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つつじヶ丘のお巡りさん

主人公が10年後の世界で初めて会った人の話です。

この小説は現代日本を舞台にしたファンタジーを目指します。

日が変わって次の見回りまではあと2時間、小山田巡査に先に休憩を取らせて仁科巡査長は日誌をつけ始めた。

つつじヶ丘町は人口40万の地方都市流川市の一部とはいえ外れも外れ、市町村合併でようやく町になったようなところだ。丘というよりほとんどが山また山で、唯一の観光資源であるつつじヶ丘公園をそのまま町名としてしまっている。

繁華街が近いとはいえ、この時間になれば人通りなどあるはずもない。それでも夜間の見回りが必要なのは時々酔っ払い運転の軽トラックが側溝に落ちていたりするからだ。この時期暖房が切れた車内で寝ていたりしたら、朝までには凍死する。

人通りがなくても住宅街の入り口なので街灯はある。日誌からふと目を外して外を見ると小さな人影が見えた。とても小さい。子供にしても小さ過ぎる。シルエットの頭と体の比率を見れば幼児と言ったほうがいい。

妖怪か?

人影はこちらに向かって歩いてくるようだ。意外と早い。背筋もきちんと伸びている。歩き方だけ見れば、小学生でも通るな。

更に近付いて交番の明かりが届いたときに驚いた。服はボロボロ髪には枯葉が絡まり頬に苔がこびりついている。身長は60cmに届くか届かないか。姿勢以外は幼稚園にすら入っていない年齢に見える。その外見の割に意志の強そうな目で見上げ、はっきりとした口調で言った。

「お巡りさん、僕お腹が空きました。」

は?

幼児がボロボロの格好で深夜に現れて、第一声がお腹が空きました?

いや、これは事件だろう。それとも事故なのか。

「お巡りさん、お腹が空いたんですけど、何か食べ物を売っている店はありませんか。」

「いや、待て待て。お父さんかお母さんは?・・・それとも誰か知らない人に連れて来られたの?」

「・・・・あっ、そうか。うん・・そお・・記憶が有りません。名前も歳もわかりません!」

元気に言い切ったよ。記憶喪失ってこんなに明るく宣言するものか?

「ど、どこから来たのかな?」

「お巡りさん・・・・お腹・・・空きました。」

涙目で訴えられてしまった。とりあえずお菓子とジュースを与えてみる。子供は高すぎる椅子で足をぶらぶらさせながら、もしゃもしゃとお菓子を食べ始めた。時々上目づかいでこちらを見るところなど、何か考えてやがるな。

とりあえず市警本部に連絡を入れて、最近の失踪事件や行方不明の情報を洗ってみる。ある訳がないな。幼児の失踪などあったら大事件だ。知らないはずがない。

この辺で幼児失踪といえば11年前に有ったきりだな。うん。

市警からは明朝に児童相談所と一緒に来るという連絡があった。前例がない事態だからなぁ、責任を分散できるようにしたいんだろうな。

服を着替えさせていいか聞くのを忘れた。どちらにしても子供が着れる服なんてないしな。

「なんか騒がしいっすね。」

小山田巡査が起きてきた。1時間も寝ていないからすっかり寝ぼけている。

「なんすか。この子。」

「記憶喪失だそうだ。小山田、何か子供が着るような服無いか?」

「俺独身すよ。あー、プーさんのぬいぐるみの服なら着れるかな?」

「・・・なんでそんなもん持ってるんだ?」

とりあえず、髪の毛と顔を拭ってやりながら、もう一度聞いてみる。汚れはひどいけど、意外と垢じみてはいないな。

「どこから来たか言えるかい?」

「気が付いたら、公園の奥の防空壕にいました!」

これはもう事件で決まりだな。


防空壕には子供が出て言った形跡はあったが、何者かが入った形跡はなかった。加えて少年が着ていた服は9年前に生産中止になった量販品で、身元の特定につながるものではなかった。ミステリー小説であればフラグがたちまくる状況ではあったが、官僚主義が横行する市警と児童相談所においては原告がいないという点のみが考慮され、事故として処理され、身元不明の幼児は児童養護施設に送られることになった。ちなみに身元保証人は俺だ。

何がどうなっているやら。


主人公の身の振り方が決まりました。

次からいろいろとキャラクターが出てきますよ。

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