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61.chapter ◆
「……それでも」
私は保健師の無機質な瞳を見つめた。
「ううん、それならば、尚更。抗わなくちゃ」
「あら、がう?」
私は頷いた。
抗う。言葉がどれほど単純でも、それはおよそ容易く出来ることではない。知っている。私は身を以てそれを知っている。
この世界が、壊れるかもしれない。少年から聞いたことだ。バグが起き続ければこの世界は破綻し、壊れる。
でもそれでも願わくは、と。
そう思う心が消えないのを、プレイヤーは愚かなことだと嘲笑うのだろうか。
「私は、先生の事情を知りません。だから偉そうにどうこう言うつもりはないです。でも、諦めるのは、つまらなくないですか」
「つまら、ない……?」
保健師は首を傾げる。どうしてこの人はこんなにもリアクションが乏しいんだ。おかげで反応に困る。
「とにかく、そういうことです」
すみません私でも何がそういうことなのかわかってないです。言いたいこと言い尽くしたのでここで終わらせてください。
すると保健師はおもむろに私の頬を両手で包んできた。え、なんですか?
「名前、おしえて?」




