6.chapter
「あー、……君って凄い恥ずかしがり屋さんなの?」
私は彼が正面に回ってくる一瞬前に、思いっきり髪を掻き回して顔を隠した。
…………わかってます、私だってわかってますよ!? これが明らかに怪しい行動だってことくらいは!!
でも他に顔を隠すものがないんですよ!!
「私はお化けです。近付いたら呪います」
「お化け? 名前は?」
「げっか……さ、貞○です」
「え、貞○?」
危ない危ない。迂闊にも本名を口走るところだった。
……ってこの言い訳も無理がありすぎるよ!! どうするよ私!!
「貞○ってこの学園の女子生徒なの?」
「いえお化けの友達がここの出身者でして……」
「貞○って制服着てるの?」
「え? あ。えーとですね、ここにいても不審じゃないように友人から借りました」
いやいや、その言い訳の方が不審だよ‼
っていうか何この質問攻め! ボロだしたらどうするの! ………もう出てるようなモノだけど‼
「貞○は顔を見せてくれないのかな?」
「えっ、えーっと………、そ、そういう仕様です」
(ちょっと、いい加減にしたら? もうちょっとまともな言い訳はできないの?)
すみません……
「貞○はどこに行くつもりなの?」
「え? あ、えっと……ほ、保健室?」
(ちょっと、ほんとにいい加減にしてよ……。ついて来られたら保健室に行かざるを得ないじゃない)
「貞○、怪我をしたの?」
「いえ! 至って元気です‼」
って元気なら保健室行かないし‼
(もうとにかく逃げなよ。君の言い訳を聞いてると頭が悪くなりそう)
ヒドイ‼
でももうそれしかないよね? 仕方ない、これ以上聞かれてもボロ出すしかないし、逃げよう。
「さ、さよならっ」
私が一方的に話を打ち切って逃げようとした時だった。
「痛っ」
腕を思い切り掴まれ、鼻先に息が触れるほど引き寄せられた。
そしてそのまま、顔にかかっていた髪を除けられる。端正な顔が思いの外近くから私の顔を覗き込んでいた。
「!」
「可愛い幽霊さん」
ふふっ、と彼は笑い、私の鼻の頭にちょんと口付けた。
「また、ね?」
…………血の気が引く。
(っ、逃げて‼)
私は飛び退き、弾かれたように逃げ出した。
その後ろで、彼が笑っていることも知らずに――