第五十六話 邪魔するのが僕の役割だ
「"炎炎火砲"! ……何なんだあの魔法は! Fクラスのくせに生意気にもルークの壁を壊しやがった!」
メクルの魔法によって壊された壁の瓦礫が自分に落ちない様に炎魔法で壊しながら、ガイデは大きく悪態をついた。
「それにあの根暗また俺の魔法の邪魔をしやがった! クソが、図に乗るなよクズ共!」
「落ち着けガイデ! 今のでこいつらに簡単に勝つのは無理だって分かったろ! 一旦引いてバロル達と合流するぞ!」
頭に血が昇って、このままでは一人で突っ込んで行きそうなガイデに俺は一旦引くように言う。いくらガイデがFクラスの事を馬鹿にしてるって言っても、今の魔法のやり取りであいつらが弱くなんか無いって事は分かったはずだ。
大人しく聞き入れてくれればありがたいんだが……。
「何を馬鹿な事言ってるんだ! そんな事出来る訳が無いだろう! 俺達がクズ共なんかを相手に引いたら一生の恥になるぞ!」
チッ、やっぱそう考えやがったか。
「諦めろギダス。もうこうなったら引く事は頭から消して自分達が落とされない事だけに集中しろ。今ので分かった、全神経を守りに費やさないと増援が来る前に全滅するぞ」
メクル達を警戒しながら一旦俺の近くまで下がって来たルークがガイデに聞こえない様に小さな声で言って来る。
ルークの言ってる事は的を得てるな。メクルだけでもまともにやり合ったら絶対負けるのに、それに加えて俺達三人を完璧に足止めしてたあの風魔法使いの援護がある。時間稼ぎ以外に意識を割いてたらすぐ落とされそうだ。
「……そうだな、分かった。じゃあ俺はあいつ等が攻め込めない様に雷魔法で牽制を続けるから、お前はさっきみたいに土魔法で突っ込み過ぎたガイデを守ってくれ。俺達の戦闘が長引いたらバロル達もおかしく思って増援を寄越したりしてくれる筈だ。それまで絶対に一人も落とされない様にするぞ!」
「ああ!」
ルークの勢いのある返事と共に、俺達は一人で突っ込もうとしているガイデの援護に回った。
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「……ふう、ナイスな妨害であったよライオット氏」
壁が壊れて敵の動きが止まったタイミングで、メクル君が軽く息を吐きながら褒めてくれる。
「ううん、メクル君こそ相手の雷魔法防いでくれてありがとう」
「いやいや、礼をする必要は無いのであるよ。チームメイトとして当然の事をしたまでであるから……それよりも、どうやら向こうは軽い作戦会議を終わらせた様なのであるよ!」
「分かった、敵の妨害は任せて」
まともに話す余裕も無いほど短い時間だったけど、それでも一旦呼吸を整えられたのはありがたかった。
三人の敵の内、さっきも突っ込んで来ていた一人が反撃お構いなしにメクル君に向かって魔法を撃つ構えをする。
「喰らえ! "豪炎球"!」
「"風流昇"!」
そんな彼の全身に向かって、僕は彼の側に溜めてあった風魔法を放つ。
そして突然のその突風のせいで彼は身体のバランスを失っしまう。身体のバランスを失った彼は手があらぬ方向に向いてしまい、メクル君に撃とうとしてた炎の球は僕から見て右側にある建物に当たってその建物の一部を大きな音と共に壊した。
「クソがっ、また俺の邪魔をしやがって!」
僕に魔法の妨害をされた事に苛立ちを覚えた彼は大きく声を荒げた。僕の魔法に邪魔され続けたストレスが溜まりに溜まってるんだろう。
そしてその苛立ちのせいか、その瞬間彼には大きな隙が出来た。
「"炎雷獄火砲"!」
その隙を狙ってメクル君は間髪入れずに魔法を撃とうとする。
そして魔法を撃とうしてるメクル君に向かって、試合前に僕達の控え室に訪れてた三人のBクラスの人のうちの一人である……たしかギダス君が攻撃を仕掛ける。
さっきギダス君が使ってた魔法を見る限り彼は雷魔法使いだ。もしまともに撃たせてしまえば、例え魔法を撃ち終わるタイミングはメクル君の方が早かったとしても速度の早い雷魔法が相手だと、その後に避けられる程の余裕が出来ない可能性が大きい。
「"雷ど……「"風流昇"!」
だけど、そんな攻撃を邪魔するのが僕の役割だ。
僕はギダス君の横に溜めてあった風魔法を彼に向かって撃って彼の身体のバランスを崩して、彼がまともに魔法を撃てない様にした。
「くそっ、またか!」
「"断崖土壁"!」
するとそこに、メクル君が魔法を撃つ構えをした瞬間に魔法の準備をしてた敵の土魔法使いが土魔法で作り出した土の壁が現れる。
「これでどうだ!」
でも、その壁にメクル君の魔法を防げる程の強度は無かった。
「なっ……!」
メクル君の魔法は当然のようにその壁を貫いて、敵に向かって進んで行く。
「くっ! …………ガアアアアア!」
しかし防げなかったとはいえ、その壁のおかげでメクル君の魔法は一瞬勢いを殺された。そしてその一瞬の間を使って、隙が大きくなってた彼は右に飛んで魔法を避けようとした。
でも、少し動き出しが遅過ぎた。彼はメクル君の魔法を避けきれずに左足に魔法が当たってしまい、痛みのあまり悲鳴を上げて倒れ込んだ。
「大丈夫かガイデ!」
「うぅぅぅ……」
その痛がり様に仲間の土魔法使いが心配するけど、どうやら仲間に返事をする余裕も無い程痛いみたいだ。彼は左足を押さえてうずくまったままうめき声を上げる事しか出来てなかった。
「本当にどうなってるんだ! 色んな所から風が飛んで来るぞ!」
そんな彼を一瞥してからギダス君は自分の動きを妨害した僕の風魔法について、訳が分からないといった口振りで叫ぶ。
……僕がリンドウ君に教えてもらったのは風を1箇所に溜めておいてそれを放出する事ともう一つ、その風を溜める場所を複数作る事だ。
本当は1箇所に溜めるっていう練習だけをする予定だったんだけど、リンドウ君が僕の上達スピードが思ってた以上に凄いっていう事で、この複数の場所で溜めるっていう練習をさせてくれたんだ。
正直難しさは1箇所にだけ溜めて置くのに比べて段違いに難しかったけど、僕は徐々に自分の魔法が上達して行く感覚が嬉し過ぎて休憩も忘れて練習してた。そしたら大会前には最大で10箇所に溜めておけるようになってたんだ。
今この道路にもあと8箇所に風が溜めてある。余程の事が無い限りはメクル君のサポートが出来る筈だ。
僕はその8箇所に自分の意識を集中させて、敵がその内のどれかに近付いた時すぐに一番近い風を撃てる様に準備をする。
「ここで決めるのであるよ! "風霹螺旋"!」
痛みで起き上がれてない敵に向かってメクル君は魔法を撃つ。さっきまでみたいな炎魔法と雷魔法を合わせた威力重視の魔法じゃ無くて、風魔法と雷魔法を合わせたどちらかと言うと速度を重視した魔法だ。
「っ……」
敵の土魔法使いがもう一度土の壁を作ろうとするけど、それが間に合わないとすぐに判断したのかすぐに土魔法をキャンセルした。
そしてメクル君の魔法は誰にも邪魔されずに目標まで近付いて行き……
「グアアアアアアア!」
魔法が直撃した炎魔法を使ってた彼は大きな声と共にその場に倒れ込みながら気絶して、そのまま結界の能力によって結界の外に転送された。
「よし、やった! 一人倒せた!」
サポートしかしてないとはいえ格上であるBクラスの一人を倒せた事に嬉しくなった僕は、ついガッツポーズをしながら大声で喜んでしまう。
喜び過ぎて周りの事が目に入らなくなってしまった程に。
「"風斬乱撃"!」




