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黙示録のラッパ吹き 〜魔法師世界で魔法が使えない少年〜  作者: 岩月敬一
学年別クラス対抗戦編
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第三十七話 や、やべぇ……腹が立つ


「なっ、あれは五属性の同時使用!? ま、まさか!」


「落ち着け! そ、そんな馬鹿な話があるか! 『全属適正者』に『複法覚者』、その二つを持ってるなんて聞いた事ねえぞ!」


 会場は案の定騒ついている。いや、この場合パニックに陥ってるって言った方が正しいか。まあ無理も無い。今まで色んな魔法師を見てきた俺でさえ未だに目の前の光景が信じられないんだからな。メクルには何かあると踏んでたけど、まさかこんな大事だとは思いもしなかった。


「ナ、ナツ。大変だぞ……」


 見ろ。今まで、馬鹿だけどその落ち着きようでなんとか頭の悪さを隠してきたドリアドさえ取り乱してるぞ。


「メクルがイキったぞ」


 …………は? この状況で何言ってんのお前?


「ナツはこの重大さが分からないのか? 今までメクルは自分のキャラ作りや友達への気遣い。友達を作り、そしてその友達に嫌われないように努力してきた。なのにイキったのだぞ。イキるなんて友達に一番嫌われる行為ではないか!」


 ん?


「ちょちょ、ちょっと待って。…………えっ、そこ? 『全属適正者』や『複法覚者』よりもそこ? いや、よくよく考えるとイキるのはたしかにメクルらしくないけど。もっとビックリする事があるだろ。戦闘五属性を同時に、しかもそれぞれ威力の差が無かったんだぞ? つまり『全属適正者』に『複法覚者』を持ってんだぞ。驚くならまずそこだろ」


「ん? ゼンゾクテキセイシャ? フクホウカクジャ? なんだそれは。ナツはたまに面白い事を言うな! ハハハハハハハハハハッ!」


 や、やべぇ。…………腹が立つ。こいつにはそんな気無いんだろうけど、すげぇ馬鹿にされてる気分だ。


 こいつまさか知らねえの? 『栄光の世代』に次ぐ実力って言われてるのに『全属適正者』と『複法覚者』知らねえの? それはもうアホとか以前にやばいだろ。


 ていうかメクルも言うほど調子に乗ってねえだろ。


「ふぅ。そ、それにしても止められてよかったのである…………。

 今度はこちらから行かせてもらうのであるよ! "風雷極獄炎焦ふうらいごくごくえんしょう"!」


 そんなドリアドに唖然としている俺やメクルの『全属適正者』と『複法覚者』の同時持ちに驚いている会場を他所に、メクルは少し小言を言ってから次の魔法を放つ。


 相手が驚いて固まっている今が勝機だと思ったんだ。


 メクルが撃ったのは主体である炎魔法に雷を少し付与し、その炎をさらに風によって強化したメクルにしか為し得ない魔法だ。


「くっ、行くぞクリス! あの魔法を俺とお前の炎魔法で全力で止める!」


「は、はい!」


「「"獄炎火炎砲ごうえんかえんほう"! うおおおおおお!!」」


《ゴオオオオオオオ》


「嘘……だろ……」


 今まで傍観していたマイエルとクリスの炎魔法は途中で合体し、メクルの魔法に衝突した。個人の魔素量だけで言えば断然マイエル達の方が高い。だがメクルの場合属性の一つ一つがあいつの魔素量分の威力を持っている。


 あつまり今は炎、風、雷を使っているため単純計算でメクルの魔素量の3倍の威力。さらに、属性同士の相乗効果により3倍より遥か上の威力になっているのだ。


 その事にマイエルは思わず声を漏らした。


 でも流石はSクラスだな。敵で唯一正気を取り戻したあいつがクリスに指示して二人がかりで何とかしてメクルの魔法を止めやがった。


 ていうかオーズスタン先生、Sクラスに引けを取らないとか言ってたけどメクルの奴十分強いじゃないですか。


「くっ、流石はSクラスであるな。某の最大威力の魔法が止められてしまうとは」


「調子に乗るなよFクラスが! Fクラス風情の貴様なんかがそんな才能を持ってるわけが無い!」


 メクルの余裕な態度に腹が立ったマイエルは大声で怒鳴る。今まで下に見てたFクラスが自分より上かもしれないという現実が受けいられないのだ。まあでも精神力は結構あるな。


 さっきは魔法を放てたけど何も話せずにいるクリスと、ずっと放心状態にいるボヨンが普通の反応だ。マイエルには怒鳴れるだけ心に余裕がある。


「ま、まさか! 違法薬物を使ったな! そうとしかこの威力は考えられない。そこまでしてこの決闘に勝ちたかったのかこの魔法師の恥さらしめ!」


 だが、その余裕にも限界が来て現実を受けいられなくなったマイエルがあり得ない事を口にした。そしてその事に会場の観客は反応し出す。


「えっ、違法薬物?」


「いや、でも流石にそれは無いんじゃ……」


「いいや、違法薬物を使ったならあの魔法の説明も付く」


「そ、そうか?」


「ああ、そうだ。じゃなきゃこの状況に説明がつかない」


「そうか! あのFクラスのクズは違法薬物を使いやがったんだ! だからあんな馬鹿げた魔法も撃てた!」


 あ〜、こりゃマズイ方に転がり出したな。


「マジかよ! そんなの校則違反どころか犯罪じゃねえか!」


「この犯罪者め!」


「「「「犯罪者! 犯罪者! 犯罪者! 犯罪者!」」」」


 すげぇ、さっきまでビックリしすぎて声も出てなかったのにメクルが違法薬物を使った可能性が出てくると一気に威勢を取り戻しやがった。どんどんこいつらのヤバさが滲み出てくるな。


『おっと、これは異質なコールだ! ですが、観客の生徒達の気持ちも分からなくはありません! 『全属適正者』に『複法覚者』の両方を持っているなんて世界に一人いるかどうか。それがこの学園、しかもFクラスにいる。それが信じられないです! ちなみにオーズスタン先生、メクル・スズクが違法薬物を使った可能性はあるのでしょうか?』


『チッ、だから嫌なんだよこの学園ボソッ


『あれ、何かおっしゃいました?』


『ん? いや、何でもねえよ。まあ、現実を受けいられないなら信じたいもんを信じりゃいいんじゃねえか?』


『そ、そうですか。まあ適当なオーズスタン先生らしいですね! さあ、この逆境の中、メクル・スズクは実力を発揮し、チームを勝利に導けるのでしょうか!』


 その実況が聞こえなくなる程に、解除枠の犯罪者コールはとても大きかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「メクル君が勝利に導けるのでしょうか、だって? 悪いがドリアドのチームが勝つのはもう明白だ」


「そうね、フィンラル君の言う通りだわ」


 辛うじて実況を聞けたフィンラル君とイリーネ様は周りに呆れながらそう呟いた。


「……それってどういうこと事ですか?」


 しかし私は彼等がこんな余裕な表情を見せているのがわからなくて、思わず聞いてしまった。ほとんど喋った事が無いのに。


「簡単よクララさん。どういう作戦かリンドウ君達の方はメクル君が一人で戦ってたみたいだけどあっちが三人で来てる以上、もう一人で戦う理由は無いわ」


「ですがイリーネ様。それでもリンドウ君達に勝てるでしょうか? 私リンドウ君の実力を知らないし実はドリアド君の試合も見た事が無いんです」


「大丈夫だ。ええっと……クララ・サールド。たしかにリンドウ・ナツの実力はよく分からないが、あのチームには俺達に次ぐ実力を持っていると言われているドリアドがいるんだ。

 むしろ負ける理由が無い。ドリアドの試合を見た事がないなら楽しみにしておいた方がいいかもな。ドリアドが戦い始めればあいつが"雷桜"なんて呼ばれてる理由が分かる」


 そう言い決闘の方に集中し始めたフィンラル君達につられ、私も決闘が行われている真ん中に意識を注いだ。そして、イリーネ様達の言葉の意味をすぐに知る事になった。


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