鬼神との遭遇1
この小説は現代日本を舞台にしたファンタジーを目指しています。
本当ですよ。
幼児組は部屋で遊ぶことが多いのだけど、5・6歳になればやっぱり外でも遊びたい。そんなときには年少組の小学生に遊んでもらうこともある。ダイヤ君はその辺の小学生より大きいぐらいだから、一緒にいるといじめられなくていいね。
僕は小さくても走るのは得意だから、その日は小学生に交じってサッカーをしていた。職員さんに連れられて庭に出てきた男の子を見た時、僕は思わず棒立ちになってしまい、顔面でボールを受けてしまった。
気弱そうに背を丸めている小学3年生ぐらいの男の子の背中から、凄いのが出ていた。身長2メートル超、ガチムチの体を白い貫頭衣で包み髪を両耳の脇で結った古代の武人。それが目を吊り上げ歯をむき出したすごい形相であたりをにらんでいた。
「あれ、匡だよ。」
「呪いの匡!?」
「やべ~。こっち来んじゃねえぞ。」
周りの小学生がざわざわしだした。
結局男の子は視線に耐えられなくなって、部屋に戻ってしまった。
「あぁ、それムナカタ タダスさんですね。タダスさんの周りで何人もおかしくなった人がいるそうですよ。」
さすが、ネオンはあの男の子のことを知っていた。
「おかしくなったってどんな風に?」
「タダスさんと話していると急に白目をむいて倒れてしまうって。」
「本当に?」
「それで嫌がらせに会って、精神的にまいったお母さんが入院してしまったから、ここに入ったそうだよ。あっ、タダスさんは半年前からの一時預かりで、週末にはお父さんと過ごしてるって。」
「・・・なんかすごい詳しいね。」
ネオンには悪いけど少し引いた。
何もしないのに白目をむいて倒れるって、やっぱりあの古代武人が何かしているよね。あれも元和君の時のように、歪んだ匡さんの精神なのかな。匡さんに似てないし、歪んでいるようにも見えないけど。
ちらりと元和君の方を見た。
そお、元和君は先日病院から戻ってきた。今は小さい子たちと遊んでいる、と言うより遊んでもらっている。元和君はああいう生い立ちだったから、ケイドロも缶蹴りも知らなかったようで、戸惑いながらも楽しそうだ。大きな元和君が小さな子に怒られたりしているのは微笑ましいね。
その時何かゾクッとした。猛獣にでも睨まれているかのような・・。
裏庭の方かな?
行ってみると、匡さんが3人の中学生に囲まれていた。
中学生達の肩には黒雲が乗っていて、匡さんの古代武人が烈火のごとくと言ってもいいぐらい、怒っていた。