそうだ。悪いな、お前らの顔見たらつい本題を忘れちまってたよ」


 少し冷静になって先生は続ける。


「ナツ、レグリア学園長がお呼びだぞ。俺と一緒にな」


 …………え?


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