表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黙示録のラッパ吹き 〜魔法師世界で魔法が使えない少年〜  作者: 岩月敬一
学年別クラス対抗戦編
47/90

第四十七話 ははっ、こりゃまたすげぇな

 『ラーンベルト学園』で『学別戦』が行われていた頃、前国王から無理矢理にも等しい形で玉座を奪い取ったダグラス・グルは、自分の執務室で配下からの報告を今か今かと待っていた。


「も、申し訳ございません陛下。まんまと魔族の侵入を許すだけではなくその目的や正体までも掴めずにいるなんて……」


 そんな彼に、部屋の中にいた一人の大臣が恐る恐る話しかける。ダグラスが不甲斐ない自分達に苛立っていると思っているのだ。ダグラスとしては彼等に苛立ち等の感情はまったく持ち合わせていなかったが、滅多に見せない真剣な表情が彼にそう捉えさせてしまったらしい。


「……いや、気にすんなよ。この国の警備は俺が確認した限り穴という穴は無かった。多分普通じゃない何らかしらの手段を使ったんだろ。例えば『固有魔術』とかな」


「……現在、追跡系や捜査系の『固有魔術』を持っている者を中心に調査していますので、今しばらくお待ちください」


 ダグラスの口調から彼が苛立っていないと判断して安心した大臣は、平静を取り戻して普段と同じ口調で報告した。


「分かった、報告ありがとよ。そんじゃ、下がってくれて大丈夫だぞ」


「はい、失礼いたします」


「……あっ、ちょっと待ってくれ」


 大臣が退室しようとした所で、ダグラスは思い出したように彼を呼び止める


「何かが起こった時のために国の要所要所に手練れを置いといてくれ。侵入して来た奴等の目的も実力も分かってない以上警戒は最大限に行っておいて損は無いだろ。配置は…………まあ、他の大臣達と決めてくれ。俺はまだ国王になってから二年も経ってねえしな。まだお前らの方がこの国に関しては詳しいだろ」


「はい、承知いたしました。それでは失礼いたします」


 ダグラスの指示を聞いた大臣は、今度こそ執務室から退室した。


「…………さて、このまま見つかんなかったらヤバいから、一応アイツにも連絡しとくか。《《同族のことは同族に》》ってな」


 大臣が退室した事を確認したダグラスは、そばに置いてあった魔法で作られた通信用の道具を用いて彼の友人に連絡を入れた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「た、たしか……次はSクラス対Aクラスの試合だったよな。楽しみだな〜…………な、なあ、皆?」


「「「「…………………………」」」」


 人で埋め尽くされた観客席の中、大会に出る選手用に取られていた席で俺達は座っていた。今は第二試合が終わり、第三試合の準備中の時間なんだけど、試合が終わってからここまでクラスメイトのほぼ全員がずっと無言のままだった。


 多分実力を隠されていたのが傷ついたとか、怒ってるとかそういうんじゃ無くって、ただ目の前で起きた事が信じられない事による現実逃避に近い物なんだろうけど…………にしても長くね? もう一時間はこの状態だぞ。逆によくこんな長い時間無言で過ごせてるなと思うわ。


「うむ、そうだなナツよ! イリーネやフィンラル、そしてシリスが集団戦闘でどのような戦いを見せるのか俺もすごい楽しみだぞ!」


「だ、だよな。俺も『栄光の世代』が戦う所初めて見るから楽しみなんだよ!」


 そんな中、いつも通りに喋るドリアドは今どんな気分なんだろう。試合の直後は誰よりも驚いてたのに今ではあっけらかんってしてるし。元々新しい事実を受け入れやすい人間なのか、それとも頭が悪いせいでさっきの事をあまり深く考えられてないのか。どっちなのかは分からないけど正直話し相手が出来て助かってるんだよなあ。


「…………はあ、未だに信じられねえし正直信じたくねえって気持ちが結構強いけど……本人が身体能力って言ってる以上深く考えてもしゃあねえか。…………よし、ナツの実力は一旦忘れる事にしよう。現実逃避し過ぎて逆に疲れたし。な、メクル!」


 ソウが長い沈黙の末、諦めるような溜め息を吐いてからようやくいつも通りのテンションで話す。


「そ、そうであるな…………。ところでソウ氏、今からステーキの屋台に行ってもいいだろうか? 試合前に買おうと出向いた時は行列が出来てたから諦めたのであるが…………もしかしたら今なら行列が出来ていないかもしれないのであるよ!」


「は? …………えっ、もしかしてお前……ずっと無言だったのナツの事じゃ無くてその屋台について考えてたからか?」


「ん? そうであるよ。ナツ氏の身体能力には驚いたが……実際に目の前で起きているのであるし、そこまで気にならなかったのであるよ。しかしであるよ、ソウ氏。ステーキはもし試合前に行かなかったら売り切れになる可能性もあるのである。

 それに、並んでて試合に遅れたらそれこそ大惨事になるのである。ということは今はステーキ屋について考えるのが普通なのであるよ」


「いや、紛らわしいわ! ずっと真剣な表情してたから俺と同じ事考えてんのかと思ったけどまさかのステーキ! しかもそれが普通の思考みたいに言ってくんじゃねえ! あと買いに行くんだったらもう遅えよ、俺達の二回戦は次なんだからちょっとでも並ぶ事になったらアウトだよ! 行くか迷ってたんなら一試合目の直後に行っとけ!」


「くっ、たしかに…………」


 メクルが顔をしながらソウの言葉に納得する。そんなにステーキが食べたかったんだったらなんで悩んでたんだよ。


「長いツッコミご苦労様です」


「うるせえ、やかましいわ! …………ていうか頭が悪い組はなんでこんなに順応が早えんだよ。試合直後の時は俺より驚いてたじゃねえか…………」


 ツッコミに対して労うと、ソウは頭を押さえながら疑問を漏らした。


 まあでもたしかに、この二人は俺の実力に疑問持たなくなるの早すぎだと思う。俺が言うのもアレだけど普通もっと時間掛かるものだろ。正直ソウでも割と早い方だと思ってるぞ。


 そんなソウを励ますようにライアが声をかける。


「安心してソウ。ここにもう一人順応が早い人がいるから」


「ふふふっ……ヘヘへ〜」


 ライアの視線の先を見てみると、静かなのは皆とは変わらないがどこか嬉しそうにしているクララの姿があった。


「…………なんで嬉しそうなんだ?」


 その様子を見たソウが戸惑う様に聞く。


「ああ、やっぱりカッコよかったな〜」


 だが、ライアから返答がある前にクララから漏れ出た言葉を聞いてすぐに納得した。


「…………ああ、恋は盲目ってやつか」


「……そう、もうずっとこの調子なの。この子のこういう所ほんと羨ましいよ。はあ……」

 

 正直何で納得出来たのか俺には分からないけど、まあ疑問が解けたんならよしとするか。


「……そういえば、もうそろそろ次の試合始まる時間帯なのではないか?」


 ドリアドが中央の戦闘場を見ながら話題を変える。その言葉を聞いて俺達は全員が戦闘場の方に視線を向けた。


 たしかにもうそろそろ始まりそうな時間よな。そしてそこにタイミングよく、実況のデリヤ先輩の声が会場に響いた。


『さあ、皆様お待たせ致しました! 続きましては一年生の部、一回戦第三試合Sクラス対Aクラスです! くじ引きの結果により運悪く一回戦で当たる事になってしまった一年生トップの二クラスが入場します!』


「「「「うおおおおおーーーーー!!!」」」」


 デリヤの案内が終わった所で、観客による大歓声が起こる。その声量は今までで一番大きく、同時に観客の興奮具合も物語っていた。


 デリヤ先輩の言った通り、まだ一回戦とは言え試合をするのは一年生トップのSクラスとAクラス。実質決勝戦のようなもんだ。これだけ盛り上がるのも頷ける。


「イリーネ様ああああ!!!」


「すげぇ、フィンラル・アークンハイドだ! 中等部の大会は入場料が高くて行けなかったから俺生で見るの初めてなんだよ!」


「俺シリス・レティシアの戦い方好きなんだよ。水魔法の特性を最大限活かしてるから見てて気持ちいいんだよ!」


 ただ、歓声のほとんどはSクラスに向けた物らしいけど。そのSクラス、特に『栄光の世代』のフィンラルとイリーネはこんなに歓声を貰うのに慣れてるのか、観客に向けて軽く手を振りながら入場している。


 ただ、ほとんどが手を振ったりなどして観客にサービスしている中、後ろの方にいる少女だけは無表情のまま黙々と入場していた。


 その少女は綺麗な銀髪のショートと少し背の小さいのが特徴的で、そこに無表情という事も相まって独特な雰囲気を醸し出していた。


 なんか強そうな雰囲気だし、あの子が『ラーンベルト学園』三人目の『栄光の世代』のシリス・レティシアなのか?


「…………よし、両クラス結界内に入ったな。それでは行くぞ、『地形変動』!」


 両クラスが結界内に入り、準備が整ったのを確認した審判のゴルギ先生の合図によって結界内の地形が変わる。


 中央には水が流れて、その水により結界の中央を横断するように川が作られた。川周りには多数の石や砂利がどこからともなく現れ、石や砂利のさらに外側には小さな崖が二つ出来る。所々に木が生えてることも相まってかなり綺麗な地形になっている。ちなみに両クラスはそれぞれの崖の上の、奥の方に立っていた。


 なるほどな、今回の地形は『河原』か。身を隠せる様な場所は少ないけど、同時に戦闘の障害になる物もそれなりにある。この地形だと両側にある崖をどう上手く使うかが重要になりそうだな。


「両クラス準備はいいな? …………それでは一年生の部、一回戦第三試合…………開始!」


 そして、試合が始まった。入場の時はSクラス応援ムードに呑まれてたせいで顔が強張ってたAクラスの選手達も、先生と合図と共に戦闘以外の事は頭から消し去った様子だった。


 流石は『リークレッド王国』のトップレベルだな。切り替えが早い。


「全員作戦通り各自散開しろ! 固まってたらまとめてやられるぞ!」


 そんなAクラスの委員長らしき男子生徒がクラスメイトに指示を出し、他の選手達はそれに従って別々に中央の川の方へと向かった。しっかりと作戦を立てて来たみたいだな。


 それにしても、決闘の時相手側にいたクリス・ヘイゼルが見当たらないな。……あいつはAクラスの中ではそこまで強い方じゃ無かったって事か?


「…………全員、魔法発射用意」


 試合開始直後から動き回っているAクラスに比べ、試合が始まってから微動だにしていなかったSクラスは全員開始地点に留まったまま、イリーネの合図と共に両手をそれぞれの方向に向ける。それは魔法を放つ準備をしてる様だった。


 ……いやおい、まさかとは思うけど…………


「一斉発射!」

 

「「「「"獄炎火炎砲ごくえんかえんほう"("風葬暴相ふうそうばくしょう")("水紺流すいこんりゅう")!!!!」」」」


「っ! 全員避けろーーー!!!!」


 その様子にいち早く気付いたAクラスの一人が全員に避けるよう声を出すが、彼が大声を出した時には既に遅かった。


「「「「ぐわわわあああああぁぁぁぁぁ!!!!」」」」


 Sクラス全員が一斉に放った魔法は結界のほぼすべてを飲み込んだ。もちろん、彼等に勝てるように入念に作戦を立てて来たAクラス全員を含めてだ。


 そして……


『…………Aクラス全員が結界外へ転移! よって勝者、Sクラス!』


 はは、こりゃまたすげぇな。全員で撃ったとはいえどう考えても学生レベルの威力じゃねえよ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ