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プロローグ
規則的に揺れる体。夕暮れの空の下。
薄れゆく意識の中、私は彼女の目を見つめた。
――今までありがとう、さっちゃん。
彼女の潤んだ瞳から、幾筋もの涙が、零れ落ちていく。
私は小さく頷き、気持ちを視線に込めた。彼女は、それがわかってくれたのだろう、何度も何度も頷いてくれた。
――もういいの。
――本当に幸せだったから。
でも私は、その溢れるような気持ちを眼に込めることはできなかった。何故ならもう、瞼を開けている力さえ、なかったから。
――ありがとう。心から……感謝して……る。
黒に塗りつぶされた、私の世界。
夜に森を徘徊する旅人が突如現れた谷底に足を取られ落ちてしまったが如く、私の世界は更に深い闇――真の暗黒――に包まれていった。