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87.chapter
彼が手に持つ盆の上にあるのは……緑茶だ。
「おー、さんきゅー」
「恐縮です」
刻はにこりと微笑んで私と玲の前に茶を置く。
「刻もお茶飲めば?」
ぽふぽふと私の隣にある座布団を叩いてみせると、彼は「滅相もない」と拒んだ。
「私は執事です。お嬢様と同じ机につくなど、分不相応というものです」
「……そういうもの?」
「え、俺に聞かないで。俺そういうの気にしない人だから」
私もだけど。
いやでも執事って言ったって同じ人間じゃない。そんな面倒なこと考えなくてもいいんじゃ?
「お嬢様も風見ヶ原様も優し過ぎるのです。私はお嬢様の道具。手となり足となり動く家具に過ぎませんから」
刻は小さく微笑み、「御用がございましたらお呼びください。部屋の外に控えております」と退室した。




