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第四話 フィンラル、結構いいやつ

「君、魔法を使えないのは本当なのか?」


 周りを黙らせたフィンラルは俺の前に立ちながら真剣な目で聞いてくる。


 あれだ、分かるぞこれ、ふざけちゃいけないやつだ。


「ああ、今まで何回も試したから分かるけど、俺の魔素量は0だ」


「……ここには本気で受かりに来たのか?」


「ああ、もちろんだ」


「そうか、ならどうやってここに受かろうと思ったんだ? ここが魔法師養成学校という事は知っていただろ。当然魔素量の試験もあると予想出来たはずだ」


 まあ、当然の質問だろうな。この学園じゃ一番重視されるのが魔素量だ。入学試験ではそれ以外はほとんど加味されない。魔素量が全くない俺が入学出来る事なんてまず無いからな。


「まあ、そこは筆記試験と実技試験に頼ろうとしてな。筆記試験は完全に拍子抜けだったけど、今は実技で他の奴等と差をつけて受かろうと思ってる」


「まあ、筆記の内容は確かに酷かったな…………。それで、実技試験では具体的にどのくらいを狙っているんだ?」


 ここは素直に答えた方が良さそうだな。こいつ俺が魔素量ゼロって言っても馬鹿にしなかった奴だし。そもそも嘘つく理由ないし。イリーネと言いフィンラルと言い『栄光の世代』は皆性格がいいのか? 


 ていうかやっぱり筆記の内容は一般的に見てもおかしかったのか。だよな、普通にそうだよな。


「実技試験では教師との一対一だろ? そこで余裕で教師を倒そうと思ってる。そしたら魔素量ゼロでも入学させてくれるだろ」


「へえ、教師を倒すか。この学園の教師はこの国でもトップだという事を忘れてないか?」


「いいや、忘れてない。その上で俺なら行けると思った」


「そうか……」


 そう断言すると、フィンラルはしばらく考えるように黙った。


「フィンラル君、今は試験の最中です。無駄な私語は慎むようにしてください」


「いいや、無駄ではありません。これはかなり重要な事です」


 考えるように黙ったフィンラルに試験官が私語を慎むように言うが、フィンラルは言う通りにしなかった。


「余程自信があるようだな、それはいい事だ。でも、どうやって倒すつもりだ? 魔法が使えないんじゃ攻撃のしようが無いぞ。まさか、その剣でか? お前も知ってるだろ。魔法がある時点で剣は過去の産物。ただの剣では魔法に勝てる事は無い」


 フィンラルの言ってる事は正しい。遥か昔、まだ魔法が無かった時代は剣が戦いの主流だった。だが、魔法が根付いた今の時代は違う。剣では当然魔法に間合いでは勝てないし、威力でも全く勝ち目がない。それに魔剣という魔法で作った剣もあるため近接戦も魔法を使った方が有利、剣では魔法に勝つ術が一つもないのだ。


「ああ、知ってる。だけど、それでも俺はここの教師に刀で勝てると思ってる」


「ふっ、分かった。それだけ断言出来るということはそれほど自信があるという事なんだろうな」


 そう俺に言うと、フィンラルは周りを見て言った。


「今この場にいる者達に告げる! この試験中、彼を馬鹿にする事をこの俺が禁ずる! だが、もしこの者が試験に落ちた場合、存分に笑い者にしろ! 所詮それまでの実力者だったというわけだからな!」


 へえ、面白いなこいつ。試験中は馬鹿にされる事は無いけどもし落ちたら存分に笑い者にされるのか。まあ、落ちたら俺がこの学園の教師を馬鹿にしたただのお調子者ってことになるから当然っちゃ当然だけどな。それにしてもその事も含めて本人の前で言うって、余程陰口とかが嫌いな奴なのか?


「お前もそれでいいか?」


「ああ、全然いいよ」


「ふっ、そうか。すみません試験官殿、試験を再開してください」


「ええ、分かりました。ただフィンラル君、今後はこのような事をしないように。ではリンドウ君、あなたは魔素量試験はどうしますか?」


 フィンラルが試験官に謝ると試験官はあまり気にした様子を見せずに少しだけ注意をして俺に確認を取る。試験官としてはこれ以上無駄な時間を使いたくなかったのだろう。


「受けないって事で良いですよ。どうせゼロ点だし」


「そうですか、分かりました。では次の人に移ります」


 こうして俺の魔素量試験はフィンラルのおかげであれ以上馬鹿にされる事も無く、無事終わった。





 いや、ゼロ点だし無事なわけ無いか。

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