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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

創世記という名の物語

作者: おとめ

北の大地のある王国の王宮の一室で黄金の髪を持つヴァルカンという名の王子が生まれた。また同時に南の大地の王国でも銀の髪を持つリューリクという名の王子が生まれた。


ヴァルカンは幼い頃より剣の修行と称して父王の後について戦に出たり、王の誕生を祝っての御前試合で勝利を収め、花の乙女の祝福を受けたりと様々な戦い方を学んでいった。

また、大人になったら父王の右腕となり父王の役に立ちたいと書を学んでもいった。

そうしていくうちに少年はいつしか父王や周りから信頼され頼られる青年へと成長して行ったのである。


空をふと見上げるヴァルカン、美しいはずの蒼い空なのに黒い蔭りと共に何かの予感を感じた。

いやな気持を振り切るかのように剣を片手に馬を降りて側近であり、近衛隊隊長でもあるレトと共に森の中へ入っていった。


ある時リューリクがいつものようにお忍びで街へ出かけた時にミネルヴァという少女に出会った。

彼女はリューリクがいままで出会った事のない自由奔放で自分に正直、曲がった事が大嫌いな性格であった。そんな彼女に惹かれていく彼、ある時彼はミネルヴァを妻に迎えたいと思い、身分を打ち明け、こんな私でよければ妻になってほしいと伝える。

彼女は悩み、返事は後日と言ってその場は逃げてしまう。


ちょうどその時に今まで国交のなかった北と南の大地の王達の在位30年というめでたい節目を記念して国交を樹立してはどうかという声がどちらからともなく持ち上がり、北と南の大地の中心に当たる場所で記念のイベントを開かれた。兄弟達の代表として、ヴァルカンとリューリクが出席、リューリクの傍らにはミネルヴァもいた。そこで初めて3人が出会った。


最初から3人共話が合い、いつの間にか悩み事を打ち明けられる間柄へとなっていった。

2人になった時にリューリクはミネルヴァの事をヴァルカンに相談し、どうすればよいかなどを話していた。その時ヴァルカンは「余計な事は考えず、ただその人の事を幸せにしてあげればよいのではないだろうか」と答える。

己の言葉に痛む心に気づかない振りをして。


リューリクはこの言葉を感謝とともに己の信念とした。


それから数日後、ミネルヴァが先日の返事として、「私でよければ一生あなたの傍にいます。」と言った。

喜ぶリューリク、この事を早く父王へ報告するも父王は先日の国交樹立をもっと根強いものにしていこうと考えていたため、お互いの娘をそれぞれの国へ輿入れさせようと考えていたのである。その役目をリューリクへと考えていたのである。

また身分の知れない娘の血を王家に入れるなどとは考えられないのであった。ましてや次期国王へなるリューリクの相手である。

必死で説得する父王、しかしリューリクの想いは王家を捨ててでもという感があり、父王からすればそれは危ういものであった。危険な芽は早々に刈り取ってしまおうと考えた父王は部下にミネルヴァを葬るよう命じた。

命令を完遂した部下はミネルヴァの蜂蜜色の髪をひと房父王の元へと届けた。

その後、リューリクの手に渡されたのである。


幼い頃から乳兄弟として一緒に育ってきた間だったが、父王に命令され蜂蜜色の髪を持ってきた部下。

あんなに信じていたのに。と信じてきた事が裏切られ次第に狂気の渦へと巻きこまれていく。幼い頃から父王の背中だけを見つめ、絶対だと信じてきた。父王のようになる事を目標にしてきたのにすべてが虚像のように崩れ去ったのである。


その時にすべてを元通りにする事ができる。その方法を知りたければ我が元へ下り、我を受け入れよというメッセージを受け取ったリューリクはその通りにする。


今は親友となっているヴァルカンに濁った眼で間違った『今』を修正するために南端へ行くと言い残し眼前から忽然と消えたのである。黒い羽根を残して。

急いで部下に何があったのか調べさせるヴァルカンであったが、詳細を掴む事はできなかった。ただ、リューリクの父王が息子のために何かをしたらしい。という事だけは分かった。

ヴァルカンは事の真相を確かめようと南の大地へと向かった。

旅の先々で、もう南は駄目だとか、近づいてはいけない。など実に様々な悪い噂ばかりを耳にする。

嫌な予感と焦る気持ちを抑えつつ南へ到着するとそこは以前のように豊な緑や楽しく笑い合っている人々の姿はどこにもなく、茫然としているヴァルカンの前に、悪の神の力を取り込んだリューリクが現れた。

このような有様が目の前の男の仕業と知ったヴァルカンは剣を抜き放ちリューリクに打ち掛かるが全く歯が立たない。その圧倒的な力の差に愕然としていたが、リューリクの方は親友だと思っていた彼に剣を向けられ驚愕していた。

こんな仕打ちは許さない。

信頼していた分、憎しみも増していった。


そこで両者の心が完全に分かれてしまったのである。


ミネルヴァを認めない父王、ひいては南の大地の住人達への『復讐』を果たしたリューリクは今度は自分を裏切ったヴァルカンへの見せしめとして北の大地へと攻撃を仕掛ける。


なぜこうなってしまったのか、ヴァルカンは事の真相を、だが心の奥では剣で負けた屈辱を晴らすためにリューリクの足跡を追う。

この時彼は信頼に値する、後の『大戦の調停者』達を仲間に誘う。


この時に大剣使いのディオに剣の修行がてらに近隣の村々で暴れているモンスターを倒してこいと言われる。僧侶呪文を操る剣士のジュノ―と魔法の修行をしている剣士のファイスらと近隣の村へ向かう。なんとかモンスターを倒すが生き残った村の住人から、これは銀髪の悪魔の仕業だと聞かされる。

これを聞いたヴァルカンはまたもや驚愕し、そこでまだ自分はリューリクの事を信じているのだと気付く。

それから何度か同じ事を繰り返していくうちに、ミネルヴァはリューリクの父王に殺され、信頼していた乳兄弟のマイアをも父王の謀略で失った事が次第に明らかになっていった。

それを知ったリューリクは父王を殺し、南の王国を滅ぼし、自分のせいで北の王国までをも滅ぼされた事を知った。だが本人の姿は最初にまみえただけでそれ以来一度も会っていなかった。人の噂ばかりで何一つ真実が見えていないヴァルカンの前に漆黒の翼を背に広げたリューリクが現れたのである。

驚くヴァルカン。だが唐突に話し始めたその内容にまたもや驚愕させられる。


自分の名前はカイロス、緑美しいこの星がほしい。しかしそこで生活しているモノが邪魔である。よって、ここのモノを全て殲滅するためにこの若者の身体をいただいた。しかし、慣れない入れ物のため、上手く力が使えない。反対に力を付けていくお前たちは邪魔なのでここでお前たちを潰しておきたい。というような内容であった。

すでにカイロス神に取り込まれていたリューリク、友の悲しみを受け止めるヴァルカン、無謀ともいえる戦いが始まった。

何度も剣を交えて勝った、と思った矢先、思わぬ方向から炎の矢が飛んできてヴァルカンは深手を負う。何度か嬲られもう駄目だと思ったその瞬間、


ヴァルカン・・・・

リューリクの意識が戻ってきたのだった。

こいつの動きを止めるからその隙にとどめを。

その言葉に戸惑うヴァルカン、数瞬躊躇うが涙を流しながらリューリクの身体に剣を突き刺す。

「リューリク・・・!」

リューリクの前に現れる死んだはずのミネルヴァ、剣の勢いが止められないヴァルカン。

ミネルヴァの身体もろとも剣に貫かれるリューリク。

「一生あなたの傍にいると約束したわ」

こと切れるミネルヴァ

背の黒い翼が霧散するリューリク。

「愛している、ミネルヴァ。そしてすまない、ヴァルカン」

ミネルヴァの手を握りこと切れるリューリク。

二人の身体を貫いた剣から手を離し膝から崩れ落ちるヴァルカン。

剣から一筋の光が空へ向かう。そこからヴァルカンへ銀の光が降り注ぐ。そこから辺りへ光が広がっていった。

カイロス=リューリクの力を取り込んだヴァルカン。

光の柱を見た生き残った住人達、もうあの苦しみはなくなった事を知り手を取り合う人々。

霧散した漆黒の翼が七色の花びらに変わりながら辺りへ舞う。



神話世界の創世記である。

初投稿作品になります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 壮大な世界観と愛と友情の美しくも悲しい物語ですね。 重厚な古の記述らしい文章は、独特な雰囲気があり、作り出された世界観に、良く合っていると思います。 [一言] 改めまして、執筆お疲れ様で…
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