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早すぎる親離れ

ようやく主人公が動き始めます。

この小説は現代日本を舞台にしたファンタジーを目指しています。

何がいけなかったのかな?

周りがゆっくりと動くように見えるようになるとき、お母さんが気持ち悪そうに僕を見ているのが分かった。周りがゆっくりになるのは僕が転びそうになった時だ。だから僕は転ばないように頑張った。がに股はやっぱり安定しないから大人のようにまっすぐ歩けるようにしたし。頭が重くてもバランスを保てるように体幹を鍛えた。

僕はお母さんが大好きだから、そう伝えたくて一生懸命言葉も覚えた。

そうしたら他のお母さんが僕をもっと年上の子と思うようになったので、大人のまねをして挨拶したりした。

お母さんが大好きだから頑張ったんだけど、お母さんはだんだん僕を気味が悪いと思うようになっていった。

ジャングルジムから落ちた子を受け止めようとしたときには、とっさにあの力が出てしまったけど、仕方ないと思う。あの子は頭から落ちたから、受け止めてあげなかったら首の骨が折れてしまう。

だけどその後お母さんは僕を見て怯えるようになった。

ある晩僕は夜中におしっこがしたくなって目が覚めた。ちなみに僕はもう自分でトイレに行ける。

目を開けたら暗い部屋でお母さんがじっと僕を見ていた。見ていたけど、見えていたのかな?ガラス玉みたいな目だった。僕は怖くなって朝まで寝たふりをした。

僕は夜中に起きたくないと思った。そう思って毎晩寝ていたら、ある日布団に入った途端周りが速く動き始めた。お母さんが早回しのように部屋を出入りし、あっという間に朝になった。


ジャングルジムの事件の後、前の若いお手伝いさんに換えて、かつ子さんというおばさんが面倒を見てくれるようになった。まったく笑わないおばさんで、掃除も洗濯も家事をほとんど何もしない。ただいつも僕のそばにいて、食事の世話だけしてくれた。かつ子さんは僕が外に出たいというと怒った。かつ子さんが出かけなくてはならないときは、家中のカギをかけていくほどだ。僕は1日中本を読んで過ごすしかなかった。おかげでずいぶん知識はついたと思う。

ある日お母さんに外で遊びたいと言ったらお母さんはかつ子さんの言うことを聞いて大人しくしていなさいと言った。その日僕は寝たふりをしてお母さんとかつ子さんの会話を聞いた。

お母さんはかつ子さんに、僕を絶対に他の人に見せないように言っていた。

何が悪かったのかやっぱり僕にはわからない。

僕はお母さんのことが好きだけど、お母さんは僕が怖いみたいだ。お母さんがいつも怯えているのを見るのは嫌だ。だから僕は家を出ることにした。


4歳になり桜が散って夜でも寒くなくなってきた頃、夜中に僕はそっと抜け出した。鍵を中から開けるのは簡単だったけど、ノブを押し下げながら重いドアを開くのが大変だった。障碍者用に低い位置にあるボタンを押してエレベーターに乗り、自動扉から外に出られた。夜中に子供が一人で歩いているのはおかしなことだと知っていたので、僕は物陰に隠れながら素早く移動した。久しぶりにあの力をたくさん使った。

僕が目指しているのは前に行った児童公園の近く、小学生が幽霊が出ると噂していた防空壕だ。なんでも中で道に迷って出られなくなった子がいるらしい。それぐらい深い穴ならしばらくは見つからないと思う。

防空壕は低い崖の道から50cmぐらいの高さのところに開いていた。鉄格子がはまっていたけど、僕は何とか通り抜けることが出来た。中はコンクリートのかまぼこ型のトンネルで、10畳ぐらいの広さの部屋につながっていたけど、それだけだった。暗闇の中で壁を伝って探したけれど迷路はなかった。この部屋でどうやったら道に迷えるのだろう。

僕は部屋の入り口近くに水抜き用と思われる横穴を見つけた。直径30cmぐらいの丸い穴で僕なら這って入れそうだ。やはり鉄格子がはまっていたけど、錆びていて簡単に外れた。中は1mもいかないうちに土と枯葉でふさがっていたけど、乾いていて枯葉がふかふかだったのでそこで寝ることにした。足から入って、見つからないように鉄格子を戻した。

僕は周りが速く動く力を使った。

直ぐに朝が来てわずかばかり防空壕が明るくなった。そして直ぐにまた暗くなった。次の日には誰かが入ってきたけど一通り見回して帰って行った。時間はどんどん早く過ぎていった。暑くなり涼しく感じるころには一日は光の明滅のようになった。寒くなりまた暑くなり、10回目ぐらいに寒くなった頃僕はお腹が空いてどうしようもなくなった。

外に出ようとすると僕の体は半分ほど土に埋まっていることに気が付いた。幸い土はそれほど固くなかったので少しずつ体を揺すると脱出できた。ただ、着ていたシャツは見事にボロボロになってしまい、片袖と裾がちぎれてしまった。ズボンも片方は膝から千切れた。なんとか靴は土の中から掘り出すことが出来、じゃりじゃりはしたけどとにかく履けた。

外に出ると夜だった。

小銭は持っていたけど夜中にボロボロの服を着た子供に食べ物を売ってくれる店などないよね。そういえば困ったときは交番に行けばいいと聞いたことがある。

交番は公園から大きな通りに出てすぐのところにあったと思う。

公園に行くとジャングルジムやブランコがなくなっていて、芝生と背の低い木が植えられているだけの場所になっていた。大きな通りの建物は前より高くなった気がする。

幸い交番は覚えていた場所にあった。中にお巡りさんがいたので

「お巡りさん、僕お腹が空きました。」

といった。


いきなり大技を出してしまいました。約10年の冬眠です(笑)


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