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この乙女ゲームは死亡フラグが多過ぎます。  作者: 天音 神珀
episode.1    この乙女ゲームは死亡フラグが多過ぎます。
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7.chapter

「――はい、俺ですよ。………いえー、何ていうか………いいえ? 迷ったりなんてしませんよ。自分の出身校ですよ?」


 青年は笑いながら携帯の相手とやり取りを交わす。


「ん、あぁそうだ。今、どこのクラスも授業中ですよね? ………大したことじゃないんですが、少々………、ええ。先ほど保健室に行くと言っている少女に会いまして。………いえいえ、面白い子でしたよ」


 少し笑いを含んだような声音で、青年は言う。


「あぁ、それでですね。後でお話させていただけませんか? え? いえ、そうではなく……はい。大したことではないんですが、彼女、先ほどハンカチを落としていまして。――いえ。学校を見て回りたいですし、直接届けますよ。ですから、クラスと名前だけ教えて欲しいんです。――書いてはあるんですが、ぼやけてて読めないんですよ」


 青年の手に、ハンカチはない。そして廊下のどこにも、ハンカチは落ちていなかった。

 しかし青年は笑いながら続ける。さも手元にハンカチがあるように。


「いえ、全く分からないわけじゃないんですけどね。げっか、だけは読めます。そんな名前の少女はいませんか?」


 電話の向こうで、ペラペラと紙をめくるような音が僅かに響いた。恐らく名簿でもめくっているのだろう。それからしばらくすると、


「……はい? 月華院 泉? わかりました。いえいえ、落し物を持ち主に届けるのは人として当たり前でしょう?」


 私はただ、当たり前の事をしようと思っただけですから。


 ハンカチなどどこにもないのに、青年は笑いながら――電話を切ったのだった。

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