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黙示録のラッパ吹き 〜魔法師世界で魔法が使えない少年〜  作者: 岩月敬一
学年別クラス対抗戦編
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第四十話 あ、あれ? なんか悲しくなってきた……


「そういえばドリアド、ボヨヨン家からドドンガ家になんか嫌がらせとか来なかったのか?」


 オーズスタン先生のFクラス全体への激励があった日の放課後、俺達はFクラス専用の練習場を使って『学別戦』のための練習をしていた。皆どこか嬉しそうな雰囲気を醸し出している。よっぽど先生の言葉が嬉しかったんだろうな。


 ちなみにここにはいつもの六人だけじゃなくって『学別戦』の代表全員が集まっている。まあ、『学別戦』の練習なんだから逆に全員いないと困る。


 あともう一つ付け加えておくと、俺はFクラスの代表のリーダー的存在になっている。皆に魔法の使い方のコツとかを教えていたら、いつの間にか俺を中心に練習していくようになったんだ。


「ああ、不思議と無かったぞ。ボヨヨン家であればなにかしらして来そうではあったのだがな」


「うむ、ということはナツ氏の伝でどうにかなったということなのであるか?」


 一度全員で休憩をし始めたタイミングでソウが話を切り出し、ドリアドが返答し、メクルが俺に質問してきた。


「まあ、そういうことになるな。……没落させる所までは出来なかったみたいだけど」


「いやいや、それは国王であろうと出来ないっすよナツさん。仮にもボヨヨン家は侯爵っすよ? 急に没落したらこの国割とヤバいっす」


 俺のちょっとした小言のような言葉にザンザスが反応する。


 ザンザスは同級生に対しても敬語で話すからなんかムッチャ印象いいんだよな。一年生なのに後輩持ってるみたいな気分で。


「よし、んじゃあ休憩がてら俺が教えたことの復習するか」


 全員が休憩し始めたのを確認して、俺は別の話を切り出す。『学別戦』の代表が決まってから今日までの間、俺は俺と同じ代表の皆に戦闘に勝てる魔法の正しい使い方を教えていた。


「そういえば、リンドウ君って魔素量がまったく無いのに知識は無茶苦茶あるよね〜。なんで?」


「たしかに、言われてみればライアの言う通りだね。博識ですね、流石ですリンドウ君!」


 話を切り出そうとした所でライアが目ざとい所に気付き、クララがその事に関して俺を褒めてくれる。


 でも、ライアの疑問はもっともだ。


 俺は魔法がまったく使えないのに、何故か魔法の知識が無茶苦茶ある。まったく使えない物をひたすら勉強する奴なんて普通いないから寧ろ疑問に思わない方がおかしい。


 まあ普通に理由があるわけなんだし、それこそ秘密にする必要がまったく無い理由だから言うけど。


「そりゃもちろん魔法に憧れは無茶苦茶あったからな。俺にとってロマンみたいな物だったから楽しすぎて死ぬ程知識を取り込んだよ。……まあ、結局使えずじまいだったけど…………。そりゃそうだよな……どれだけ知識があっても魔素量が無けりゃ魔法なんて…………使えるわけ……ないし……あ、あれ? なんか悲しくなってきた…………」


「「「「……………………」」」」


((((は、反応に困る…………))))


 悲しそうにしているナツに、他の人達はどうすればいいのか困ったような顔を見せる。何よりも困るのは、これがナツの冗談なのかそれとも本気なのかの判断がまったく付かない所だ。今までのナツからして魔素量が無いことに本気で悲しんでいるなんて事は無いとは思うが、もし本気で悲しんでいた場合は励ます等の対応をしなければならない。


「よ、よし! んじゃあ早く復習しちゃうか! 忘れないうちに覚え直すの大事だしな!」


「そ、そうだなネイル! よし、早く復習するぞ! ナツ、早くそれぞれの魔法の属性の使い方を言ってくれ! それを聞いて俺達が自分たちの記憶が合ってるか確認するから!」


ネイルとソウが俺の一言で静まり返った空気を無理矢理にでも盛り上げようとする。彼等の魂胆は、ナツが冗談であれ本気であれこの話題に触れずに場を盛り上げればなんとかなるだろうという物だ。そうすれば例えナツの今の行動が冗談であろうが本気であろうが大きな問題になることは無い。


「そうだな! よし、んじゃあまあ復習だし簡単におさらいだけにしとくか!」


 話題が転換した瞬間に明るい表情に変わったナツを見て全員が今のは冗談だったと確信した。そして同時に、その内数名はナツの分かりにくい冗談に少しイラッとしたのだった。


「まずは威力の高い炎魔法だな。この属性は威力が高いからゴリ押しが一番の得策だと誤解されがちだが、この属性で最も重要なのは……ネイル、答えてみろ」


 冗談を終えた俺は続きを言うようネイルに促す。復習っていうか皆が俺の言ったことをちゃんと覚えてるかの確認だから、俺が全部言っちゃ意味ないんだよな。


「搦手だろ? 炎魔法は威力が高いからこそ例え威力を少し蔑ろにしても搦手で攻撃すれば十分ダメージを与えられるほど効く」


「そう、いいね。一見ただのお調子者の頭が悪い奴に見えるネイルにしてはよく覚えてたな」


「あれ、俺今もしかしてナツに馬鹿にされてる?」


「炎魔法は威力が高い分操作は難しいけど、自由に操作できるようになったらかなり強くなるぞ」


「おいナツ、スルーすんな」


 ネイルがなんか言ってるけどまあ、とりあえず今はスルーだな。


「じゃあ次は雷魔法だな。んじゃあ……得意魔法だしザンザス、覚えてるか?」


「なあソウ、これ完全に無視されてるよな! なあ!?」

「ネイル…………ドンマイ」

「いや、ちょっと待てなんだその憐れんだような目は!」


「雷魔法は速さが全属性の中でピカイチ。だから雷魔法は威力を求めずに弱くて速い攻撃で徐々に相手にダメージを負わせるんっすよね!」


 ザンザスが元気よく答える。自信満々な所を見ると、かなり自信があるんだろうな。


「よし、正解! 威力に比べて速さが段違いで強いから、雷魔法は徐々に相手にダメージを与える事を一番大事にした方がいい。まあザンザスは頭悪くないしこれくらいは覚えてるか。んじゃあ次は水魔法。サイエス、覚えてるか?」


 俺の問いかけにサイエスは眼鏡の端を上げながら当然かのように答える。


「ええ、もちろんです。水魔法は一番搦手が重要視される魔法。ですがだからこそ搦手しか来ないと思っている相手の意表をつく威力に重視を置いた魔法も放った方が効果的、ですよね」


「おお、さっすがクラス一の賢さ! 完璧だ! 理由もしっかり説明出来てる所がいいな。…………で、もういちいち説明したり理解してるか確認するの面倒くさいから俺が言っちゃうけど、ライオットの得意な風魔法はいかにして魔法を発動した事を相手にバレないようにするかが重要。その方が風魔法の特性の奇襲性は上がるからな。で、ライアが得意な土魔法は多人数での戦闘の場合威力よりも範囲を重要視した方がいいな。簡単に言えば撹乱用だ」


((((ちゃんと説明してくれてるし結構分かりやすいからあまり言えないけど、あと二つだけだったんだからそこは頑張ろうよ))))


 と、ナツとクララ以外の面々は思った。


 まあ確かに復習をし始めてからさほど時間は経ってないし、もう半分以上の属性は復習していたのだ。あと二つくらい頑張ってもいいのではないかと思う。だが、そんな皆の考えに対してナツにはしっかりと理由があった。


「ていうかライオットとライアは教えて間もないのにこの事がもう体に染みついてるっぽくて結構完璧に近い状態だからな。正直説明が面倒くさいってよりは風魔法と土魔法の復習はあんま必要無いって感じたんだよね」


「「「「な、なるほど……」」」」


 そう、ナツの言う通りライオットとライアの成長は目まぐるしい物があったのだ。ライオットは本当にいつ出したか分からないほど魔法を発動するのを隠すのが上手くなっていて、ライアもクラス内でたまにやる模擬戦で状況に応じて最適解とも言える魔法を放っていた。その事をしっかりと見ていたナツは、確認する必要は無いと感じたのだ。


「よし、んじゃあもうそろそろ休憩はおしまいにして『学別戦』に向けての練習を再開するぞ〜」


「「「「は〜い(はい!)」」」」


 俺の言葉にほとんどの人間は友達に普段するような軽い返事を、そしてクララだけが元気よくナツに返事をした。


 ドリアドのように十分強いわけではなく、メクルのように特別な訳でもなく、ソウのように特殊な戦い方をする訳でも無いのにも関わらず、ナツから魔法の使い方をほとんど教わっていないクララだけが、だ。


 





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