第二十八話 知る手段が無い以上仕方ねえけどさ
「なるほど…………まあ、全力で挑むならこれがいいのかもな」
「うむ、某は賛成なのであるよ」
「俺も全然いいっすよ!」
「わ、私はリンドウ君の意見ならなんでも大丈夫です!」
俺の出した『笑い』の意見に皆が賛成してくれる。
「Fクラスが『笑い』を取りに行かなきゃならないってルールが普通に超謎なんだけど、まあやるからには全力でやろうか」
「そうだな、ナツの言う通りだ! じゃあ早速台詞考えようぜ!」
「いや、ネイル君。僕達は実戦の練習もしないと…………ほら、あまりにもボコボコにされすぎて恥かくのも嫌だし…………」
「それはそうですけどライオット君。いくら私達が練習しても他のクラスに勝てるとは思えません。ドリアド君はいますけど、あくまでドリアド君だけです。ワンマンチームで勝つのは無理があるでしょう」
「サイエスさんの言う通りっすよ、俺達は学園の底辺、いくらドリアド君がいるとは言え俺達が足引っ張っちゃいますよ……」「いや、そんな事無いぞ」
ザンザスやサイエスの言った事を、会話を遠くから聞いていたオーズスタン先生が否定する。
「お前ら、俺がなんでこのクラスの担任になったか覚えてるか?」
「えっ、それは学年主任の反感を買ったからですよね」
「違ぇよネイル、もう一つの理由だ」
求めていた答えと違ったオーズスタン先生は、頭をかきながら次を促す。
「たしか……リンドウ君達の話によると、先生がリンドウ君達に興味が沸いたから、だったはずです」
「そうだライオット。この際だからハッキリ言う。ナツ、ソウ、メクル、ドリアドの実力はSクラスにも劣らねえ。直接見た俺だから分かる。この四人を上手く使う事が勝利への鍵なんじゃねえか?」
「「「「えっ!!」」」」
オーズスタン先生の、言葉にクラス中が声を出して驚く。
そりゃそうだ。だって底辺のFクラスに所属してるのにエリート集団のSクラスに引けを取らない実力があるって言ってんだ。逆に驚かなかったらビックリするよ。
「リ、リンドウさんってそんな凄い方だったんですね! 流石です!」
「落ち着いて、クララ。興奮しすぎ」
「…………う、うん」
ただ一人興奮しているクララをライアが落ち着かせ、オーズスタン先生の方を向く。
「オーズスタン先生、私達を励まそうとしてるのはありがたいんですけど、それは流石に嘘が過ぎると思います。そんな期待のこもるような事を言われるリンドウ君達が逆にかわいそうです」
オーズスタン先生の方を向いたライアは少し責めるような口調で言う。この責めた口調は、俺達を思ってくれたからこそなのだろう。過度に期待されて、もし俺達が普通に負けたら必要以上に落胆される。その事をライアは懸念したのだ。
「ああ、そうか。まあ普通はそういう反応だよな。じゃあ、『学別戦』を楽しみにしとけ。俺の言ってる事が本当だって分かるからな」
「わ、分かりました」
自信たっぷりなオーズスタン先生に少し戸惑いながら、ライアは承諾する。彼女としては俺達が実力者という事が信じられないのだろう。
まあ、それも無理は無い。何せクラスメイトの魔素量や魔法の実力は、これまでの授業である程度把握出来ている。メクルはFクラスにしては魔素量は非常に高いが魔法師としては一般的な量だし、ソウはFクラスにしても魔素量が少な過ぎるし、俺に至っては魔法が撃てない。今までの授業でこの事が露見しているのに今更発見など無いとライアは思ってるのだろう。
現に俺も、ソウとメクルがオーズスタン先生に一目置かれている理由がまだ分からない。まあ、気になっても知る手段が無い以上仕方ねえけどさ。
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「はあ〜、オーズスタン先生も何を考えてるんだろう。リンドウ君達に申し訳ないって思わないのかな〜」
「ライアちゃん、それもしリンドウさん達が実力者だった場合リンドウさん達に失礼だよ」
「ええ〜、でも今まで一緒に授業受けて来てなんか特別な力を持ってる、とか全然そんな感じなかったよ」
今、俺達六人は授業を受け終え街中を歩いている。『ラーンベルト学園』の寮は門限さえ守っていればどこで何をしていてもいい。そして今は夕飯を外で食べ終え、帰っている所だ。
「リンドウ君達は自分達は強いって思ってるの?」
そこでライアが直球の質問を俺達に投げて来た。これは…………答え辛いな。正直俺は自分が強いって思ってるし実際その通りなんだけど、自分は強いって言ったらなんかただの自信過剰な奴に思われないかな。
「某は……全然強く無いのであるよ」
「まあ、俺は強いの考え方によるかな」
だが、悩んでる俺とは違い、メクルとソウはすぐに答えた。
「へえ、まあ謙遜してるだろうからあまり意味ないんだけどね」
「いや、なら何故某達に今の質問をしたのであるよ。それに謙遜などしてないのである」
「リンドウ君は?」
「う〜ん、俺はだな……」「やめてください!!!」
「「「「!?」」」」
俺が答えに迷っていると、前の方のパン屋の前から大きな女性の声が聞こえて来た。大きすぎて、会話をしていた俺達が無視できない程だ。
「ん? なにが起こったのであろうか?」
「分からないが、一回行ってみるしか無いな」
ドリアドの言葉に俺達は頷き、様子を見に行く事にした。
よかった〜、まだなんて答えようか迷ってたんだよね〜。




