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76.chapter
「あんま根詰めるな?」
「大丈夫だって」
「もう日本に帰って来たし、直に会って相談とか、愚痴聞くとか、いくらでもしてやれるから。ほんと、無理だけはするな」
「心配性」
「お前見てたら心配性になるのも無理ないって」
玲の軽い言葉に、少しだけほっとする。この学園の生徒でない彼の声は、この狂った空間を忘れさせてくれるようで、安心するのだ。
「明日、友達と街でちょこちょこ遊んだら実家に向かうよ」
そう言うと、玲は
「何時くらいになる? 車回すけど」
歩いて行ける距離だから、わざわざ車を出してもらう必要はない。
「歩いていくよ?」
「面倒じゃね?」
何か随分積極的だな。
「全然面倒じゃないよ」
「……運転免許取得したから誰か乗せてみたいの」
なるほど。最初から正直にそう言いましょうね。
「じゃあお願いしようかな」
「おー、さんきゅ」
電話は友達と別れ次第掛けると伝え、私は電話を切った。




