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避難のお知らせ

 引きこもり中。ゾンビ発生前。


 数日前からサイレンの音を聞くことが多くなった。どうやら各地で通り魔が人を襲う事件が多発しているらしい。火災のお知らせもやたら多かった。

 あまりに多すぎるとは思っていたが、外に出ない僕にはさして関係なかった。


 そうして何日か経った後、どうやら伝染病ではないかと、ニュースでも騒がれ始めた。

 そして市内全域に、屋外スピーカーから、避難の指示が放送された。


「伝染病なんて、それこそ引きこもっていたほうがいいじゃないか」


 そう思ったけど、避難するのがイヤな一番の理由は、ここから一番近い避難場所が僕の通っていた高校だからだ。

 クラスメイトはともかく金谷とは絶対に会いたくない。ナオミとも顔を会わせ辛かった。


 陰鬱な気もちに沈んでいたその直後、電話が鳴り、ビクッと震える。またかと思いつつ、鳴りやむのを待った。避難のお知らせがあってから、三回目の電話だった。うるさいなぁ、と電話の子機を睨みつける。

 Amazomに何も注文していない時は、基本的に電話はいつも居留守を使っていた。


 数分後、今度は玄関の呼び鈴が鳴った。無視を決め込もうと音を立てないように動きを止める。

『ヒカル~いるか~?』

「なんだ伯父さんか……」

 警戒を解き玄関のドアを開けると、

「ヒカル、放送聞いたか? 準備したら避難するぞ」

「う、うん聞いたけど、家にいないと、母さん帰ってくるかもしれないし……」

「靖子さんには連絡しておいた、まだ暫く帰れないらしいから行くぞ」

「でも伝染病って……人が沢山いるところ危なくない?」

「風邪みたいなものなら、大丈夫じゃないか? 人を集めて予防接種なりするかもしれんし」

「う~ん、でも……」

「どうした? 何か行きたくない理由でもあるのか?」

 う~ん、と悩んで僕は伯父さんに正直に話した。いじめられていた事、会いたくない奴がいる事。

「そうか……なら暫くここの家で俺も寝かせてもらうぞ、それがイヤなら避難だ」

 こればっかりは譲ってくれそうもない、ちょっとイヤだったけど、僕は渋々了承した。

「まぁ一過性の物かもしれんしな」

 大丈夫だろ、と言ってガハハと笑った。

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