68.chapter
「どうしようかなぁ……」
ちなみにトイレに行きたかったわけでは、ない。目的はトイレではなく。
「……この辺りがいいかな」
人影が見当たらないのを確認し、私は体育館のトイレーーではなくそのまま体育館を抜けて外に出た。
体育館裏には誰もいない。それを認めると、私はふわふわと上に浮かんだまま顔をしかめている少年の方を向いた。
「……怒ってますよね」
「………」
返事がない。これは相当……怒っているに違いない。
「……えーと、あの……すみませんでした」
(……別にさ)
少年が突然話し掛けてきたので、私は瞬きを繰り返した。彼が口を利いてくれるようになるまで、時間がかかることを覚悟していたからだ。
(別に、君がバグを起こしたいなら構わない。滅茶苦茶にしようがなんだろうが、ここは【君の世界】だ。君だけにこの世界を動かす事が許されている。だから君がバグを起こそうと思うのなら、別に止めない)
「え」
(僕はどうせ出来損ないなんだし。僕が君の行動にケチをつける権利なんて、どこにもないんだ)
君の世界、というのはつまり、この世界はヒロインである私を中心に回っている、という意味を込めてのものだろう。出来損ないとは……役を与えられていないもののことだろうか。
(でもさ。君、どうしてこうも曖昧なの)
「え?」
(バグを起こしたくないって言いながらバグを起こすような事自分からしたり)
「う」
(バグが起こることを認めていたり)
……これは、よく意味がわからない。起こることを認めている? 私が? そんなものを認めたつもりはないのだけれども。
(……いい加減、はっきりしてよ。僕だって混乱する)
「ごめん、なさい」
(……また、同じ……)
……同じ?
同じって、何が?
問うように少年を見つめても、やはり少年は答えない。どこか淋しげに視線を彷徨わせて、ふっと掻き消えただけだった。




