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黙示録のラッパ吹き 〜魔法師世界で魔法が使えない少年〜  作者: 岩月敬一
学年別クラス対抗戦編
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第五十八話 祈るしかありませんか

 BクラスとFクラスによる準決勝第一試合が行われている最中、個室になっている学園長用の特別席でそれを観戦していたレグリアは、自分以外で唯一その部屋にいる女性寮の寮長からとある報告を受けていた。


「そうですか…………」


 そしてその報告というのはイリーネが姿を消したという物だった。


 ハンカチを届けるためにイリーネの部屋を尋ねたフィンラルは彼女が自室にいない事を確認した後、寮内をくまなく探した。


 しかしそれでも姿が見当たらなかったため彼は寮長にイリーネが外出したのではないかと確認を取りに行ったのだが、寮長も彼女が外出した姿は確認出来ていなかったのだ。


 そして彼女が寮内にいない事をフィンラルに教えてもらった寮長は、学園長であるレグリアにその事を報告しに来たのだ。


「……タイミングからして師匠達からの報告にあった魔族達の仕業だと思うわ」


「ええ、そう考えるのが自然ですね」


「……他の教師達にも伝えた方がいいかしら?」


「いや、魔族がこの国に侵入しているという事も伏せられているんです。国民に不安を抱かせない為にもこの事は出来る限り内密にした方がいいでしょう」


 寮長の提案をレグリアは却下する。レグリアと寮長はダグラス本人から知らされているが、魔族がこの国に侵入したというのは本来極秘情報なのだ。


 その上その魔族が王女であるイリーネを攫ったともなると、国民は不安を抱いてしまう。


 そのためレグリアはイリーネの事を極力人の耳に入れない事にしたのだ。


「……そうね、分かったわ」


「ちなみにフィンラル君には?」


「彼にはさっきこの事は誰にも話さない様にって伝えてあるわ。見るからにいい子そうだったし多分誰にも言わないでくれるわよ……。

 ………………ごめんね、レグリア君。まさか学園や寮への侵入を感知出来なかったなんて。自分の結界の力を過信しすぎてたみたい」


 先程から少し悲しそうな口調で話していた寮長は、イリーネが攫われたのは自分の失態のせいだとレグリアに謝る。


「自分を責めないで下さいスミラ。貴女の『固有魔術』は師匠達も手放しで褒めていた程の物なんです。そんな貴女が感知できなかったのならそれはもはや仕方の無い事ですよ」


「で、でも……「スミラ、今はこれからの話をするべきです。反省は後にしましょう」


 レグリアの慰めの言葉にスミラと呼ばれた寮長は「でも」と返そうとするが、レグリアはその続きを遮った。


「…………分かったわ」


「よろしい、では今からやるべき事を整理しましょうか」


 渋々とはいえスミラが納得したのを見たレグリアはこれから自分達のするべき事の確認を始める。


「ダグラス様には今から私が連絡します。会場で解説をして下さっているメリア様とメイゲル様には試合が終わった後に直接話しに行きましょう。問題は攫われたイリーネ君がどこにいるのか探す方法ですが…………」


「……たしか魔法士ギルドのマスターの秘書がそういう『固有魔術』を持ってなかったかしら」


「ああ、あの人ですか。たしかにそうですね、何か条件があるみたいな事を言っていた気もしますが…………まあ、直接聞いた方が早いですね」


 ギルドマスターであるヘステと交流があり、その関係上ヘステの秘書ともある程度面識があったレグリアは彼の『固有魔術』についてある程度知っており、発動するには条件が必要だという事も知っていたがその内容までは思い出せなかった。


「じゃあ私がダグラス様に連絡するわ、レグリア君はその秘書の人に連絡してもらってもいい?」


「はい、分かりました」


 そうしてスミラは王城にいるダグラスに、レグリアは魔法士ギルド本部にいると思われるヘステの秘書にそれぞれ通信用の魔法具で連絡を取った。









 そして連絡をし終わった二人は、それぞれの連絡の内容について共有しあう。


「連絡が付きました。ヘステと一緒にすぐに来て下さるそうです」


「こっちも終わったわ。ダグラス様はいま協力者にも頼みながらその魔族の正体を突き止めてる最中だそうよ。その正体と目的が分かったらすぐに連絡を下さるらしいわ」


「協力者と言うと…………」


「ダグラス様の事だし、おそらく『憤怒』だと思うわ」


「ええ、でしょうね」


 連絡の内容についてある程度共有し終わった二人は再びイリーネの誘拐について話し始めた。


「問題は敵の狙いが何なのかっていう所よね」


「ええ、何故今になって魔族が王女であるイリーネ君を攫ったんでしょう」


 今回の誘拐において、二人が特に気になったのはその目的についてだ。ある程度魔族にも精通している彼等には、今になって魔族達がイリーネを誘拐する理由が思い付かなかったのだ。


「目的は分からないけど、素性として考えられるのはその魔族達がどの魔王にも属さない人達か、もしくは師匠達が殺した魔王の配下って所じゃないかしら」


「そうですね、今になってあの魔王達が敵対して来るとは思えませんし。…………ふぅ、ここからはヘステ達が来るのを待ってからにしましょうか。情報が少なすぎます」


「え、ええ。そうね……」


 自分達に出来る事は無くなったと判断したレグリアはそのまま学園長用の特別席からBクラス対Fクラスの試合の観戦を始める。


 スミラは自分のせいでイリーネが危ない目に遭っているのに試合の観戦なんかしていていいのかと思ったが、レグリアの言った通り今彼女に出来る事は何も無い。そのため彼女もレグリアに言われた通り試合を観戦する事にした。


(それにしても、スミラの結界ですら侵入を感知出来なかったなんて……そうなると自力で侵入して来たというのは考えにくいですね。スミラの結界を掻い潜れるのは各魔王軍のトップか魔王達本人、もしくは師匠達『黙示録のラッパ吹き』のみ。もし自力で侵入して来たのならそれ程の実力者っていう事になりますから。

 …………推測をしようにもやはり情報量が少なすぎますね。今はイリーネ君が酷い目に遭っていない事を祈るしかありませんか)

 



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