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85.chapter
だがまぁいい。理解してもらおうとは思わない。彼はそのままであればいい。あの狂った世界に踏み込んでほしいとは微塵も思わない。
「お前も色々苦労するな」
「いつまでたっても慣れないけどねー」
「そりゃそうだろうな……」
玲は俯いて小さく吐息をついた。
過去の存在しない私。
自分らしさなんてまるでない空っぽの人形。
それでもいいから。
この世界を壊さないためなら、それでもいいからと、ここまで流れに身を任せてきたけど。
……ここ最近のバグは酷すぎて、目に余る。
勿論、自分が滅茶苦茶な言動を取っている自覚はある。イベントの時に台詞を間違えまくるどころか、まぁ普通に挙動不審だったし? しなくてもいいことをしてイベント以外で攻略対象と鉢合わせることが滅茶苦茶によくあるし。
……でも。
「どうしてここ最近、こんなに急増しているの」
そうぽつんと漏らすと、玲が首を傾げた。




