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大きな声では言えないが俺が魔王だ!  作者: すみ 小桜
第六章 ヒカルの正体

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6-4

 ヒカルが俺達の目の前に姿を現した……。

 何故ここにいる? 俺をつけていた? ち、違うよな?


 俺が驚いていると、振り向いたルミさんがヒカルに近づいた。


 「来た来た……」


 「ル、ルミさんが呼んだのか!?」


 俺の問いに頷くと、ルミさんはヒカルを俺達の方へ引っ張って来る。

 攻撃する様子もないし、なんの為に呼んだ? って、ヒカルも何も知らないとは言え、どうして街の外に出ちゃうかな……。


 「ちょ……ルミ!」


 ヒカルは、何がなんだかわからない様子で、青ざめた顔つきだ。ケンタの方もバツが悪そうだ。


 「一体何を……」


 「うわ!」


 「きゃー!」


 俺がルミさんに話しかけようとすると、二人が悲鳴を上げた!

 そして二人は、俺達から遠ざかる。


 なんだ? 今一瞬空気が変わったような感覚だあった……。


 「っち。本当に勇者なのかよ? これも効かないってか!」


 ルミさんが舌打ちをして、俺を睨み付けて言った。

 それどういう意味だ?


 「何をした!」


 『キソナ様。これは幻覚のたぐいです。キソナ様はレジストしたのです!』


 ピピがルミさんの代わりに答えた。

 そういえば、まやかしだったかルミさんは持っていたな。それか!

 そこまでするのかよ!


 「ヒカル! 動きを封じて!」


 ルミさんは俺の質問には答えず、俺を指差し叫んだ。


 「え? ちょマジ!?」


 言われたヒカルはツル縛りを俺に仕掛けて来た!

 それは俺にも有効らしく、膝のあたりまでツルがギュッと巻き付く!!


 『キソナ様! 後ろです!』


 「え?」


 そう言われ振り向こうとするも足が動かない!

 ザンッ!


 「うわー!!」


 『キソナ様!』


 後ろから痛みと衝撃を受けた! 今度はケンタが攻撃をしてきた!

 俺は刀を地面に突き立て、それをギュッと握る。


 マジかよ! どうなってる?

 まさかと思うけど……。


 『なぁ、ピピ。まやかしって幻覚を見せたりするのか?』


 『そうですね。今キソナ様は、二人からは敵に見ているようです。それを解除するのには、術師を死亡か気絶をさせるか、効果が切れるまで一〇分待つしかありません』


 やっぱりそうなのか……。くそ!


 HPが一気に四六%になった! 二〇〇近く受けた事になる。後ろからまともに食らったからクリティカルになったようだ! クリティカルは総攻撃の一.五倍だ!


 「回復魔法!」


 俺は高みの見物をしているルミさん……いや、もうルミでいいだろう! 彼女をチラッと見た。


 ここまでするぐらいヒカルを恨んでいたのかよ……。

 うん? いや待てよ。今の状況変じゃないか? 何故俺が攻撃を受けている? 確かに邪魔だとは言っていた。でも今目の間に、にっくきヒカルがいる。しかも自分で呼び出して来た。


 俺を倒したい? ヒカルの味方をしているから? それにしたってこの状況はおかしいだろう。

 俺を倒しても復讐にはならない。それともヒカルに味方する俺を倒させて、精神的ダメージを与えたい? そして引退させる?


 あぁ、そうか。ヒカルを引退させたいのか! そこまで憎んでる?

 何故そこまで! ケンタだってわかってくれたのに……。


 うん? 何か違和感があるな。そうだ! ケンタは俺の情報を持っていた! 戦闘をする時に聞いた? いや、ルミがケンタに俺を倒す様に言った?


 「回復魔法! 回復魔法!」


 俺が考えを巡らせている間に、ケンタから二度攻撃を受けていた。向こうもまだ様子みだけど、こっちが反撃しないとわかれば、本格的に攻撃を仕掛けてくるかもしれない!

 その前にこの状況を何とかしなくては!


 「ルミ! ケンタに俺を倒せって言ったのか? それで俺の情報を教えた」


 「そりゃそうでしょう。ヒカルの味方をしてるんですもの」


 胸の前で腕を組みニッコリ微笑んで答えた。ルミは満足げだ。まるで今の状況を楽しんでいるみたいだ。

 そう言えば、俺が誰から聞いたかと問いかけた時に、ルミが現れケンタは驚いていた。ルミは、俺とケンタが戦っている所も見ていたんだよな?


 今の様に見物をしていた? ――自分の手は汚さずに……。って、まさか……。


 「お前! まさかヒカルか! テスターの時のヒカルだろう!」


 ルミは答えず、ニヤっとするだけだ!

 さっきからの違和感はこれか!

 くっそ! 騙された! ヒカルに近づいたのは復讐の為じゃない! テスターの時と同じ名前の奴を偶然見つけたからだ! 全責任を関係ないヒカルに押し付ける為に!


 だからその邪魔をする俺が邪魔になった! ……いや違うな。ヒカルがテスターのヒカルじゃないと見破った俺が邪魔になっただ!


 「回復魔法!」


 それならもうルミを倒してかまないよな!


 『キソナ様! 召喚をお使い下さい! このままだとルミの目の前で、女性の姿を晒す事になります!』


 そんなのわかってる! でも、手の内をこいつに見せたくないな!


 いや、晒すか……。


 『ピピ、俺が変身を解いて魔王の姿になれば、ツル縛りは解除出来るか?』


 『魔王になったキソナ様には効きません』


 『そうか』


 『とうとう君臨なさるのですね! どうせなら幻覚返しをしてはいかがでしょう?』


 俺はピピの提案に頷いた。


 「変身解除!」


 俺は自ら正体を明かした!

 ルミは驚いた顔を俺に向けていた――。


 「幻覚!」


 「な、なんだ? 体が……。お前誰だ! キソナなのか?」


 幻覚は効いているようだ。ルミは体を動かせないでいる!


 「何を言っているんだか。俺に決まっているだろう? 幻覚返しをしてやったんだ! どうだ。受ける気分は!」


 俺はルミを睨み付け、怒鳴った!

 それでもルミは、ニヤッとするだけだ!


 「お前がテスターの時のヒカルだよな? 答えろ!」


 「そうだ。でもそれ、どう証明するんだ? 目の前にヒカルがいると言うのに!」


 そう余裕な顔で返して来た。

 本当にムカつく! 騙していた事も! 騙されていた自分の事も!


 「まあヒカルがテスターのヒカルじゃないという事は、証明するさ! でだ、どうやってヒカルと名乗れた? 性別が違っても同じ名前は使えなかった!」


 「さあな?」


 答える気はないみたいだな。まあ、正直に言うはずないか……。


 『ピピ。火の玉の二段階目の威力っていくらだ?』


 『はい。五〇になります』


 『そうか。ありがとう』


 「大人しく答える事をお薦めする!」


 俺はそうルミに言って手を向けた。


 「火の玉!」


 「ぐわぁ!!」


 外れない位置から撃ったので勿論ヒットする!

 やはり魔法でも痛みはあるようだ!


 「ルミに回復魔法」


 「な、何のつもりだ!」


 俺はルミの裏のステータスを確認して攻撃した。ルミは一一レベルになってHPが一九〇あった。俺の火の玉は、二段階目の三倍。つまり一五〇。死亡しない。

 回復魔法をかければ全快する。吐くまで生き地獄を味わわせてやる!

 うん? 今の俺って魔王っぽい?


 俺もニヤッとして見せる。


 「火の玉」


 「っぐ……。貴様……」


 その見た目で、その台詞はやめてほしい。そう言えば主婦だと思っていたけど、ただのおっさんだったのか!

 俺は何故かため息が出た。


 「……ルミに回復魔法」


 ルミは光に包まれる。

 彼女いや、彼は俺を睨み付けた。


 「話す気になったか?」


 「そんなに知りたいのなら教えてやるよ! 簡単なことさ。俺はヒカルじゃなくて、ヒカノレって名前だったんだ! 誰一人気づかなかったけどな!」


 俺は目が点になった! なんだそれ! 『ル』じゃなくて半角カタカナの『ノレ』だったのかよ! 気付ける訳がない! 半角カタカナが使えると知らないのだから!

 そんな簡単な事だったなんて!


 「火の玉!」


 「え! ぐわー! 話しただろう!!」


 「だな。でも俺は別に攻撃しないとは言ってない」


 「何だと!!」


 俺を睨み付けるが、別にその可愛い顔で睨まれても怖くもなんともない。

 これからだよ、ルミ!!

 俺はルミに、ニッコリ微笑んだ。

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