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武装

信じられない存在 の後です。

 ゾンビ発生後籠城中。


 伯父さんが死んで、ゾンビの存在を間近にみて、それをころして……。一人ぼっちになって……。

 最初の数日は、庭に出るのも怖かった。


 でも、さすがに近所の様子が気になったので、バールを持って取りあえず家の庭を見て回ることにした。


 靴をしっかりと履き、すぐに逃げ込めるようにドアを少し開けたまま外に出た。玄関からあたりに何も居ないのを確認する。

「よし、次だ……」

 まずはガレージ、おそるおそる音を立てないように、周囲を注意深く観察しながら歩いた。勝手知ったる我が家とはいえ、肌がヒリヒリと緊張する。人が入れそうな隙間もしっかり確認。バイクはいつものように置いてある。特になにかの気配も感じない。


 続いて物置きに近づき、なにか出てきても戦えるように、右手でバールを構えてから静かに戸を開ける――――――何もいない。


「お」

 物置の奥に本格的な感じの弓が三つと、矢筒に入った矢が数本置いてあった。

(アーチェリーなんかで使うやつだろうか?)

「これ、使えるかな?」

 バールを腰に刺し、弓を手に取ってみる。英字の『W』に似た形の弓だ。ワイヤーや滑車も付いている。いかつい。不思議とテンションがあがった。初めて手にした(ぶき)に強気になる。(今なら何が来ても平気だ!)そう思ったら無性に撃ってみたくなった。


 弓を持ったまま早足で家の周りの道路、伯父さんの家の裏も確認する。たぶん周囲50メートルくらいにはなにも居ない……はず。多少の物音を立てても大丈夫そうだ。


 急いで物置に戻り矢を二本と、的になりそうな使ってない抱き枕を脇に抱える。そして早足で見通しのいい伯父さん家の隣にある駐車場に向かった。


 適当な段ボールに抱き枕を立てかけて10メートルほど離れる。

 見よう見まねで矢を弦にかけ、引いてみる。滑車が弦をひく力を手助けしてくれるようだ。

「以外に軽い……それに……」弦を引いた今の姿勢、凄いかっこいい気がする、それなら……「サイドワインダーっ!」直後に自分でも恥ずかしくなるセリフ叫んで、矢羽を離し撃ってみた。

『ヒュッ』と風を切る音がしたあと――矢が消えた。――的に刺さっていない。

「あれ? 外したかな?」

 近づいて的を確認すると、抱き(マト)を貫通し段ボールにも穴があいているのが見えた。矢は確かに抱き枕に当たっている。しかしあるべき場所に矢は見当たらなかった。

「消えるわけないのに、おかしいな」

 と首をめぐらし矢を探す。すると的の後ろ20メートルくらい先、駐車してあった車のタイヤに貫通して刺さっていた。

「ええーっ!」

 思わず声をあげて驚いてしまった。しかし直後に高揚感が湧きあがる。

 車の持ち主には申し訳ないけど、弓の恐るべき威力と貫通力に感動と興奮を覚える。


 その後あたりが暗くなるまで、貫通しても何も壊さない場所に矢を撃って遊んでいた。ネトゲが繋がらなくなって以来、はじめて気持ちいいストレス解消を見つけた。


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